私がミリタリー小僧だった頃、“ホルニッセ”という名前ではなく“ナースホルン”という名前一択だったような…。
今では周知の事実ですが、元々“ホルニッセ”(スズメバチ)という名前だったのが、虫嫌いのヒトラーの命令により、初陣のクルスク戦から半年後の1944年1月に“ナースホルン”(サイ)に改名されてます。
ホルニッセは、1941年のソ連侵攻でT-34やKV-1等の想定外の強敵が出現し、既存の37mm砲や50mm砲では太刀打ちできず、短期間・低予算で開発できる対戦車自走砲の必要性から誕生しました。
Ⅲ号/Ⅳ号の車体と部品(エンジンやミッション、転輪、駆動輪、サスペンション等)を流用し、主砲は71口径88mm砲(Pak43/1)という最強の対戦車砲を搭載します。(のちにキングタイガーにも同じ主砲が搭載されますが、1943年当時ではまさに最強の主砲だったといえます。)
そのためホルニッセはある意味、寄せ集めの部品で作った“フランケン”自走砲と言えます。
このように攻撃力は最強でしたが、戦闘室の装甲はわずか10mmしかなく、近距離では重機関銃や対戦車ライフルの類に貫通され、さらにオープントップなので手榴弾等の近接兵器に弱く、現場でパイプフレームを溶接して防護ネットを被せる等の改造が行われています。
このように防御力は最弱でしたから、東部戦線のような視界の開けた平地でアウトレンジからの長距離射撃戦が活躍の場だったのも納得がいきます。
クルスク戦では南部線区の主攻撃軸(第4戦車軍)の右側面防御部隊(ケンプフ軍支隊第42軍)に配属され、文字通り長距離援護射撃を行っていたようです。
今回のキットは初陣となるクルスク戦仕様として、極初期型のつもりで製作しています。
(ただ、最初の生産ロット100両は1943年2月~5月に生産されていますが、資料によればこの4か月間でも細かいアップデートがされていて、厳密にこれが極初期型という線引きはできないように思います。)
例えば、後部のマフラーは生産初期にはⅣ号戦車と同じ形状のものが装備されてますが、途中で廃止されて、予備転輪ラックに変わってますし(この型がタミヤ製)、前部のトラベリングロックは形状が変わり(戦闘室からワイヤー操作で固定解除できる構造に変更)、後部のトラベリングロックは床下の砲弾ラックから弾薬を取り出す時に邪魔になるため、廃止されています。
また、前照灯も左右2基から左側1基に変更されています。
搭乗員も当初は、操縦手席横に無線手がいましたが、途中で無線機が戦闘室内右後部に移設され、無線手は廃止、装填手が無線手を兼務することで、乗員は4名(車長、操縦手、砲手、装填手兼無線手)になっています。
最後に、紆余曲折あったこのキットについて少し。
買った後で知ったのですが、このキット(#6165)と前のキット(#6001)は、砲弾ラックが閉まったままです。
このキットより後の#6386では、戦闘室内の砲弾ラックの開閉状態(もちろん88mm砲弾も載ってます)が選択式になり、極初期型、極初期型改良型、初期型の3タイプが選べ、さらに新金型等で製品自体バージョンアップされているので、どうせ作るならサイバーホビー(ドラゴン)製#6386の購入をお勧めします。
が、この#6386はお店では品切れ状態なのでオークション出品を探すか、再販を待つか、タミヤ製で我慢するかの3択になります。(#6001や#6165なら腐るほど出品されてますが、この#を買うならよほどの拘りが無い限りタミヤ製をお勧めします)
おまけ:
オプションの砲弾ケースですが、これがなかなかの老眼泣かせのくせ者で、とにかく部品が小さすぎてこだわり過ぎてハズキルーペ無しでは組み立て不可能です…。
さらにドラゴンのキット同様、組み立て説明書が日本製なのにイマイチ分かりにくいですが、完成した製品の出来栄えは文句なしです。
今回、ホルニッセ付属の真鍮製の88mm砲弾をセットしてみましたが、遊びもなくドンピシャ収納できます。