背中合わせの二人

有川浩氏作【図書館戦争】手塚×柴崎メインの二次創作ブログ 最近はCJの二次がメイン

どこへでも2(ジョウ×アルフィン)

2021年05月16日 09時17分01秒 | CJ二次創作
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ジョウとアルフィンはその後どこにも寄らず、アラミスで借りたマンションに向かった。
二人きりになれるところなら、どこでもいいと恥ずかしそうに言ったアルフィン。
エアカーの運転席に着いたジョウの左手を右手でそっと握ってくる。
ジョウは自動操縦に切り替えて、彼女の手を離さなかった。照れくさいので、視線は窓の外へやる。
宇宙港付近の一帯は緊急事態宣言が布かれているため、レストランには入店制限がかけられていたり、店舗そのものがシャッターを下ろしていたりという状況だった。
エアカーの窓から見る街並が閑散としている。
「外にも出られなくてつまらなかっただろう」
ステイホームが推奨されてからずっと、ほぼ缶詰だったはずだ。ジョウがいたわると、
「うん。毎日、家と仕事場を行ったり来たりの繰り返し。お昼もサンドイッチ作って持って行ったりね。外食も、随分してないなあ」
とアルフィンがうなずく。
でもね、と続ける。
「あなたのお父様が、たまにお家に呼んでくださったのよ。
夜に食事を何回かさせてもらったわ。ミネルバで腕を振るえないから、その時はここぞとばかりにお料理頑張っちゃった」
「親父が?」
ジョウがいぶかしむ。
あまり自宅に客を招く人じゃない。しかも、俺なんてここ十年実家に帰ってもいない。そのセリフを飲み込んで、
「話、弾んだか。君と親父でいったいどんな会話になるのか想像がつかない」
と言った。
アルフィンは笑った。
「弾んだわよ。でも、話の中身は内緒」
「なんでだよ」
「だってジョウに関わることだもん。あたしたちの共通の話題といったらそれでしょう」
声にからかいが混じる。甘えるように彼の肩に持たれかかった。
「ちぇ、人をだしにして盛り上がったな」
昔やらかした悪戯の数々をきっとばらされた。ジョウが苦る。
「盛り上がったわ。楽しかった」
「隠してたな」
「ごめんなさい」
気を使ってもらっちゃったの。あたしが煮詰まった頃を見はからって、必ず声をかけて誘ってくれた。
「あなたのお父様も、優しいわ」
「……」
ジョウは肩にもたれたアルフィンの頭を空いている方の手でそおっと撫でた。
それは君が優しくしたくなる人だからだという言葉はあえて口にしなかった。


アルフィンのために借りたマンションに、検温と全身消毒を受けてから入室する。これらはエントランスを通る際、オートで全員に施される仕組みになっている。
部屋に入るなり、ジョウは彼女を背後から抱きしめた。
もう、誰に見られることもない。人目を気にする必要もない。
気持ちにセーブをかけるものは何一つない。細いおとがいを上向かせ、後ろから唇を奪う。
アルフィンはいきなり抱きすくめられたため、一瞬だけ息を吞み身を硬くしたが、抵抗はしなかった。
「……ん、」
「っ……」
宇宙港のときとは比べ物にならない激しいキス。容赦なくむさぼられて気が遠くなりそうになる。
飢えていた、とタロスが言った意味がわかる。ジョウの口づけは、まるで砂漠で遭難した人がオアシスを見つけたときのような必死さを湛えていた。どうしようもない渇きをただ満たそうとするかのように。
ようやくジョウはアルフィンを開放し、深く息をついた。
彼女の頬を両手で挟んで目を覗き込む。碧い瞳。熱に浮かされたように今はぼうっと涙で潤んでいる。
「俺が怖いか」
訊くと、アルフィンは小さい子のようにかぶりを振った。そして掬い上げるように上目で見て、
「怖くない。……でも、ちょっと手加減、してほしい」
思わずジョウの相好が崩れる。
「それは、無理な相談かも」
その場にゆっくりと押し倒す。君に触れたくて気が遠くなりそうだったから、この半年。
えっ、とアルフィンが驚く間もなく、彼女に体重を預ける。
かっちりと着込んだ彼女のアラミス評議会職員の制服を暴いていく。スカートの裾を手で割って。
「や、玄関でなんて、ジョウ。せ、せめてベッドに行かせて」
美しいラインを描くおみ足をさらけ出されたアルフィンが懇願するけれど、火がついてしまったジョウの身体を止めることはできない。
ジョウはアルフィンの脚のあいだに身体を置いて、彼女を抱きしめながら言った。
「ごめん。無理。ベッドまで待てない」
ここでさせてくれ。ベッドではあとでたっぷりと――
もうそれ以上言葉にならない。
「じゃ、じゃあせめてシャワーだけでも」
「それも無理」
今ほしい。一秒も我慢できない。
苦し気な声が、彼の喉を震わせる。
アルフィンはジョウの性急さに足元、いや全身を掬われながら、タロスのさっきの宇宙港での言葉を思い出した。
「アルフィン、今宵眠らせてもらえねえなあきっと」
そしてそれは、現実のこととなった。


自分でも見たことがない、知らない身体の部分を相手の目にさらして。
普段聞いたことのない艶めいた声を、声にならない吐息をお互いの肌の上にのせて。
会えなかった時間と初めて身体を重ねる興奮とをトッピングして、二人は甘い時間を紡いでいく。

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