背中合わせの二人

有川浩氏作【図書館戦争】手塚×柴崎メインの二次創作ブログ 最近はCJの二次がメイン

ブロマガ限定R18連載【春を抱く】開始 ~伸下×三池(国防レンアイ)~

2012年03月25日 06時47分49秒 | 雑感・雑記

 一度してみたかったの。

 桜を見ながら、お酒を飲んで、あんたと繋がること。えっちして、飲んで、またえっちして。際限なくゆるゆると。

春がすみの中、あんたと抱き合ったらどんなに気持ちいいだろうね。

ねえ、伸下?



「何を場所取りなんかに駆りだされてるのよあんたは」
もう21時を回ろうとするころ、出し抜けに三池が現れたので伸下は目をぱちくりさせた。
今まさに彼女にメールを打とうとしていた矢先だった。手にしたスマホと本人の顔を見比べてしまう。
会いたいと思っていたから、画面の中から実体化したのかと思ったのだ。
うまく口が利けないほどびっくりしている伸下の顔を面白がるように見ながら、はい差し入れとビニール袋を差し出す。
ずしりとした質感。中にはアルコールの缶が詰まっている。
「なんでここにいるんだ?」
ブルーのビニールシートに上がりこもうとした三池に、「靴、脱がなくていいから」と言いながら伸下が尋ねる。
「ん。超能力」
「まじめにさ」
「部下からあんたが花見の場所取りに出かけたって聞いたの。陣中見舞いよ。いったいなんだってこんな新入りがやるような仕事を押し付けられてるのよいい年して」
いい年ってお前だって俺と同期だろ、と言いかけて、賢明な伸下はそれを飲み込む。代わりに、
「しようがないだろ、不寝番役が病気で倒れちまったんだから。緊急で他に誰もいないってんだから、ピンチヒッターだよ」
と説明した。
 所属する部隊では、毎年この時期に花見を行う。隊の結束を固めるためというよりは、単にわいわい飲む理由をみつけたいだけなのだが、そのための場所取りは大概新入りの役目だ。
 一晩泊り込んで場所確保するのが通例となっているのだが。
「ほんとかなあ。そいつ、仮病じゃないの」
三池はいぶかしむ。人のいい伸下がわりを食っているのではないかと疑っている。
「そう言ってやるなよ。困ったときはお互い様だから」
当の伸下が鷹揚なので、しかたないなあと首を振って彼の隣に座り込んだ。
いくら春とはいえ、地面に敷いたビニールシートの上にじかに座ると冷えが尻に伝わった。
ホッカイロを服の内側に装備してきたものの、底冷えがすごい。思わずぶるっと身を震わせる。
「場所取りやってる割には腐ってないのね」
差し入れのビールのプルリングを折って、一缶伸下に渡してやりながら言う。
伸下も同じように缶を開けて三池に渡し、お互いのものを打ち付ける。乾杯。
この辺はツーカーのやり取りだ。
「ん、まあな。俺、さほど嫌いじゃないんだ」
「場所取りが?」
「うん。まあ仕事柄野営に慣れてるってのもあるんだろうけどな。この春の早い時期の、きりっと冷えた夜に桜を見ながらぼんやり寝ころがるってのも結構おつだぜ」
 ビールを口に運びながらそんなことを言う。彼の目線は上方に向かっている。今まさに満開を迎えんとしている八分咲きのソメイヨシノがそこにある。
 夜の闇に浸されない、抜けるような白い花弁が夜空を覆い隠して広がる。
 圧巻だった。三池は思わず見とれてビールを口にするのを忘れる。
「ふうん」
 場所取りが好きだなんて変わってるの。と口にしかけたが三池は言葉にはしなかった。桜を見上げる伸下の表情が夜目にも穏やかだったせいだ。
「とにかくあたしが来たからには退屈しないわよ。話し相手になってあげる」
「サンキュー」
伸下は微笑む。
「ありがとな。来てくれて」
伸下が三池の肩を引き寄せる。
舞い散る桜の花びらに隠れて、キスをした。
「……唇、冷たいね」
照れ隠しにそう言うと、
「風邪引かないようにアルコールで内側からあっためないとな」
と返される。
「賛成」
「少し早いけど、二人で花見ができるなんてついてる」
 しかも夜桜。うれしそうに笑う伸下を見て、三池はあああたしはこの男が本当に好きなんだなと改めて思う。
 場所取りに出かけたと聞いて、取るものも取り合えず基地を飛び出して、コンビニで差し入れ買い込んで、電車に揺られてこの花見の名所まで。
 ただそばに居たくて。
 その思いだけがあたしを突き動かす。ほんとに恋してるんだなと三池はビール味の幸せを噛み締めていた。


