月日の流れは早いもので2月以来の更新になる。
その間に銀対抗の事情も大分変化が起きた。
今回はプロ将棋の定跡の変遷と、最後にひとつのアイデアを示したい。
読者の皆様も今後どう戦っていくかを自分なりに考えてもらいたいと思う。
*************************************************************************************************
さて、今回は超速対銀対抗の居飛車急戦(テーマ図1)について考えて行きたい。
最近、プロの実戦で超速対銀対抗になると居飛車は急戦策を採用する事が増えた。
これは持久戦において振り飛車が互角以上の固さで待てる(▲6七金が離れる関係)事で、
居飛車が避ける様になってきたのが要因だろう。
振り飛車の対策としては金美濃、美濃、穴熊の3通りがあり、
金美濃>>>>>>>>>穴熊>美濃
と言うくらい、以前のプロ将棋では人気が偏っており、
ゴキ研でも一度記事にした事がある。
超速対銀対抗 居飛車急戦【金美濃テーマ1】
人気の秘訣はやはり5三への利きがある安心感だろうか。
木村美濃への組換えを狙う時に離れ駒が出来ないのも大きな魅力だ。
しかし、定跡が進歩し双方が最善を尽くしてきた結果、
互角とは言い難い様相を呈している。(A図)
A図は飛車の横利きが強力で仕掛けが難しい。
そこで、現在最有力視されている居飛車急戦対策を紹介する。
私も有力と思い早くから愛用してきた。
初手からの指し手
▲2六歩 △3四歩 ▲2五歩 △3三角 ▲7六歩 △4二銀
▲4八銀 (途中図)△5四歩 ▲6八玉 △5五歩 ▲3六歩
△5二飛 ▲3七銀 △5三銀 ▲4六銀 △4四銀 ▲7八玉
△6二玉 ▲6八銀 (テーマ図1)
居飛車が途中図までの進行により振り飛車の作戦を銀対抗に限定できるのは銀対抗の戦術的重要性で述べた通り。
初手から連続で飛車先を突くこの作戦は、相手が居飛車党・振り飛車党問わず作戦を限定出来るので、
実戦で遭遇する可能性は十分にある。
つまり、正調角換わりでは飛車先を突き越す短所に目をつぶり、
居飛車党相手では横歩取り、一手損角換わり、
振り飛車党相手では2手目△3二飛、角交換四間飛車、
ゴキゲン中飛車における菅井流や美濃+△3二金型を封じているからだ。
これを機会に良く考えておくべきだろう。
さて、本譜は居飛車が▲6八銀で急戦の態度を示してきた。
次の一手が本作戦において重要となる。
テーマ図1からの指し手(1)
△7二銀(第1図)
この△7二銀、以前は美濃囲いへ進める際に△7一玉型で
戦う意味合いであったが現在はそうではない。
ただ、第1図から直ちに▲3七桂と跳ねて来れば話は別で、△7一玉として5筋交換から△3五歩を狙える。
つまり、▲3七桂△7一玉▲7七銀なら△5六歩▲同 歩△同 飛▲5五歩△3五歩(B図)となる。
この仕掛けは常に狙い筋としてあるので必修の攻めだ。
以下は、▲6六銀△3六歩▲4五桂△1五角▲1六歩△3七角成▲同 銀△同歩成(C図)で振り飛車が優勢。
駒損でも低い陣形を保ち一方的に攻めている振り飛車が良い。
蛇足だが、▲5五歩を△同銀と取ると▲4五銀△5七飛成▲5八金右△5六歩▲7九角(D図)で失敗。
また、▲7七銀では直ちに▲4五銀と仕掛けるかもしれない。
▲3七桂△7一玉▲4五銀には△3五歩があるので覚えておくと役に立つ。
(1)▲3五同歩は△同 銀▲3六歩△1五角▲3八金△2六銀(E図)
(2)▲3四銀は△1五角▲4三銀成△5一飛▲4四成銀△3七角成▲1八飛△2六桂▲5八飛△1九馬(F図)
(3)▲4四銀は△同 角▲3五歩△5六歩▲4四角△同 歩▲5六歩△同 飛(G図)
△3五歩に替えて△1五角は▲3八金△4五銀▲1六歩(H図)で冴えないと思う。
他には、幽霊角を消す▲1六歩も考えられる。
△5六歩▲同 歩(*)△同 飛▲4五桂△同 銀▲同 銀△8八角成▲同 玉△5五角▲7七角
△2八角成▲5六銀△2九飛▲5九金右△1九飛成▲1一角成△5一香▲5五歩△6四桂(I図)で
振り飛車が良いと考える。
(*)▲4五桂は△同 銀で手順前後。
I図は銀が逃げると△5五香が歩切れで受からないし、▲5八香も△5六桂~△4八銀が厳しい。
よって、このタイミングでの▲3七桂は早計である。
少々話が脱線したが、△7二銀の本来の狙いは別にあり、
