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「ウルトラセブン」伝説の全49話<後編>

2023年11月05日 | ウルトラ関連


「ウルトラセブン」伝説の全49話<後編>


 1967年10月1日から1968年9月8日にかけて放送された国民的特撮作品『ウルトラセブン』。

 地球防衛軍に所属するウルトラ警備隊とウルトラセブンが、地球侵略を狙う宇宙人と戦う姿を緻密なメカニック描写とともに描き、現在まで続く人気を博しています。

 “ウルトラセブン55周年”を記念して、第26話から最終話までを振り返ります――。





目次

第26話「超兵器R1号」

第27話「サイボーグ作戦」

第28話「700キロを突っ走れ!」

第29話「ひとりぼっちの地球人」

第30話「栄光は誰れのために」

第31話「悪魔の住む花」

第32話「散歩する惑星」

第33話「侵略する死者たち」

第34話「蒸発都市」

第35話「月世界の戦慄」

第36話「必殺の0.1秒」

第37話「盗まれたウルトラ・アイ」

第38話「勇気ある戦い」

第39話「ウルトラセブン暗殺計画 前編」

第40話「ウルトラセブン暗殺計画 後編」

第41話「水中からの挑戦」

第42話「ノンマルトの少年」

第43話「第3惑星の悪夢」

第44話「恐怖の超猿人」

第45話「円盤が来た」

第46話「ダン対セブンの決闘」

第47話「あなたはだぁれ?」

第48話「史上最大の侵略 前編」

第49話「史上最大の侵略 後編」

編集後記

※「ウルトラセブン」伝説の全49話<前編>はこちら


 第26話「超兵器R1号」



 地球防衛国際委員会の瀬川博士、宇宙生物学の第一人者の前野博士らをメインスタッフとして、防衛軍基地内の秘密工場で惑星攻撃用の超兵器「R1号」が完成した。

 R1号の性能実験の対象として、地球のへの影響が無く生物もいないシャール星座の第7惑星「ギエロン星」が選ばれた。

 実験は成功し、ギエロン星は粉砕されたが、宇宙観測艇8号がギエロン星から攻撃を受け、ギエロン星があった方角から謎の生物が地球へ向けて飛び立った――。






【制作裏話】


 兵器開発競争を暗喩するダンの「それは、血を吐きながら続ける悲しいマラソンですよ」という台詞を際立たせている回転カゴの中で走り続けるシマリス。

 このシマリスは、スーツアクターの山村哲夫氏が飼っていたもので、回し車が付いたゲージも山村氏所有のもの。



 第27話「サイボーグ作戦」



 ソガ隊員の後輩である通信隊員の野川は婚約者を紹介するために、車で防衛基地に向かう途中、朝日沼に潜んでいた宇宙船に車ごと拉致されてしまう。

 その宇宙船には、地球防衛軍極東基地の破壊を企むボーグ星人が乗っており、サイボーグ手術を施して洗脳状態にした野川を極東基地に送り込んだ。

 ボーグ星人から手渡されたプレート爆弾を手に、極東基地に侵入することに成功した野川とウルトラ警備隊の攻防が始まる――。






【制作裏話】

 本作のロケは相模湖で行われ、作中に登場する朝日沼に架かる橋は旧勝瀬橋だが、新勝瀬橋の開設に伴って撤去されている。

 撮影時期は2月で、出演シーンが少なかったひし美氏と古谷氏は小樽の雪まつりの営業で、隊員服を来て怪獣と戦っていたという。



 第28話「700キロを突っ走れ!」



 地球防衛軍が開発したニトログリセリンの数百倍の威力を持つ高性能火薬スパイナーを実験場に空輸中に、何者かの攻撃を受け、輸送機が撃墜された。

 そこで、ウルトラ警備隊にスパイナー運搬の特別命令が下った。

 空路は危険で海路にも問題があるため、ダンの発案でラリーに紛れ込んでスパイナーを陸送する秘密作戦を実行することになった――。






【制作裏話】

 冒頭でダンとアンヌが映画を見ているシーンは、東宝撮影所の試写室で撮影されている。

 ひし美氏が来ている服は衣装さんが用意したもので、ダンが食べているデカせんべいは、スタッフが浅草の仲見世通りに買いに行ったとか。

