釧路湿原国立公園
1987年7月31日に釧路湿原が国立公園に指定されて、今年で35周年を迎えました。
10月1日が10(ten)と1(棒)で“展望の日”と呼ばれているようなので、釧路湿原展望台について簡単にまとめてみました――。
日本最大の湿原
釧路湿原は、釧路町、鶴居村、標茶町、釧路市の1市2町1村に跨る日本最大の湿原。
東西に約17km、南北に約36km、面積は26,861haにもなり、東京都がすっぽり入ってしまうほどの大きさで、東京ドーム約6000個に相当します。
釧路湿原の自然保護は、1935年に釧路丹頂鶴繁殖地として、2700haが国の天然記念物に指定されたことに始まります。
その後、次第に貴重な生態系の残っている自然環境として認知され始め、1980年に日本初のラムサール条約指定湿地に指定されました。
1987年には、日本で28番目の国立公園に指定され、釧路湿原国立公園となりました。
全国の湿原が水田や市街地となって消失していった中で、傑出した自然の風景地としての資質を保っていたことも、国立公園指定の大きな理由でした。
国立公園の4分の1は、特に厳しく保護される特別保護地区に指定され、タンチョウやイトウなどの貴重な野生生物の生息地となっています。
釧路湿原の起源
釧路湿原の始まりは、約2万年前のヴュルム氷期の最盛期。
当時は、今の時代よりも気温が10度位低く、海面も100mほど低かったため、北海道はシベリア大陸と陸続きでした。
長い氷河時代が終わると気温は徐々に上昇し、氷河は解けて海面が上昇し、内陸は海水で満たされていき、今から約6千年前に湿原全体は海で覆われ、古釧路湾となりました。
その後、気温が徐々に低下して海水が引き始め、堆積した泥炭の上に植物が生え、3000年前の縄文時代後期にほぼ現在の地形、陸地になりました。
湿原の霧
釧路湿原は夏に霧が多量に発生するため、全国の気象観測点の中で1年の平均気温が最も低く、6~8月の日照時間も全国で最短。
湿原に隣接する釧路市では霧は年間100日以上発生し、夏場の海霧の発生が多いのが特徴。
釧路付近の太平洋には、夏でも水温の低い寒流の千島海流が流れ、そこに暖かい南風が流れ込むと気温と水温の差で霧が発生し、湿原にも流れ込みます。
秋には放射冷却による放射霧、冬の冷え込んだ朝や夜には川から発生する蒸気霧などが発生し、湿原を深い霧で包みます。
こうした霧が、冷涼な気候を好む湿原の動植物を守り育ててきました。
また、湿原が濃い霧に覆われるために稲作ができず、水田開発を免れてきたことから、霧によって釧路湿原は守られてきたともいえます。
釧路湿原を眺望できる展望台
【細岡展望台】
数ある釧路湿原の展望台の中で、最も雄大な景観が見られるのが細岡展望台。
展望台からの眺めは釧路川の蛇行を前景に、原始の面影を留めている釧路湿原が眼下に広がっており、右手には雌阿寒岳と雄阿寒岳を望めます。
秋になると、湿原が黄金色に染まります。
【サテライト展望台(北斗展望台)】
釧路市湿原展望台に併設されている約2.5kmの遊歩道の先にある展望台で、サバンナの様な雄大な風景を堪能することができます。
湿原を眺めていると、大地全体から力強い生命力がみなぎっているのを感じます。ある意味、パワースポットなのかもしれません。
【二本松展望地】
二本松橋の手前の丘の上にある二本松展望地。
すぐ目の前を蛇行しながら流れる釧路川と雄大な湿原のパノラマが広がる知る人ぞ知る展望スポットです。
目の前を蛇行しながら流れる釧路川と雄大に広がる湿原のパノラマが素晴らしく、晴れた日には釧路市街まで見渡すことができます。
【コッタロ湿原展望台】
釧路湿原の中でも太古の自然を彷彿とさせる景観で、特別保護地区に指定されている地域。
コッタロ湿原展望台からは、ヨシ・スゲ湿原の広がりや蛇行するコッタロ川と三日月湖、そして無数の小さな沼が散在する様子をみることができます。
【岩保木水門】
釧路湿原を流れる旧釧路川にかかる水門で、1931年に完成。現在はその役目を終え、歴史的建造物として保存されています。
水門付近に展望地があり、低い視点から湿原を見渡せ、草原と遠く雄阿寒岳と雌阿寒岳を望むことができます。
【サルボ展望台】
コッタロ湿原展望地へ続く道に入らずに、国道391号線をそのまま進んですぐの所にある展望台。
ここからは釧路湿原だけでなく、左側には塘路湖、右側にはマクントー、エオルト沼、ポントーなどの湖沼が一望できます。
【サルルン展望台】