これから述べる作戦は菅井ノート 後手編でも頁数は少ないが触れられている。
最近では、長岡研究ノート 振り飛車編に詳しい研究が述べられている。
長岡研究ノート 振り飛車編
まずは、振り飛車の狙いについて述べて行きたい。
第1図からの指し手(1)
▲7七銀△6四歩▲6六銀△6三銀▲3七桂△5四銀(第2図)
第2図は既に居飛車が面白くない。
と言っても、ピンと来ないと思うが、4五の地点の利きを確認して欲しい。
振り飛車は2枚の銀により2つの利きがある為、居飛車の攻めの起点である
▲4五銀と▲4五桂を防いでいるのだ。
こうなると▲6六銀も負担になり、△6五歩でいつでも追い返されてしまう。
この後の進行は以下の棋譜を参考にして頂きたい。
実戦例も少ないので、私の将棋も掲載させて頂いた。
失敗例も含めて参考にして頂けると幸いだ。
参考棋譜1
参考棋譜2
参考棋譜3
2012/10/02 第71期順位戦C級1組05回戦 ▲富岡英作△近藤正和
また、前回も述べたが▲3七桂を見届けてから△5四銀とご記憶願いたい。
つまり、第1図から▲7七銀△6四歩▲6六銀△6三銀▲3八飛△5四銀だと、
▲3五歩△同 歩▲同 銀△6五歩▲7七銀△3五銀▲同 飛(J図)の時に、
△5六歩からの捌きがないのだ。
このあたりは前回の記事と以下の棋譜を参考にして頂きたい。
2011/10/11第24期竜王戦6組昇級者決定戦 ▲船江恒平△伊藤真吾
普通に組むと△5四銀で攻めを封じられてしまうと言う事は、
△5四銀とされる前に仕掛ける必要がある。
「最短の仕掛けで攻め潰せない様では銀対抗に急戦は通用しませんよ。」
これは、超速に対する振り飛車の挑戦状なのだ。
第1図からの指し手(2)
▲7七銀△6四歩▲3七桂△6三銀▲4五銀(第3図)
実は、初手から第3図までの進行はプロの将棋でそのまま現れているのだ。
第71期B級1組順位戦▲松尾歩△久保利明
その後、度々実戦に登場しており、現在超速対銀対抗で最もホットな局面である。
第39期棋王戦予選▲堀口一史座△佐藤和俊
第72期B級1組順位戦▲松尾歩△広瀬章人
第72期C級1組順位戦▲小林裕士△近藤正和(参考棋譜なし、名人戦棋譜速報より閲覧可能)
このあたりの解説は、長岡研究ノート 振り飛車編で述べられているのでそちらに譲りたい。
要約すると、第3図から△1五角▲3八金△4五銀▲同 桂△7二玉(K図)と、
▲5三銀を防ぐために一度自陣に手を戻さなければならないのが不満と見られている。
その為、第72期C級1組順位戦▲小林裕士△近藤正和の様に▲4五銀に△3五歩でどうかが
現在の命題となっている様だ。
既に、第2の手を模索している状況で閉塞感が出てきているように思う。
そこで、私が考えるアイデアをひとつ提示してみたい。
テーマ図1からの指し手(2)
△7二玉▲7七銀△6二銀(第4図)
△7二玉~△6二銀が工夫手順。
と言っても、何の事も無いただの早囲いの様だが、
例えば▲5八金右なら△5三銀上▲7七銀△5四銀(L図)
というルートで△5四銀型が完成する仕組みだ。
よって、これを防ぐには
(1)▲3七桂として、△5三銀上に▲4五桂の両取りを用意する。
(2)▲6六銀として、△5三銀上に▲5五銀左の一歩得を用意する。
この2パターンしかない。
順に調べて行きたい。
第4図からの指し手(1)
▲3七桂△5六歩▲同 歩△同 飛▲4五桂△1五角
▲2四歩△4六飛▲同 歩△3七角成▲1八飛△4六馬(第5図)
▲3七桂には桂頭を狙って5筋の歩を交換する。
次に△3五歩が来ると忙しい先手は▲4五桂と角取りに跳ねるが、
△1五角の幽霊角で勝負する。
ここで△4二角と緩めると▲2四歩~▲2二歩の仕掛けで参る。
先手としても、次に△5二飛と引かれると▲2四歩~▲2二歩の仕掛けも無くなるので、
▲2四歩と突いて催促するが、飛車と銀を刺し違えて馬を作った第5図は
低い陣形を保った後手が指しやすい。
ただし、この場合は玉の横っ腹を開けると▲2三歩成~▲2二飛があるので注意するべきだ。
また、△1五角に▲1六歩は、△4六飛▲1五歩△4七飛成▲4八飛△4五龍
▲同 飛△同 銀(M図)と進める。
以下は、(1)▲6八銀には△4六飛、(2)▲5八金右には△5七歩、
(3)▲5九金右には△5七桂の要領で攻めて振り飛車が良いと思う。
第4図からの指し手(2)
▲6六銀△6四歩▲3七桂△6三銀▲4五銀(第6図)
