彼等の今は、何方に、どの様に、写るのか、彼等自身は解らない。彼等は、唯必死にシャッターを切る事だけを考えている。彼等自身は全て捨てて、臨んでいるのである。自身以外の全てをフレームに修め、額士の指示通りに、事を進める為に写すのである。今の日本には、失われたものがあまりにも多く、彼等に収めきれない物が多いのである。その一つに、感情がある。いつからか、世の中に対して、期待する物が無くなったので、明るい気持ちや表情が無くなり、誰に怒っていいのか、わからずに、戸惑いの表情しか、見せない。動物も植物も無くなった、いまの世界に、人間を喜ばせるものは、存在しない。子孫を残す事も恐怖が先に立ち、快楽の世界に、浸ることも無い。その世界を彼等は、必死に、撮り続ける。昔の昔から、言い伝えられて来た、収まりが治りに通じる、世界をフレームに収めて、これからはじまるのである。初めて、遺産を受け継がれる世界が出来て、額士の活躍が始まるのである。
その準備を彼等は、行っているのである。
その準備を彼等は、行っているのである。