毎日が遺言

臓器移植

 臓器移植を家族が同意したというニュースを、たまたま妻と二人で見ていた。
 妻が、「私が先に死んだら、脳死の段階で、私の臓器のどこと使ってくれてもいいからね。臓器移植はOKやから。今、意志表示しとくね」と言った。
 「でもなぁ」と私は言った。「お前の体を、見ず知らずの連中が奪うようにして切り刻むのは、耐えられんなぁ」
 「あれ、そう? 私は、死んでしまったら自分は何も分からへんのやし、人のためになるんやったら全部使ってくれてもええと思ってる」と妻が言う。
 「でもな」と私。「いくら死んだと言っても、何もつながりのない連中に、自分の体を切られて、そいつらがほしいところだけを持っていかれるのは、オレはイヤやな。たとえば、オレと、ずっとそんな話をしていて、『オレが死んだらお前がオレの臓器を取り出してくれ』みたいな関係の医者がいたら、オレは臓器提供してもええと思うで」
 「母さん(妻のことです)がよくても、母さんの体を赤の他人が切り刻むのは、オレは耐えられん」と言ったら、妻は「なるほどなぁ」と、不思議だけど納得できる、みたいな表情をしていた。
 たとえしたいとなって、ただの肉体になったとしても、死んだ瞬間に、その人固有の肉体ではなく、ただのたんぱく質や脂肪の塊になるのではない、という思いが、私にはある。それが臓器提供への決意を阻んでいるのだ。
 「私の体をもてあそぶのは、生前から納得できた相手だけが許されて良い」とおもう。それが私の妥協点。いくら社会的に必要であっても、「必要」は万能ではない。非科学的な思い入れもある。それが、日本的な心性であると思うのだ。
 でも、妻がそういう限り、私は妻の臓器提供に同意する。私はきっと苦しい気持ちになるに違いないが、妻の意志を100%生かしたいと思う。
 妻は私のものではなく、妻自身のものだから。当り前といえば当たり前のことやけど、連れ合いとしてはそれは苦しいこと。でも耐える。大好きな妻の意思は尊重したいと思う。

コメント一覧

みらパパ
http://yaplog.jp/mirapapa/
> <色:#ff0000>こるねさん</色>
私、どちらも理解はできるんですけど、やっぱり情に振りまわされてしまうんですよね{笑}{汗}
お連れ合いも私と同じなんですね{YES}
結局、男は<太>無駄にロマンチスト</太>なのかもしれませんね(笑)。
こるね
私も 臓器提供派です。
でも 夫が みらぱぱさんと
似たような事を
言っていました。
夫の気持ちも
痛い程分かるので
無理にとは
考えていませんが
私的には
自分が 死んだ際に
誰かの役にたてるなら
嬉しい…ですね。
助かる命が有るなら
自分の 臓器でも何でも使って
助かって 残りの人生を
全うして欲しい…と
思います。
全然 きれいごとでは無く
資源の有効活用…的にしか
考えていません。
大義名分なんて
嘘臭いだけですし…
あっ!それは 私が あまのじゃくなだけですね(笑)
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