「おはよ」
「おはよう」
「起きてた?」
「今起きた」
「朝何にする?」
「んー、トーストでいい。たまには楽をしろよ、休んで。二度寝でもしろ」
「ジョウ、やっさしい。好き!」
「……なあこれいつまで続けるんだ?」
ふー。
ジョウは深く息をついて天井を見上げる。手にしていた携帯をベッドサイドに放る。
と、数秒もおかず、そこへ
「朝ごはんができるまでよー! おっはよ、ジョウ」
スマイル全開でアルフィンが彼の部屋にやってくる。ノックもせずに中に入り、ジョウのベッドにぴょんと乗り上がる。スプリングがばふんと弾んだ。
「ぐえっ」
腹にチョクで膝が入ったジョウはみっともなく悲鳴を上げる。それにはお構いなしにアルフィンは「今からご飯作りにいって来るね。出来たら呼ぶから待ってて」とご機嫌な様子。
ジョウは腹と頭、どっちを押さえようか迷って、結局頭を押さえた。もう一度ため息をついて、放った携帯をちらっと横目で見る。
「何で毎朝、メッセージアプリでやりとりしなきゃならないんだ?どうせ直接こうやって話すのに」
間近で自分を覗き込むアルフィンに尋ねる。
「それはあ、一番先につながりたいからよ。一日の初めから」
特別感まんさいだもーん。悪びれもせずににこにこするから、ジョウの毒気も抜かれる。いや最初からアルフィン相手に毒なんか持ち合わせてはいないんだが。
それでも自分を励まして、いつか言ってやろうと思っていたことを口にする。
「どうせこうやって直接起こしに来るのに?」
「どうせはないでしょ? 来てくださるのに、の言い間違いじゃ?」
ジョウは慌てて言い直す。
「来てくださるのは、確かに嬉しいですが。朝起き抜けで寝ぼけたままアプリでメッセージ打つの、面倒……じゃない、ひと手間というかだな」
もごもご。ジョウが口ごもる。と、
「ジョウ、あたしとやりとりするの、手間? 面倒?」
アルフィンの顔が曇る。美しい柳眉が寄せられ、頬がぷうっと膨らんだ。
「……う」
その表情で迫られると、ジョウは弱い。言葉に詰まる。
アルフィンは持っていた携帯を取り出し、手早く何かを打ち込んだ。それから画面を彼に見せて
「ーーというわけ」
うふふと微笑む。
「む……」
ジョウは文面を読んで硬直。動きを止めて赤くなった。
視線を天井に向けて、一度目を閉じた。
「~~ありがとう、ございます」
観念したように囁く。アルフィンはうんうんと何度か頷いて
「アプリってほんと便利ね、ありがたいわあ」
と言った。
--しゃあない。明日ぐらいは俺からメッセージ送ってみるかな。
こんな可愛い文面、見せられちゃなあ……。
アルフィンを抱え、頭をよしよしと撫でてやりながら、「毎朝、さんきゅ」と言ってジョウは彼女の額に口づけた。
END
LINEとかあったら、きっとアルフィンはこういう使い方してると思って書きました。
ええー、最後の殺し文句は一体…?気になる。
J君、寝起きのメッセなんて容赦なく既読スルーしそうなタイプなのに姫には甘いのねえ。。。
私も彼はメッセージアプリ関係、既読スルーだと思います。笑 でもそれを許さない姫の攻撃があるはずと信じて書きました。ご容赦を…