怪獣(かいじゅう)たちの壮絶(そうぜつ)なバトルの最中(さなか)に、月島(つきしま)しずくは川相姉妹(かわいしまい)にささやいた。
「あなたたちはあまりのところへ行って。私が送(おく)り届(とど)けるわ」
初音(はつね)は首(くび)を振(ふ)って、「ダメよ。あいつ、あの洞窟(どうくつ)にいたヤツよ。あなた一人じゃ…」
しずくはなぜか微笑(ほほえ)むと、「知ってるわよ。あの娘(こ)と、ちょっと話しがしたくてね。私のことは心配(しんぱい)ないわ。今、ちょっと大変(たいへん)なことになってて、手を貸(か)して欲(ほ)しいの」
初音はしぶしぶ肯(うなず)いた。いつの間(ま)にか、怪獣たちは消(き)えている。岩(いわ)の上にいたメイサが立ち上がってしずくたちを見つめていた。しずくもメイサを見つめる。二人の間(あいだ)に何かのやり取りがあったのか、メイサは微笑んで見せて岩の上にまた座(すわ)り込んだ。
しずくは二人を促(うなが)して、「さぁ、行って…」二人の前にピンクウサギが現れた。初音はそれを手に取ると、琴音(ことね)と一緒(いっしょ)に幻影世界(げんえいせかい)を抜(ぬ)けて行った。
二人が消えるのと同時(どうじ)に、メイサがしずくの前に姿(すがた)を現した。二人はしばらく見つめ合うと、メイサが楽(たの)しそうに話しかけた。
「あたし、あなたのこと知ってるかも…。どこかで会わなかった?」
しずくは恐(おそ)れる様子(ようす)もなく静(しず)かな口調(くちょう)で答(こた)えた。「そうねぇ。どこかで会ってるかもね」
「あなたから強い能力(ちから)を感(かん)じるわ。嬉(うれ)しい。こんなの始めてよ。あなたとなら思いっきり楽しめそうだわ。さぁ、始めましょうよ。あたしは、いつでもいいわよ」
<つぶやき>二人の対決(たいけつ)が始まっちゃうのか? みんなの戦(たたか)いはどう展開(てんかい)していくのか。
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街(まち)の真ん中に大きな箱(はこ)が置(お)かれていた。誰(だれ)が何の目的(もくてき)でここに置いたのか? 箱には何も書かれていないし、誰か人が立っているわけでもない。街をゆく人たちは不思議(ふしぎ)そうにそれを眺(なが)めながら通り過(す)ぎていた。
その箱には、ちょうど覗(のぞ)きやすい場所(ばしょ)に小さな穴(あな)が開(あ)いていた。それに気づいた人たちが箱に近づき始めた。立ち止まったり、友だちと話しをしたり、写真(しゃしん)を撮(と)る人まで現れた。その中で、どうしても好奇心(こうきしん)を抑(おさ)えられない人がいた。その人は周(まわ)りをキョロキョロしてから、その穴の中をちらっと覗いた。そして、何やらニヤリとして行ってしまった。
その様子(ようす)を遠巻(とおま)きに見ていた人たちが、まるで吸(す)い寄(よ)せられるように箱に近づいた。そして、次々(つぎつぎ)と箱の中を覗き始める。そして、みんな一様(いちよう)にニヤニヤしながら行ってしまう。とうとう穴を覗こうという人たちが行列(ぎょうれつ)をつくるようになった。
誰が頼(たの)んだのか、警備員(けいびいん)が行列の整理(せいり)を始めた。どんどん箱の周りに人だかりができた。でも、どういうわけか、箱を覗いた人たちは中に何があったのか誰も話さなかった。ただニヤニヤするだけで…。これはもう、覗いてみたくなるのは人情(にんじょう)だ。まさに、人間(にんげん)の習性(しゅうせい)なのかもしれない。
人間とは好奇心の塊(かたまり)だ。と、聞いたことがある。それをまざまざと観察(かんさつ)できる場(ば)になった。この騒(さわ)ぎは、いったいいつまで続くのだろうか?
<つぶやき>あなたも覗いてみたくなったでしょ? いったい、中には何があるのかな?
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彼女にとって男性は全(まった)く別(べつ)の生きもの。なぜか彼女はそんな風(ふう)に感じていた。何を考えているのか分からないし、自分(じぶん)と価値観(かちかん)も違(ちが)うはずだ。そんな人と一緒(いっしょ)にいて楽(たの)しいはずがない。だから、誰(だれ)かとお付き合いするなんてまったく考えたこともなかったし、実際(じっさい)に誰かと親密(しんみつ)な関係(かんけい)になったこともない。
そんな彼女の前に一人の男性が現れた。この男性、彼女とは真逆(まぎゃく)の性格(せいかく)のようだ。だからなのか、仕事(しごと)でも何かと意見(いけん)が食(く)い違い、彼はことあるごとに彼女に突(つ)っかかっていた。彼女はそのたびに同僚(どうりょう)の女友達(おんなともだち)に愚痴(ぐち)をこぼすのだ。彼女の頭の中は、彼のことでいっぱいになっているようだ。
女友達は一通(ひととお)り愚痴を聞き終(お)えると、彼女に言った。
「こうなったら、あいつと付き合っちゃえばいいんじゃない」
彼女は一瞬(いっしゅん)かたまった。そして、「何でそうなるのよ。あんな人と付き合うなんて…」
「だって、そんなに気になってるんなら、もっと近(ちか)づいちゃえばいいのよ」
「はぁ? やめてよ。そんなの…、あたしにはムリだから。もう変なこと言わないで」
「そうかなぁ」女友達は彼女から目線(めせん)を外(はず)して、「私には恋人同士(こいびとどうし)の痴話(ちわ)げんかにしか見えないんだけど…。まぁ、恋人にならなくてもいいけど、もう少し二人でおしゃべりした方がいいと思うよ。そうしてくれないと、仕事の効率(こうりつ)が上がらないんだから」
彼女はふて腐(くさ)れる子供(こども)のような顔をして、「もう…。分かりましたぁ」
<つぶやき>誰でも苦手(にがて)な人っているよね。でもそれは、その人をよく知らないからかも。
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