 なお、試写室は現在のサミットストア成城店の入り口付近にあった模様。





 ソガ隊員役の阿知波氏の特技がマンドリンということで、作品中にソガ隊員によるマンドリンの演奏シーンが加えられた。

 スパイナーはスナイパー(狙撃手)をもじった造語で、『帰ってきたウルトラマン』第6話でも名前だけ出てくるが、セブンのスパイナーとは別物となっている。

 恐竜戦車は、恐竜のみを高山良策氏が造形し、戦車部分は前年公開の日活映画『大巨獣ガッパ』で作られた61式中戦車を借りて合体させている。



 第29話「ひとりぼっちの地球人」



 京南大学物理学課の主任教授・仁羽博士の部屋の前を通った際、謎の衝撃音を聞いたソガ隊員の婚約者でもある南部冴子が、部屋の中で宇宙人らしき姿を目撃した。

 この年、京南大学は教育機関としては史上初めての科学観測衛星の打ち上げに成功していたが、それは地球の科学力を遥かに超えていた。

 冴子の高校時代からの先輩である一の宮は、仁羽博士の助手になってから変わってしまったという。ソガは、彼が仁羽教授に化けた宇宙人に利用されていると推測する――。






【制作裏話】

 この作品のロケは、学習院大学目白キャンパスで行われた。

 セブンとプロテ星人が戦う大学のセットも、学習院大学にあった通称「ピラミッド校舎」を模して造られた。





 ピラミッド校舎が2008年3月いっぱいで取り壊されてしまうということで、同年1月13日に一般公開と第29話の上映会が行われ、満田監督のトークショーが行われた。

 その際、スペシャルゲストとして学習院大学のOBの皇太子殿下(現・天皇陛下)も来場し、目白キャンパスやピラミッド校舎の思い出などを話された。

 幼少期の殿下がお小遣いで初めて買ったものは「怪獣図鑑」で、視聴番組が制限されていた中でよく見ていたのが『ウルトラセブン』だったという。





 なお、ソガと仁羽教授の対決シーンで、ソガが「勘づかれたとなれば話がしやすい」と言って、メガネを外して仁羽教授に銃を向ける。

 唐突な印象を受けるが、これは「ソガは記者を装って教授に近づくが、相手は最初からお見通しだった」というシーンが割愛されたため。

 ちなみに当初、プロテ星人の全身はグレーだったが、美術監督の成田氏の指示で濃紺で塗り替えられ、全身にダイヤブロックが貼り付けられた。



 第30話「栄光は誰れのために」



 地球防衛軍の参謀室から、明朝6時から星ヶ原一帯でので野戦訓練の計画が発表された。

 野戦訓練に備えて、射撃訓練を始めたフルハシとアマギの前に謎の男が現れ、「そんな打ち方で敵を倒せるんですか」と嘲笑し、射撃の腕を見せつけて去っていった。

 彼は、ウルトラ警備隊の候補生の青木隊員で、明日の野戦にも参加することになったが――。






【制作裏話】

 クレー射撃場のシーンは、八王子にあった御殿場クレー射撃場で、野戦訓練は千葉館山の平砂浦で撮影された。

 青木隊員を演じた山口暁氏は、『戦え!マイティジャック』の今井隊員や、『仮面ライダーV3』のライダーマンこと結城丈二などを演じた。

 残念ながら1986年に41歳の若さでこの世を去ったが、今もなお根強い人気を誇っている。

 なお、『ウルトラQ』のペギラ以降、ウルトラシリーズの怪獣デザインを手掛けてきた成田亨氏がこの回をもって降板した。



 第31話「悪魔の住む花」



 一面に広がる花畑で、空から舞い降りてきた綺麗な花びらに口づけをした女性・香織が突然倒れた。

 輸血に特殊な血液型の血液が必要だったのと、患者の容体に不審な点があったため、アマギとダンが病院に向かった

 彼女は血液中の血小板が急激に減っており、地球防衛軍が彼女が持っていた花びらを電子顕微鏡で確認したところ、宇宙細菌ダリーが住み着いていた――。






【制作裏話】

 香織を演じているのは、子役時代の松坂慶子。

 畑は千葉館山の白浜フラワーパークで、アマギと香織がメリーゴーラウンドに乗る遊園地は、二子玉川園で撮影されている。

 本作はSF映画『ミクロの決死圏』(1966年)から着想を得ており、この回から特殊美術を担当していた池谷仙克氏が怪獣デザイナーとなっている。



