ある日、ひょうたん島に遠足にやってきたサンデー先生と5人の子どもたち(天才小学生の博士、いつもお腹をすかせたテケ、力持ちのダンプ、男勝りのチャッピ、小悪魔的なお嬢様のプリン)。
ところが、火山の大爆発でひょうたん島が本土から切り離され、大海を漂流。サンデー先生と子どもたちは島に残されてしまう。
そこに空から傘のパラシュートでギャングのダンディが、いかだで海賊のトラヒゲがやってくる。さらに、テレビ画面からドン・ガバチョが飛び出し、トラヒゲが盗んできた金庫からは医者のムマモメムが現れた。
最初に『ひょっこりひょうたん島』の企画を提案したのは、当時27歳のNHKディレクター、武井博だった。
武井はそれまで、連続人形劇『チロリン村とくるみの木』を担当。登場人物は動物や野菜、くだものたちで、村の日々をほのぼのと描く人気番組だったが、若い武井は物足りなさを感じていたという。
「もっと広い世界を描きたい!」。そんな思いから「ひょうたん型の小さな島に自分勝手な大人としっかり者の子どもたちが住んでいる。その島を漂流させて、行く先々で騒動を起こす」というアイデアを思いついた武井は、企画案を提案会議に提出。この27歳の発想がなんと、『チロリン村』の後番組として採択されたのだ。
肝心の台本を誰に依頼するか? 武井が挙げたのが、当時ほとんど無名の作家だった当時29歳の井上ひさしだった。
実は、井上と武井は、その1年半ほど前、井上の脚本、武井の演出というコンビでテレビドラマを作っていた。番組は、放送記念日の子ども向け特集番組『テレビ憲法』。井上にとっては、初めてのテレビドラマの脚本担当だった。そして、その縁で2人は半年ほど、東京・小岩のアパートに隣り合って暮らす仲だった。