「ねえ、もしも明日死ぬとして、今夜が最後の晩餐だとしたら、何を食べたい?」
夕食のメニューに煮詰まったアルフィンが、メンバーに訊いた。
大仰な質問だが、それだけ悩んでいるのだろう。
「最後の晩餐かあ。俺らは、やっぱビフテキとか、フランス料理とかのフルコースかなあ。がっつり食べてから逝きたいなあ」
リッキーが舌なめずり。
タロスはうーむと腕を組んでひとしきり考え込んでから、
「あたしは、地球で職人が握るスシですかね。釣り上げたばかりの魚を下ろして握ったところを、熱燗できゅっとやりたいですね」
悩み切って答えを出した。
なのに、
「ジョウは?」
最初からジョウにしか聞いてないわとでも言いたげに、アルフィンが振る。
「俺か、俺は、そうだな……」
ジョウが考え込む。わずかばかり。
「いや……俺は君が作ったものなら、何でも。何でもいいかな。最後に君の手料理を食べて死にたい」
その答えを聞いて、アルフィンが「!」と息を呑む。
模範解答だ。それ以外の答えはないっていうくらいの。120点満点。
リッキーとタロスは目を見交わした。
「兄貴、ずるいや」
「ジョウ、そいつあなしでしょうに」
ひでえなあ。外野からブーイングが上がる。結局今夜のメニュー決めに貢献していないくせに、アルフィンのご機嫌を完全に取ってしまうなんて。
「ジョウ~、大好き」
アルフィンがジョウの首っ玉にかじりつく。両腕を回して抱きついた。
「おっと」
ソファに掛けていたが、アルフィンを受け止めてバランスを崩しそうになる。よしよしと宥めながら、内心「ごめん」とジョウは呟いた。
最後の晩餐は、君の手料理がいいって言ったのは本心だけれど。
実はちょっと付け足しがある。
本当は、最後の晩餐を作った君を、最後の最後に美味しく戴いてから死にたいってこと。
じゃないと死んでも死にきれないってこと。
言えないけどな。
「ん? 何か言った?」
アルフィンが少し身を離して、顔を覗き込む。
「いや、何も」
慌ててジョウがかぶりを振る。勢いよく。
「ふーん。で、今夜は何を食べたいの? ジョウ」
「あ、えーと……」
一生の秘密。
って言ったら大げさかな。
タロスとリッキーが二人の甘々ぶりに呆れて席を立った。
アルフィンを膝にのっけたまま、ジョウは返答に困り頭を掻いた。
END
「セイレーンの夢」の前でも、後でも。どちらの関係性でも。
夕食のメニューに煮詰まったアルフィンが、メンバーに訊いた。
大仰な質問だが、それだけ悩んでいるのだろう。
「最後の晩餐かあ。俺らは、やっぱビフテキとか、フランス料理とかのフルコースかなあ。がっつり食べてから逝きたいなあ」
リッキーが舌なめずり。
タロスはうーむと腕を組んでひとしきり考え込んでから、
「あたしは、地球で職人が握るスシですかね。釣り上げたばかりの魚を下ろして握ったところを、熱燗できゅっとやりたいですね」
悩み切って答えを出した。
なのに、
「ジョウは?」
最初からジョウにしか聞いてないわとでも言いたげに、アルフィンが振る。
「俺か、俺は、そうだな……」
ジョウが考え込む。わずかばかり。
「いや……俺は君が作ったものなら、何でも。何でもいいかな。最後に君の手料理を食べて死にたい」
その答えを聞いて、アルフィンが「!」と息を呑む。
模範解答だ。それ以外の答えはないっていうくらいの。120点満点。
リッキーとタロスは目を見交わした。
「兄貴、ずるいや」
「ジョウ、そいつあなしでしょうに」
ひでえなあ。外野からブーイングが上がる。結局今夜のメニュー決めに貢献していないくせに、アルフィンのご機嫌を完全に取ってしまうなんて。
「ジョウ~、大好き」
アルフィンがジョウの首っ玉にかじりつく。両腕を回して抱きついた。
「おっと」
ソファに掛けていたが、アルフィンを受け止めてバランスを崩しそうになる。よしよしと宥めながら、内心「ごめん」とジョウは呟いた。
最後の晩餐は、君の手料理がいいって言ったのは本心だけれど。
実はちょっと付け足しがある。
本当は、最後の晩餐を作った君を、最後の最後に美味しく戴いてから死にたいってこと。
じゃないと死んでも死にきれないってこと。
言えないけどな。
「ん? 何か言った?」
アルフィンが少し身を離して、顔を覗き込む。
「いや、何も」
慌ててジョウがかぶりを振る。勢いよく。
「ふーん。で、今夜は何を食べたいの? ジョウ」
「あ、えーと……」
一生の秘密。
って言ったら大げさかな。
タロスとリッキーが二人の甘々ぶりに呆れて席を立った。
アルフィンを膝にのっけたまま、ジョウは返答に困り頭を掻いた。
END
「セイレーンの夢」の前でも、後でも。どちらの関係性でも。
⇒pixiv安達 薫