 第32話「散歩する惑星」



 宇宙ステーションV2から、「未確認飛行物体が地球に接近。警戒を要す。アステロイドベルトから外れた小惑星と推測される」という緊急連絡が入った。

 24時間のパトロールをすることになったアラシ、アマギ、ダンはウルトラホーク1号で飛行中、こちらに向かってくる島を発見する。

 その時、その島から発せられた光に気を失った3人は、ウルトラホークごと吸い込まれてしまう。再び目覚めた時、彼らは謎の島に不時着していた――。






【制作裏話】

 この作品の原案は虎見邦男氏がウルトラマンの初期に書いた「マンダスの島」で、これを元に山田正弘氏が「漂流する惑星」を書き、上原正三氏が後半をを改訂した。

 山田正弘氏は、虎見邦男氏とは学生時代からの友人だったという。

 なお、準備稿の段階ではマンダラ星人という異星人の名前があったが、決定稿では削られ、正体は謎のままとなった。

 ひし美氏は、ロケ地である川崎生田の草原に生えていたツクシを摘んで帰り、次の日にスタッフやゲスト俳優に料理をして振る舞ったとか。



 第33話「侵略する死者たち」



 地球防衛軍パリ本部から、潜水艇S号によって機密書類が極秘の内に運ばれてきて来た。

 潜水艇は伊豆半島沖に浮上し、そこからヘリコプターで極東基地に向かうことになったが、極東基地周辺で身元不明の男性が突然車の前に飛び出してはねられる事故が相次いでいた。

 極東基地のメディカルセンターに搬送されてきたのは9人で、いずれの患者もすでに亡くなっていた。その後、基地内で不可解な出来事が起こり始める――。






【制作裏話】

 準備稿では、シャドウマンを操るユーリー(沖縄方言で幽霊の意)星人が登場する。

 池谷仙克氏が描いたユーリー星人のデザイン画も存在するが、決定稿では姿を見せない謎の宇宙人になっている。

 なお、作品中に英SF特撮人形劇番組『キャプテン・スカーレット』で使われた打楽器ティンパニに合わせて前後の映像がフラッシュバックする場面転換が用いられている。



[出典] 昭和42年ウルトラセブン誕生



 第34話「蒸発都市」



 夜の街をソガ隊員と一緒にポインターでパトロールしていたダンは、アスファルトを切断して地底深く掘り下げている特殊な機械の音を感知し、現場に急行した。

 現場の作業者に職務質問をしたが、夢遊病者の様に反応が無い。その時、不審な車がポインターに向かって発砲しながら逃走した。

 ポインターに飛び乗って追走し、逃走車のタイヤを銃撃して路肩に停車させたが、車は消滅。それと同時に、ソガとダンもポインターとともに消滅した――。






【制作裏話】

 霊媒師ユタ花村を演じたのは、ウルトラマン第32話でパティ隊員を演じた真理アンヌ氏。ちなみに、ユタとは沖縄における霊媒師を意味するという。

 早朝の丸の内のオフィス街でロケがあった時、円谷一氏の奥さんがフルーツポンチを作ってきてくれたとか。



 第35話「月世界の戦慄」



 地球防衛軍の月世界基地が突然爆発したため、キリヤマ隊長とダンがホーク1号で、宇宙ステーションV3からクラタ隊長がステーションホークホークで月に向かった。

 キリヤマ隊長とクラタ隊長は一緒に宇宙に出るのは、3年ぶりでヘルメス惑星のザンパ星人を全滅させる作戦以来だという。

 しかし、クラタ隊長がキリヤマ隊長と通信している最中、同乗していた隊員が遠隔指示機を使って不審な動きをしていた――。






【制作裏話】

 ザンパ星人のネーミングは市川森一氏によるもので、イタリア映画『道』(1957年)に出てくる人物のザンパノから採られている。

 市川氏はクリスチャンだったので、月怪獣ペテロは、宇宙人の使い魔的存在から、キリスト教十二使徒の名からとられている。

 キリヤマ隊長やダンが来ている宇宙服は、1968年8月公開の東宝映画『大怪獣総進撃』で使用されたものを流用している。

 なお、セブンが寒さに弱いことと演出するため、セブンが元気な時はハイスピードカメラ、寒さでパワーダウンした時はノーマルカメラで撮影されている。


 

