本気の恋なんて、カッコ悪い。
そう嘯いていた彼が、本気の恋をしたらしい。
この夏休み、田舎に帰省したときのこと。
おばあちゃんちに身を寄せたのだという。そのおばあちゃんは、海の家を夏の間だけ営んでいて、手伝いがてら顔を見せてこいと父親に言われて出かけた。
最初は気乗りしなかった。でもまぁばーちゃんもバイト代、弾むよと言ってくれてるし、いいかあと電車に揺られて。
そしてそこで出会ったーー彼女に。
地元の子だという。おばあちゃんと顔見知りで、夏に海の家をオープンするとこんにちはー!と毎日のように元気にやって来る。アイスちょうだいと言って、保冷庫から選んで美味しそうに食べては「ありがとねー」と海へ入っていく。
店が忙しそうなときにはたまに接客の手伝いをしたり、暇なときにはおばあちゃんの話し相手をしたり。
日に焼けた笑顔が眩しい子。
彼が初めてお店の手伝いに出たとき、彼女はへえ、あたしと同い年なんだと笑いながら
「よろしく、ーー白いね?」
と言ったという。
俺、初対面で白いなんて言われたの初めてだったよ。
二学期、教室で再会した彼は笑って教えてくれた。
そんな彼もうっすらいい色に焼けていて。
楽しそうに、その子のことを話すのだった。
ーー来年の夏の前に、またばーちゃんち、行きたいな…
海開きが待ちきれないみたいに、切ない目をする彼。
見たことのない顔を見せる彼を前にして、あたしは気づくのだ。
ああ、彼は本気の恋に出会ったんだな。
あたしの知らないところで。
そして同時に気づいてしまう。
あたしも、夏の終わり、本気の恋に落ちてしまったことに。
誰かに焦がれる、あたしを目に映していない、同じクラスの男の子にーー
※「書く習慣」というアプリを入れました。毎日のお題に沿って書く
今日のお題「本気の恋」