南英世の 「くろねこ日記」

笑わない数学

 
テレビでやっているこの番組を時々見る。そして改めて思う。数学の教師の使命って何だろうと。
 
50年前、私が受けた数学教育は問題を解くことを目的とするような授業だった。大学入試問題を解いて合格できる数学力を付ければそれでOKみたいな。でも、それって本当に数学教育の在り方なのかな?
 
一般に、入試に出る問題と本当に高校生に教えなければいけないことの間には大きなギャップがある。教師の役割とはその学問の面白さを伝えることではないか。面白いと思わせることができたら生徒は自分で勝手に走り出すエンジンを内蔵している。
 
今の教育は生徒に点を取らせるために細かいことを教えすぎる。解き方ばかりを教えて物事の本質を教えない。たとえば微分・積分の計算はできても、そもそも微分とはいったい何か、積分とはいったい何か、なぜそんな考え方が必要とされたのかなど、微積の本質を授業では教えない。
 
学習指導要領を超えたもっと深ーい内容を授業で扱えば、生徒はもっと数学が好きになるのではないか。かつて指導教諭(=先生を指導する先生)としてすべての教科・科目の先生の授業を見せてもらった。その際、教室の真ん前に陣取り、生徒の顔や眼を見ていた。生徒の表情を見ていれば先生の話が生徒の心に届いているかがよくわかる。
 
 
最近の若い先生方の職員室の机を見てがっかりする。専門書がほとんど並んでいない。たとえば数学の先生の机にはチャート式や受験参考書しかならんでいない。他の教科も似たようなものである。
 
なぜこうなったのか? 目先の結果を求める時代の風潮が高校教育をだめにしているのかもしれない。3日後に大学共通テストがある。進学校ではこの結果が悪いと担当教諭は低い評価をされる。時には校長室に呼び出され、人事異動で左遷されたりする。だから10年後20年後などと悠長なことを言っておれない。
 
もちろん中には素晴らしい先生もいる。天王寺高校の数学のS教諭。入試に直接関係ない話も盛り込み、生徒をぐいぐい引き付ける。生徒の心をつかむグリップ力は半端なかった。こんな先生がもっと増えてくれたらいいのになあと思う。笑わない数学を見ながら、ふとこんなことを思った。
 
 
 
 
 
 
 
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