 第36話「必殺の0.1秒」



 地球防衛軍主催の射撃大会が開催され、最後はウルトラ警備隊代表のソガ隊員と同期のヒロタ隊員同点決勝となったが、ソガ隊員が射撃ミスをしてヒロタ隊員が優勝した。

 そんな中、地球防衛軍が秘密裡に行っていた人工太陽の研究に従事していた博士や教授たちが相次いで殺害される事件が起きていた。

 そのため、来週中にも来日する予定の人工太陽計画の最高責任者であるリヒター博士の警備を射撃大会で上位入賞したソガ、ヒロタを含む4人が行うことになった――。






【制作裏話】
 
 脚本の山浦弘靖氏は、『七人の刑事』『ザ・ガードマン』を書いていた経験で、警察ドラマや犯罪ドラマなどの組織内の確執やアクションを持ち込んだという。

 射撃大会のロケ地は、八王子にあった御殿場クレー射撃場。



 第37話「盗まれたウルトラ・アイ」



 謎の発行体が山中に落下したという通報が警察から入ったため、アマギとフルハシはポインター1号で調査に向かった。

 若い女が運転するトラックとすれ違った先で男が倒れており、「光の…女が…」と話して息絶え、現場には噴射跡が。そのトラックはダンの静止を振り切って逃走。

 追走したダンは、謎の飛行物体が発した光でハンドル操作を誤って崖下にポインターごと転落。気を失ったダンの胸ポケットから、謎の女がウルトラアイを盗んでいった――。







【制作裏話】


 マヤが最後にジュークボックスの「J」と「7」のボタンを押して消滅するシーン。

 アルファベットの「I」が無いことから、「愛が無い」という解釈をする人もいるが、実際は数字の1と間違えないように、「I」のボタンが無いだけであった。

 実際は「J」「7」は、かな入力だと「ま」「や」になるのが真相のよう。





 マヤを演じた吉田ゆり氏(現・香野百合子)は、当時17歳の高校2年生で、本作がデビュー作だった。

 最後の警備隊の制服を来たダンが夜の街中を歩くシーンは、隠し撮りで撮影されている。



 第38話「勇気ある戦い」



 箱根山中に原因不明の濃霧が発生し、徐行運転中の自動車30台が消滅する事件が起こったため、ウルトラ警備隊に原因の調査が命ぜられた。

 そんな中、ダンは、心臓欠損症の手術を拒否しているアンヌの友達の弟・治君の説得に向かっていた。世界的名医ユグレン博士が手術できるのは明日しかないという。

 現場に急行したウルトラ警備隊が巨大な足跡を発見した翌日、ユグレン博士を乗せた車が渋滞に巻き込まれた。すると、霧が辺りに立ち込め始めた――。






【制作裏話】

 TBSプロデューサーの三輪氏からラブコールを受け、『ウルトラマン』の制作第1話・2話を監督して番組のひな型を造った飯島敏宏氏が監督した作品。

 なお、病院の屋上はTBS会館の屋上、池のある広場は向ヶ丘遊園地、病院の外観は保土ヶ谷カントリー倶楽部で撮影されている。

 クレージーゴンという名前は放送後につけられたもので、作品中では「バンダ星のロボット」としか呼ばれていない。

 クレージーゴンのデザインは、飯島監督が少年時代に見た左右の手が大きく異なるシオマネキというザリガニがモチーフとなっている。

 ロケ地は、津久井湖周辺や、現・さがみ湖ピクニックランド周辺。



 第39話「セブン暗殺計画 前編」



 地球侵略を狙うガッツ星人はウルトラセブンを倒すことが早道だと考え、怪獣アロンを使ってその能力を探り、セブン暗殺の計画を立てて地球にやってきた。

 ウルトラ警備隊に度重なる通報が入り、4回出動したが何も異常が無い。その後、5回目の通報が入ったため、ダンとアンヌが出動した。

 現場に到着すると、運転手が乗っていない車がポインターを囲い始め、ガッツ星人が姿を現した。彼らの狙いはダンだったのだ――。






【制作裏話】

 本作の監督である飯島氏によると、ガッツ星人は“バルタン星人の再来”というイメージで、よりクレバーで狡猾で、戦い方の上手い宇宙人を登場させようという狙いがあったという。

 セブンが磔刑される場所は、力道山がゴルフ場開発のために購入した土地だったが、1963年に亡くなってしまい事業がストップしていた時に撮影に使用されたという。

 土地はのちに転売されて、「さがみ湖ピクニックランド」という遊園地が建設された。



 第40話「セブン暗殺計画 後編 



 ウルトラセブンを手中に収めたガッツ星人は、「夜明けとともにセブンを処刑する」と通告してきた。

 天文班からの報告で、夜明けは午前5時21分とわかった。そんな中、宇宙ステーションの回路を使って極東基地に送信してくる謎の発信音をキャッチした。

 その発信元はセブンの脳髄からで、「マグネリウムエネルギーが無いと体を動かすことができない」と言っていた。しかしそれは、世界のどこも合成に成功していないものだった――。