サルボ展望台との分岐点を左方向に500mほど歩いた場所にある展望台。実際は違いますが、ジブリの『思い出のマーニー』を彷彿とさせる景色です。
【キラコタン岬】
釧路湿原が海に覆われていた頃に岬だった場所で、チルワツナイ川の蛇行を眺めることができます。
国有地であるため文化庁の許可が必要で、鶴居村教育委員会で許可を受ければ立ち入り可能です。
温根内ビジターセンターを起点として、釧路湿原の中を自然探勝できる温根内木道。
木道の脇には色々な形の草花が咲いていて、眺めていて飽きません。
くしろ湿原ノロッコ号
春から秋にかけて釧路駅から運行される日本一遅い電車で、電車の車窓からは、釧路湿原の景色をゆっくりと眺めることができます。
2008年8月13日に累計乗車人数が100万人を突破し、2009年で運行20周年を迎えました。
編集後記
観る場所によって様々な表情を見せる釧路湿原。
眺望No.1はやはり、釧路駅から電車で20分ほどの釧路湿原駅で下車後徒歩10分ほどの所にある細岡展望台。
初めて見た時は、サバンナの様な圧倒的な雄大さに度肝を抜かれ、しばらく立ち尽くしてしまいました。(ブラタモリでタモリも驚愕していました)
第2位は、釧路市湿原展望台の遊歩道の先にあるサテライト展望台。ここも、細岡展望台に匹敵するくらい雄大な風景を堪能できます。
第3位は、二本松展望。コッタロ湿原展望台から見る景色も独特で見応えがあり、岩保木水門の低い目線から見る釧路湿原も新鮮でなかなか良いです。
釧路湿原の雄大な風景を見て、心のデトックスをしてみてはいかがでしょうか――。
【出典】「釧路湿原国立公園」 etc..
TBありがとうございます。
ステキな写真ばかりですね。
釧路湿原…勉強になりました。
北海道は4度目(道東は2度目)でしたが
何度行っても良いところですね。
めったに雪の降らない四国の人間にとっては
北海道はあこがれの地です。
また行きたいです。
憧れの釧路湿原は、あなたの写真ほどの写真は撮れませんでしたが、来て良かったと思いました。
是非またベストシーズンに来て、今度は散策路などをゆったりと歩いてみたいと思います。
7月ごろの花の情報も、お知らせいただければと思います。
私は、釧路市の展望台が出来て間もないころに行ったことがあります。やっぱりサバンナみたいだと思いました。
私の横に立っていた、いかにもやり手サラリーマンのようなオジサンが「広いなあ、ここを埋め立てれば一大コンビナートになるな」と大声で言っていたのが忘れられません。
隔世の感がありますね(笑)。
釧路湿原について、大変勉強になりました。
学生時代までは北海道に住んでいたのですが、住んでいた所というのは思いのほか何も知らないものですね。
そう考えると今住んでいる東京も、ただ生活の場のみとなっていて土地の歴史などは何も知らずに過ごしている気がします。
その場所、その場所の良さを少しでも知っていくと色々楽しくなりそうですね。
なかなか書き込む時間が取れず、お礼が遅くなり、すみません。
釧路湿原の写真、どれもキレイですね。
内容もかなり充実していて、そうなんだと新たな発見をすることもありました。
その他の記事も見させていただきましたが、なかなか興味深いテーマも出ていたりして、こちらも良いなと思いました。
過去の記事の分を含め、これからちょくちょく見させてもらおうかと思います。
よろしくお願いします!
わたしも「もしツア」で釧路湿原を見て、釧路湿原に
行ってみたいと思い、先日足を運びました。
写真を引用したいなんて言ってもらえるのは光栄
なのですが、残念ながらご指摘の写真はコッタロ
展望台で撮った写真なのです。
いい写真が見つかるといいですね。
北海道出身なのですね。
しかも学生の頃の遠足が釧路湿原だったということは道東にお住まいだったということでしょうか。
Mintも以前は道東に住んでいました。
道東に住んでいたことがあるのに釧路湿原には行ったことがないんです。
今回道東を旅行してきましたが湿原には行きそびれてしまいました。
ただ釧路からJRに乗って遠矢・釧路湿原・細岡・塘路・茅沼などの駅を車窓からですが見てきたのですが
それだけでも結構感動するものがありました。
良かったですね。。
釧路湿原について、素敵なショット、いろいろ分かりやすい説明、ありがとうございました。
生きているうちに、一度、行ってみたくなりました。
機会をみて、是非、・・・・・。
素敵な紹介、ありがとうございました。