みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1481「時間」

2024-12-10 16:40:40 | ブログ短編

 彼は数(かぞ)え切(き)れないほど生(う)まれ変(か)わっていた。大変(たいへん)なこともたくさんあったが、いろんな人たちと出会(であ)い人生(じんせい)を楽(たの)しんでいた。
 あるとき、彼は面白(おもしろ)そうな本(ほん)を手に入れた。その本にはタイムマシンのことが事細(ことこま)かに書かれてあった。彼は何度(なんど)も何度も読み返(かえ)した。
 それ以来(いらい)、彼は生まれ変わるたびにタイムマシンを造(つく)ることに熱中(ねっちゅう)した。今まで出会ってきた人たちとまた会いたい。そして、彼が最初(さいしょ)に生まれた時(とき)へ戻(もど)りたくなったのだ。
 しかし、何度も生まれ変わって研究(けんきゅう)を続(つづ)けてみたが、タイムマシンを完成(かんせい)させることはできなかった。それでも彼はあきらめなかった。彼には時間(じかん)はたっぷりある。いつか必(かなら)ず完成(かんせい)させることができるはずだ。彼は確信(かくしん)していた。
 ――彼は不思議(ふしぎ)な夢(ゆめ)を見るようになった。今まで彼が出会ってきた人たちが現(あらわ)れる夢。しかも、最後(さいご)を迎(むか)えるときの…。いろんな別(わか)れがあった。病気(びょうき)で亡(な)くなったり、殺(ころ)された仲間(なかま)もいた。そして愛(あい)した人の死(し)もあった。深(ふか)い悲(かな)しみが、夢の中で彼を苦(くる)しめた。
 人と別れることには慣(な)れていたはずだった。彼の決意(けつい)は揺(ゆ)らぎはじめた。また会ってどうするんだ? 人はいつかは死ぬんだ。それを変えることはできない。そうだけど…。
 彼は何日も、何か月も考(かんが)え続けた。そして、続けようと決(き)めた。それでも、彼らと再会(さいかい)したいのだ。まだ話したいことがいっぱいある。後悔(こうかい)をなくしたいのだ。
<つぶやき>悔(く)いのない人生。もしそんな生き方ができたら、それが一番の幸(しあわ)せかもね。
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