【制作裏話】

 本作は当初、『セブン暗殺命令』というタイトルで1話完結の台本だったが、1クール延長を受けて、前後編にスケールアップした。

 3クール39本を終え、さらに10本の延長が決まったため、本作で使用する音楽を中心とした第2回BGM録音が行われている。

 この頃には、美セン内に造型ルームが新設され、美術助手らによってアロンを含む怪獣の着ぐるみも製作されるようになっている。



 第41話「水中からの挑戦」



 伊集湖で釣りをしていた釣り人が河童らしきものと遭遇し、近くの鶏小屋が何者かに襲われた翌朝、河童の愛好グループ「日本河童クラブ」が河童が出ると噂の伊集湖を訪れた。

 同じく伊集湖に未確認飛行物体が落下したという通報のあったウルトラ警備隊も伊集湖に調査に訪れていた。

 伊集湖に未確認飛行物体が落下したのを観測した頃から、湖周辺に河童が出るという噂が広がったという。また、その頃から湖に魚が一匹もいなくなったという――。






【制作裏話】

 本作に登場する怪獣テペトは、番組内や少年マガジンで一般公募した『アイデア宇宙人大募集』の金賞に輝いた「回転サイボーグ デイクロス・レイザ」が元になっている。

 入賞作は一本足で水中や空中を移動する設定だったが、これを2本足に変更して造形された。



[出典] 昭和42年ウルトラセブン誕生


 なお、野営テントのシーンの撮影時にあるハプニングが起こっている。

 砧公園での夜間撮影時の待ち時間に、フルハシ、ダン、アンヌ、アマギの4人に「ファニーで飲んで待っててよ」と言った満田監督。

 自身の台詞があることをすっかり忘れていた伊吉氏は、ボトルをほとんど飲み干してしまい、挙句にスナックがあった2階から飛び降りる始末。

 その後、野営テントのシーンの撮影に臨んだが、伊吉氏は呂律が回らずNGを連発。

 しょうがないので、満田監督がフルハシの台詞をダンに振り替え、フルハシは資料を見ながら立っているだけになった。


 

 第42話「ノンマルトの少年」



 海上基地と海底基地からなるシーホース号が沖合で海底開発のテストを行っていた。

 ちょうど近くの砂浜で海水浴をしていたダンとアンヌだったが、アンヌの元に少年がやって来て「海底の開発をやめないと大変なことになる」と言って去っていった。

 その時、シーホース号が突然大爆発を起こした。爆発に関係があると判断したダンとアンヌは、その少年を捜すことにしたが――。






【制作裏話】

 海底開発基地センターの職員として科特隊のイデ隊員でお馴染みの二瓶正也
が出演している。

 本作の撮影している頃に、満田監督が最終回を演出することが決まったため、ダンとアンヌの別れを盛り上げるために二人を恋人同士のように描く演出に務めたという。

 蛸怪獣ガイロスは、一般公募で銀賞に輝いた「ガイロス星人」が元になっている。



 第43話「第3惑星の悪夢」



 地球防衛軍は、長距離用宇宙ロケット「スコーピオン号」を完成させた。テスト飛行に成功すれば、銀河系のどの星にも自由に行き来できるようになるという。

 スコーピオン号は、航路からロケットの状態まで全て計器がはじき出し、地上に送信されたデータを見て、地上から操縦する仕組みになっている。

 テストパイロットのダンとソガ両隊員は、打ち上げ後に計器航行に切り替えて20日間の眠りについたが、起動制御装置が正常に働いているのも関わらず、コースを外れて航行し始めた――。






【制作裏話】

 脚本は川崎高氏と上原正三氏の共作扱いだが、実際はほぼ上原正三氏が書いている。

 川崎高は実相寺昭雄監督のペンネームで、実際は川崎高氏(たかうじ)だったが、手違いによって氏の文字が外れてしまったという。

 ダンとソガが第4惑星に着いた場所は平和島、建設中のビルは鹿島建設本社ビル、処刑場は世田谷区立総合運動場体育館、地球人居住区はたまプラーザ団地でロケが行われている。

