ワールドカップにて日本が予選を通った日は、我が社営業部は、サッカーの話題でワイワイと賑やかだった。ほとんど私を含め、にわかファンだが、流行りには乗りたいという営業特有の特徴が出たのだろう。その中、普段は大人しく融通のきかない堅ぶつで真面目な、皆から役人と言われていた若手社員が珍しく会話の中心にいた。彼の出身地に強いサッカーチームがあったらしく、子供の頃からサッカーに慣れ親しんでいた。そのため、他の連中のニュースの聞きかじりの能書きより、明らかに詳しく説得力があった。そんな中私は、2点目のゴール前にボールがグラントの外に出ていたのではないか?と疑問をなげた。
他の連中は。
(あれは見る角度によって違う。)
(審判の判定が全て。)
(国際大会は、よくあること。)
など各々好き勝手な能書きを話していたときである。
日頃は堅ぶつで真面目な役人が、ボソッと
(バレなきゃ良いんですよ。)
と笑顔でいった。私達は彼の意外な一面に触れ、はなしをしていた全員が彼を見た。彼は皆の動きに、少し驚き。
『あっ、選手が思った事を言ったんですよ、僕はそんな事思いませんよ。』
と少し慌てたように言った。私は慌てた彼を見た事なかったので、少し可愛く思えた。