中小でブラック企業の我が社の営業は法人を相手にしたものだった。そのため、御得意さんのお客様が存在し、挨拶周りをすれば、ある程度数字は読めた。
しかし、この一連のコロナである、大部分の法人の財布のヒモはグッと締め付けられ、それに伴う様に担当者の裁量権は、少し前では考えられないほど縮小され、そして煩雑な手続きを要した。
今までのように前例があるから契約とは簡単にいかなくなっていたのである。
当然数字の伸びは鈍重となり、お偉いさんは、この事を重く見て営業責任者に数字をあげるようハッパをかけた。
我が社の営業責任者は、御得意さんの子会社や関係のある団体にも声をかけろ。新規開拓しろ。と大号令をかけた。
そして、我々は当然として、人事、総務の若手も手伝いに来てくれ、まさに社をあげての営業活動となったわけだが。
御得意さんのルート営業を基本としていた我が社の営業部は新規開拓のノウハウがない。手探りながら、ホームページで電話番号を調べ、電話やらメールやらをした。が。思いつきの様な営業は当然上手くいかず、惨めなまでに撃沈につぐ撃沈となった。
『御得意さんだけでは数字が足らない。少しでも開拓しろ。』
『アポ無しで訪問しますか?』
『今の時代、そんな事したら捕まるからやめとこう。』
『営業スタイルが古いんですよ、今の時代にあっていない。』
『竹槍で戦えるか!』
『じゃ、どうするの?』
『文句言ってないで、何とかしょう。』
ストレスのためか、社員の間から不満が少しずつ出てきた。
このまま皆んな全く成績が上がらなかったらどうなるのかな?
年末に向けて私は妙にゾクゾクした。