 なお、処刑シーンの射撃手の中に実相寺監督がいるがヘルメットで顔は見えていない。



 第44話「恐怖の超猿人」



 深夜の住宅街で、死んだ鶏を両手に持った不審な男が警察に呼び止められた際、サル人間変身して警察官の首の骨を折って殺害し、3mの壁に飛び乗って逃走した。

 事件の調査のため訪れたモンキーセンターで、出迎えた女の助手の行動に不審な点を感じたダンは、基地に戻るフリをして侵入捜査を行おうとする。

 しかし、ポインターのエンジンが壊されていたため、センターに泊まることになるが、そこは地球を猿人間の惑星にしようと企むゴーロン星人の支配下に置かれていた――。





【制作裏話】

 脚本は、上原正三氏と市川森一氏の共作。

 執筆旅行で赴いた愛知県犬山にあった「日本モンキーセンター」と当時大ヒットしたSF映画「猿の惑星」をヒントにして、前半を上原氏、後半は市川氏が書いたという。

 なお、ひし美氏は木曽川の日本ライン下りの撮影時は40度の高熱でダウン寸前だったという。



 第45話「円盤が来た」



 天体望遠鏡で星を見ることが大好きなフクシン君は、夜を徹して天体観測をする余り仕事中に居眠りしてしまって社長からも怒られる始末。

 そんなある夜、UFOの大群が地球に向かっていることを目撃し、ウルトラ警備隊に連絡するが、ウルトラ警備隊の調査では異常は見られなかった。

 念のため、ダンとソガがウルトラホーク1号でパトロールに向かうが、普段よりも星の数が多いこと以外、異常は見られなかったが――。






【制作裏話】

 脚本は、第43話と同じく川崎高氏と上原正三氏だが、今回は川崎氏(実相寺監督)が単独で書いている。

 フクシン三郎を演じた冷泉公裕氏は当時22歳の劇団文学座の新人俳優で、ドラマ出演経験は一度しかなかったが、実相寺監督が抜擢したという。

 ちなみに、フクシンという苗字は、実相寺監督のお仲間のTBSのディレクターだった福田新一氏のニックネームからとられているとか。

 少年を演じたのは、『超人バロム・1』で白鳥健太郎を演じた高野浩幸氏。





 フクシン君が天体観測をしているシーンはは美センの制作部の建物の窓の部分にベランダを新造して撮影されたという。

 ポインターで自分のマンションに送迎してもらうシーンも制作部の建物の前で撮影されており、画面の右側に当時存在したDスタジオも確認できる。

 なお、円盤の大群は美術の池谷仙克氏によってかき氷のグラスを2個合わせて造形されている。





 ちなみに、『円盤が来た』の撮影中に撮られたネグリジェ姿のアンヌが収められたスチール写真がある。

 これは、夜中の通報で大わらわの作戦室に寝ぼけたアンヌが入ってくるシーンがカットされたため、本編では流れていない。



 第46話「ダン対セブンの決闘」


 
 伊良湖岬一帯で怪現象が頻々と起こっているとの情報をキャッチした地球防衛軍は、ハイドランジャーで海底を捜索する一方、ダン、フルハシ、アンヌの3隊員を現地に派遣した。

 水中翼船から降りて車に乗り込んだ怪しい女をダンとアンヌが追跡。女が立ち寄ったプールサイドで監視している最中、ハイドランジャーが撃沈された。

 それと同時に、女はその場を立ち去った。女が座っていた椅子には時計が残されていて、その時計の時間はハイドランジャーが撃沈された時間で止まっていた――。






【制作裏話】

 ニセ・ウルトラセブンのスーツは廃棄されていたセブンのスーツの再利用したもので、各部のプロテクターはスーツの損傷部分を隠すために取り付けられた。

 ダンとアンヌが女サロメ星人を偵察をしている屋外プールは、愛知県にある三谷温泉「松風園」で一連のシーンは、蒲群近辺で撮影されている。

 アンヌが着ている青と白のチェックの水着と麦わら帽子は、ひし美氏の自前で、オレンジのタオル地のタンクトップとパンツは衣装さんが用意したものだという。

 なお、灯台がらみのシーンの大部分は三浦半島で撮影で、基地の入り口の灯台も観音崎灯台。



 第47話「あなたはだぁれ?」



 深夜2時、酔っ払ってタクシーで団地に帰宅した佐藤。自宅のブザーを鳴らすが、妻と子供から赤の他人扱いされ、部屋の中に入ることができなくなっていた。。

 団地の警察官や近所の知り合いにも他人扱いされ、困り果てていると、宇宙人のような不審者を目撃。上空を飛ぶウルトラホークを見た佐藤は、ウルトラ警備隊に電話した。

 フルハシはまともに取り合わなかったが、ダンは佐藤の電話口に、ウルトラホークでパトロール中にK地区でキャッチした謎の音波が流れていることに気付く――。






【制作裏話】

 団地に住む中年サラリーマンを演じたのは、科特隊のムラマツキャップでお馴染みの小林昭二。

 交番や電話ボックスは現場に持ち込まれたセット。クライマックスではヨハンシュトラウス2世作曲の『皇帝円舞曲』が響き渡る。

 物語の舞台となった「ふくろう団地」は、当時新興住宅地として賑わった「たまプラーザ」で撮影が行われている。


 

