背中合わせの二人

有川浩氏作【図書館戦争】手塚×柴崎メインの二次創作ブログ 最近はCJの二次がメイン

本気の恋(オリジナル短編)

2024年09月13日 07時23分00秒 | 雑感・雑記


 本気の恋なんて、カッコ悪い。
 そう嘯いていた彼が、本気の恋をしたらしい。

 この夏休み、田舎に帰省したときのこと。
 おばあちゃんちに身を寄せたのだという。そのおばあちゃんは、海の家を夏の間だけ営んでいて、手伝いがてら顔を見せてこいと父親に言われて出かけた。
 最初は気乗りしなかった。でもまぁばーちゃんもバイト代、弾むよと言ってくれてるし、いいかあと電車に揺られて。
 そしてそこで出会ったーー彼女に。
 
 地元の子だという。おばあちゃんと顔見知りで、夏に海の家をオープンするとこんにちはー!と毎日のように元気にやって来る。アイスちょうだいと言って、保冷庫から選んで美味しそうに食べては「ありがとねー」と海へ入っていく。
 店が忙しそうなときにはたまに接客の手伝いをしたり、暇なときにはおばあちゃんの話し相手をしたり。
 日に焼けた笑顔が眩しい子。
 彼が初めてお店の手伝いに出たとき、彼女はへえ、あたしと同い年なんだと笑いながら
「よろしく、ーー白いね?」
と言ったという。
 俺、初対面で白いなんて言われたの初めてだったよ。
 二学期、教室で再会した彼は笑って教えてくれた。
 そんな彼もうっすらいい色に焼けていて。
 楽しそうに、その子のことを話すのだった。


ーー来年の夏の前に、またばーちゃんち、行きたいな…
 海開きが待ちきれないみたいに、切ない目をする彼。
 見たことのない顔を見せる彼を前にして、あたしは気づくのだ。


 ああ、彼は本気の恋に出会ったんだな。
 あたしの知らないところで。

 そして同時に気づいてしまう。
 あたしも、夏の終わり、本気の恋に落ちてしまったことに。

 誰かに焦がれる、あたしを目に映していない、同じクラスの男の子にーー

※「書く習慣」というアプリを入れました。毎日のお題に沿って書く
今日のお題「本気の恋」


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