夜が濃度を増すごとに、桜はいっそう美しさをまとっていく気がした。見る角度によって表情が違う能面を見るかの如く、刻一刻と色合いを変える。
花見酒に酔いしれながら、桜を愛でていた伸下がふと真顔に返って言った。
「お前、終電出ちまうぞ。そろそろ帰らないと」
 寒さよけの毛布に包まった三池は、伸下の肩にもたれかかって、んーと唸った。
「なんだか面倒になっちゃったなあ。帰りたくない。あんたとここにいる」
 けっこう酔っているようだ。伸下は迷う。このまま一人で電車に乗せて帰すよりは、朝までここに置いたほうが安全かもしれない。
 でも……。
「外泊は取ってきてるのか」
 一応尋ねると、「うん」と頷く。その辺は、そつなくやれる女だと分かっている。
「近場のホテル、空いてるかな。花見客で最近は軒並み埋まってるって聞いたぞ」
 呟くと、三池は面を上げた。不満そうに鼻の付け根にしわを刻む。
「ホテルなんかに泊まらなくていいもん。ここに泊まる」
三池は勝手に脇に広げておいた伸下の寝袋に潜り込んだ。
 隊の支給品だから、モノはしっかりしているし市販のものよりも大きめだ。でも、それにしても二人が入るにはちと狭い。
 しかし構わず三池はぐいぐいと身体を突っ込む。
「お、おい、舞子」
 とっさに辺りを窺うも、幸い人目はない。
 ここをキープしたのが花見慣れしていないやつで、どちらかというと一等地とはかけ離れていたからだ。墓地に近い公園の裏手で、公衆トイレも近い。においはいまのところ気にならないが。
 そのせいか、伸下のようにビニールシートを広げて、不寝番をおおせつかっている者も少ない。厚着してシートに座り込んでいる者もいるが、めいめいがポータブルゲーム機に没頭するか、イヤホンで音楽を聴くか、スマホと首っ引きで何かアプリにはまっているようだ。はっきりいってしまえば他人のことなど目に入っていない。
「今晩はあんたと泊まる。ねえいいでしょ?」
 寝袋に入って身体をくっつけてくる。膝に頭を預けて甘え声で言うものだから、無碍にできない。伸下は困って目を泳がせた。
「泊まるって、……それはまずいだろ」
「まずい? 何が? 野宿が?」
 アルコールのせいで少し重たげなまぶたを上げて、挑むように三池が見る。
「それもそうだけど。それよりこのシチュがまずいだろ。寝袋それひとつしかないんだぞ」
「あんたも入ればいいじゃん」
「あっさり言ってくれるな、お前は」
こんな夜更け、ひとつ寝袋に、二人でとか。
 やばい気がする。
 口ごもった伸下の逡巡を、三池はちゃんと見抜いていた。んふふと瞳をくるめかせて言う。
「えっちしたくなっちゃう、って?」
「お前、ストレートすぎ」
思わず目をそらした。
三池はいっそう伸下に身を寄せた。猫のように。
そして、
「ストレートなの、嫌い?」
 三池は上体を起こし、舌を出して伸下のあご下をぺろりとやった。本当の猫が飼い主にそうするように。
 夜のせいで伸びた無精ひげの感触が舌先にざらりと載る。
 伸下はあごを引き、間近で自分を見る三池に目を合わせた。
「……嫌いじゃないけど」
「あたしは好き。あんたとこうしてるの」
 あったかいもの。そう言って、三池は寝袋の中から手を伸ばす。
 シートに胡坐をかく伸下の股間に。
「あ」
 内腿にそろそろと手を添わせ、そろそろとジーンズのファスナーを下ろしていく。
 ちいいい、とか細い子猫のような泣き声がくぐもって聞こえる。
「舞子」
 思わず身じろぎした伸下のトランクスの合わせ目に、三池はするんと両手を潜り込ませた。
 宝物をそうっととらえる。あったかい。
「……っ」
 伸下は痙攣を飲み下す。うっかりすると声が漏れそうだった。
「ねえ、帰れなんて言わないで。今夜はこうしていよ?」
 もう一度舌を伸ばし、伸下のあごをぺろり。
 手では、まだ力なく熱を湛えるだけのペニスを優しく弄びながら、三池は囁く。
「いちゃいちゃしながらだとあったかいし、気持ちいいよ。それにあたしがいると退屈しないよ?」
 慣れた手つきで棹をしごき始めた三池に向かって、むっと伸下が言い返す。
「退屈だからって俺はお前を置く気はない」
 そしてお仕置きのようにキス。
 その間も、三池は伸下を手で慈しみ続けた。
 次第に固さを帯びてくる。芯が焦れるように内側から熱を放ち始める。
 手の中の変化がいとおしい。
「分かってる。言葉のあやだってば」
 ごめん。謝ると、伸下は三池の額に額を寄せた。目を覗き込む。
「俺が帰るなって言ったら、一晩一緒に居てくれるか舞子」
 三池は目を細めた。
「はなからそのつもりだけど?」
 でも言って。あんたの口から聞きたい、とおねだり。
 伸下は言った。
「今夜は帰るな。俺といてくれ」
「……うん」
 三池はひとつ息を吐き、伸下の唇に唇を重ねた。彼の肩の向こうに広がる桜並木を見やる。
「一足先に、お花見ね」
 ぜいたくね。とっても。
「ああ」
 うめき声のような、ため息のような熱いものが伸下の口を割って出る。それを肺の奥まで吸い込み、夜と同化する、濡れたような黒い瞳で三池は言った。、
「あたし、一度してみたかったの。桜を見ながら、お酒を飲
んで、あんたと繋がること。春がすみの中、あんたと抱き合
ったらどんなに気持ちいいだろって。ずっと思ってた」
三池はいっそう手首のひねりを加えていった。
伸下は喉を晒す。その瞳に桜が覆いかぶさる。のしかかってくるような白の重い質感が視界を塞ぐ。
「やらしい女」
 呻いて、伸下が身を委ねる。それ以上、もう何も考えられなくなった。

(ブロマガ連載「春を抱く」より抜粋)



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