 第48話「史上最大の侵略 前編」


 
 ダンの体に異変が起きていた。脈拍360、血圧400、熱が90度近くもあり、ホーク2号でのパトロール中も視点が定まらない。

 ステーションV3から連絡があった不審な未確認飛行物体も撃ち落とせず、逆に攻撃を受け、地上に不時着。あまりの不甲斐なさにクラタ隊長から馬鹿にされる始末。

 そんな中、ダンの元にセブン上司が現れた。彼の体はこれまでの戦いで大きなダメージを受けており、これ以上エネルギーを消耗するとM78星雲に帰れなくなるという――。

 




【制作裏話】

 ダンに「これ以上のエネルギーを消耗すると死んでしまう」と警告を発する人物は、台本では「M78星雲人」となっていて特定の名称はなかった。

 しかし、1970年代後半頃から書籍などで「セブン上司」と呼ばれるようになり、定着していったという。

 なお、思うように動けず、苦悩するダンをアンヌが見守るシーンは、世田谷区総合運動場体育館で撮影されている。





 パンドンは、池谷仙克氏のデザインがでは二本の首が別方向を向いていたが、高山良策氏が造形したものは二つの頭が正面を向いて左右に並んでいた。

 そのため、現場スタッフによって口ばしが左右に当たる一つ頭の姿に改造された。



 第49話「史上最大の侵略 後編」



 セブンに変身し、エネルギー消耗で倒れてしまったダン。メディカルセンターに運び込まれたが、レントゲンを撮られると宇宙人であることがバレてしまうため基地を脱出した。

 その頃、ホーク3号でパトロールをしていたソガとフルハシは、セブンに左腕と右脚を切り落とされた双頭怪獣パンドンが消えていることに気付く。

 そんな中、ゴース星人に囚われて催眠状態にされたアマギから地球防衛軍に「降伏しなければ全人類を皆殺しにする」というゴース星人が伝えられた。――。






【制作裏話】

 防衛軍基地が攻撃を受けるシーンは、制作1話以前のウルトラホークの発進シーンなどのライブラリーフィルム撮りの際に撮影されたもの。

 満田監督によると、「侵略者が敵なんだから、最後は基地が襲われるだろう」ということで、「最終回がどうなるかわからないけど撮っておこう」という方針だったらしい。

 また、ゴース星人の言葉は、通常の日本語を早送り再生してさらに加工を加えているという。





 金城哲夫氏の使用台本には、ダンとアンヌの台詞の箇所に丸々×印が引かれ、金城氏自身の筆で作品中のクライマックスの台詞が直接書き込まれているという。

 なお、ダンが自分の正体を明かすシーンで衝撃的に鳴り響くBGMは、シューマン作曲のピアノ協奏曲第1楽章の冒頭部分。

 『ウルトラセブンが「音楽」を教えてくれた / 青山通・著』によると、使用された録音は下記のものだという。

 ・ディヌ・リパッティ(ピアノ)
 ・ヘルバルト・フォン・カラヤン(指揮)
 ・フィルハーモニア管弦楽団(1948年録音、EMI)





 ダンとアンヌの別離のシーンは、府中の是政橋付近にあった資材置き場で撮影されている。

 ダンのカミングアウトに対するアンヌの「宇宙人であろうと人間であろうとダンはダンに変わりないじゃない。例えウルトラセブンでも」という返答。

 これは、第12話「遊星より愛をこめて」のラストシーンにおける下記の台詞の伏線回収にもなっている。


 早苗 「私忘れない、決して。地球人も他の星の人も、同じように信じ合える日が来るまで」

 アンヌ 「来るわ、きっと。いつかそんな日が」

 ダン(そうだ。そんな日はもう遠くない。だって、M78星雲の人間である僕が、こうして君たちと一緒に戦っているじゃないか)
 




 編集後記



 放送終了後も、55年の長きに渡ってファンに支持され、新規のファンも増え続けている『ウルトラセブン』。

 本放送時の第1次怪獣ブーム、1970年代初頭の第二次怪獣ブーム、1978年からの第三次怪獣ブームを経た後の80年代のビデオ機器の普及。

 このことによって、『ウルトラセブン』は再放送を録画したり、ビデオソフトを購入して、いつでも楽しめるコンテンツになりました。

 (1987年8月の深夜には『泉麻人のウルトラ倶楽部』で、セブンが2話ずつ再放送されています)





 そして、1993年2月にNHKで『私が愛したウルトラセブン』が放送。

 1997年には、ひし美ゆり子氏がアンヌ時代を回想した著書『セブン セブン セブン 私の恋人ウルトラセブン』が上梓され、アンヌブームが起こりました。

 その後も、ファンイベントが定期的に開催されるなど、セブン人気は現在進行形で続いています。



【セブンの音楽】

 冬木透氏が「ウルトラセブン」の音楽を担当したのは、セブン初期のメイン監督だった円谷一氏が勤めていたラジオ東京(現・TBS)で、一緒に仕事をしていた縁でした。

 一氏のリクエストは、「宇宙の広がりというのはテレビのフレームでは表現できないから、音楽で表現してほしい」というものだったとか。
 
 また、冬木氏はインタビューで「時代性を追うとキリがなくなるので、あえて時代性を意識せず、普遍的な表現を担うのが音楽だと割り切った」と話しています。

 なお、『ウルトラセブンの歌』が「セブン」を何度も繰り返すのは、一氏が東(あずま)京一名義で書いた歌詞が短かったのが理由だそうです。



【撮影の事前準備】

 セブンの「ダーッ!」や「デュワッ!」などという掛け声は、モロボシ・ダン役の森次晃嗣氏が発しています。

 満田監督と二人でスタジオに入り、半日以上かけて色々な種類の声を録音したものを格闘シーンの場面に合わせて使い分けています。

 ウルトラホーク1号・2号・3号の発進シーンも、撮影が始まる前に1カ月以上かけて様々なパターンが撮影されました。

 ホーク2号の発進シーンは円谷英二監督に褒められ、東宝の特撮スタッフにわざわざ見せたとか。






【流血シーンの真相】

 円谷英二氏は、視聴者である子供に配慮して残虐なシーンは流血する表現を避けていました。

 しかし当時、ギャング映画などで血が吹き出すものが増え、プロレスも血糊を用意して派手にやるようになり人気となっていました。

 それを受けて、撮影所長から「怪獣も血を出せ」「ドバーッと赤い鮮血を吹き出させろ」という命令が来て、英二氏は相当抵抗したが抗しきれずに従ったそうです。



【視聴率低下】

 セブンは後半、視聴率低下に苦しめられました。
 
 これは、予算不足によって怪獣の登場回数が減り、派手さや娯楽性を重視する幼年層の番組離れを引き起こしたことが原因といわれています。

 『ウルトラQ』から怪獣のデザインを行っていた成田亨氏の退社や、シリーズ構成・脚本を担当していた金城哲夫氏の制作からの一時離脱も関係していると思われます。

 1968年4月にウルトラセブンの裏番組に『ミッキーマウス』が移動してきたことも、少なからず影響しているのかもしれません。



【円谷特撮の成長】

 特撮カメラマンだった鈴木清氏はこう言います。

 「円谷プロの特撮というのは、『ウルトラQ』が赤ん坊がハイハイしている時期で、『ウルトラマン』でヨチヨチ歩き、『セブン』でようやく立って歩けるようになった」

 また、光学撮影を担当した中野稔氏もこう述懐しています。

 「『ウルトラQ』で撒かれた種が『ウルトラマン』で芽を出して、『セブン』で実った。僕の人生にとって、一番収穫の多い時期だった」

 55年の長きに渡って支持され続けているウルトラセブン。

 その裏には、“特撮の神様”円谷英二の厳しい薫陶を受け、経験を積んで自信をつけたスタッフたちの熱意と技術力があるのです――。




[出典] 昭和42年ウルトラセブン誕生



【出典】ウルトラセブン研究読本」「ウルトラセブンの帰還
    「アンヌ今昔物語~ウルトラセブンよ永遠に」「セブン セブン セブン アンヌ、再び
    「万華鏡の女 女優ひし美ゆり子」「ハフポスト日本版
    「大人のウルトラセブン大図鑑」「ウルトラセブン完全解析ファイル
    「昭和42年ウルトラセブン誕生」「ウルトラセブンが「音楽」を教えてくれた
    「ダン モロボシダンの名をかりて

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