第3図と第6図を比較して頂きたい。
第6図は▲6六銀と△7二玉の交換が入っている事がご理解頂けるだろうか。
この2手の交換では振り飛車に価値が高いだろうと言う主張なのだ。
先程の第3図からの進行では途中で△7二玉が必要となり面白くなかった。
予め△7二玉が入っていればその分、他の一手が指せる訳だ。
ただし、▲6六銀の価値が上回れば意味が無いので検証して行きたいと思う。
第6図からの指し手
△1五角▲3八金△4五銀▲同 桂(途中図)△3七銀▲1八飛
△3八銀成▲同 飛△4八金▲1八飛△4四歩▲5三銀
△4五歩▲5二銀不成△同金右(第7図)
長く進めたが、変化について細かく調べて行きたい。
まず、△4五銀に▲1六歩は△4二角▲4五桂△4四銀▲4六歩
△5六歩▲同 歩△同 飛(N図)と捌いてどうか。
負担になりそうな歩を交換できてまずまずな分かれだと思う。
途中図まで進めてK図との比較で△7二玉が既に入っている効果が
実感できるのではないだろうか。
途中図はここで手抜いて△3七銀を利かせる事が出来る。
▲3七同金は△同角成が4六~5五に利いてくるので、
▲1八飛△5四金(O図)で△6五歩~△4五金と好調に進められる。
つまり、▲4六歩は無効であり、▲5五銀~▲5三銀の様な乱暴も出来ない。
本譜に戻り、金銀交換から△4八金が大事な一手。
▲1八飛を限定する事で△3七角成を権利としており、
▲1六歩と突かれた後からでは手抜かれる可能性を排除している。
そして、△4四歩で桂取りを見せて▲5三銀を催促し、
清算した第7図は飛車と金桂交換の勘定。
最終手は△5二同金右が良く、△同金左では▲3一飛から桂香を拾われて苦戦。
△同銀も後で▲5五銀~▲6四銀を許す事になる。
第7図以下は、▲5五銀△3七角成▲6四銀△同銀▲4四角△5三銀
▲1一角成△2六桂▲6六香△6二銀打▲同香成△同金(P図)
が一例で振り飛車が十分だろう。
玉周辺の金銀の枚数が形勢に影響している様に思う。
以上が銀対抗対居飛車急戦におけるアイデアである。
プロの実戦に出現していない事もあり、私もなかなかの高勝率を挙げているのでぜひ試して頂きたい。
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その間に銀対抗の事情も大分変化が起きた。
今回はプロ将棋の定跡の変遷と、最後にひとつのアイデアを示したい。
読者の皆様も今後どう戦っていくかを自分なりに考えてもらいたいと思う。
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さて、今回は超速対銀対抗の居飛車急戦(テーマ図1)について考えて行きたい。
最近、プロの実戦で超速対銀対抗になると居飛車は急戦策を採用する事が増えた。
これは持久戦において振り飛車が互角以上の固さで待てる(▲6七金が離れる関係)事で、
居飛車が避ける様になってきたのが要因だろう。
振り飛車の対策としては金美濃、美濃、穴熊の3通りがあり、
金美濃>>>>>>>>>穴熊>美濃
と言うくらい、以前のプロ将棋では人気が偏っており、
ゴキ研でも一度記事にした事がある。
超速対銀対抗 居飛車急戦【金美濃テーマ1】
人気の秘訣はやはり5三への利きがある安心感だろうか。
木村美濃への組換えを狙う時に離れ駒が出来ないのも大きな魅力だ。
しかし、定跡が進歩し双方が最善を尽くしてきた結果、
互角とは言い難い様相を呈している。(A図)
A図は飛車の横利きが強力で仕掛けが難しい。
そこで、現在最有力視されている居飛車急戦対策を紹介する。
私も有力と思い早くから愛用してきた。
初手からの指し手
▲2六歩 △3四歩 ▲2五歩 △3三角 ▲7六歩 △4二銀
▲4八銀 (途中図)△5四歩 ▲6八玉 △5五歩 ▲3六歩
△5二飛 ▲3七銀 △5三銀 ▲4六銀 △4四銀 ▲7八玉
△6二玉 ▲6八銀 (テーマ図1)
居飛車が途中図までの進行により振り飛車の作戦を銀対抗に限定できるのは銀対抗の戦術的重要性で述べた通り。
初手から連続で飛車先を突くこの作戦は、相手が居飛車党・振り飛車党問わず作戦を限定出来るので、
実戦で遭遇する可能性は十分にある。
つまり、正調角換わりでは飛車先を突き越す短所に目をつぶり、
居飛車党相手では横歩取り、一手損角換わり、
振り飛車党相手では2手目△3二飛、角交換四間飛車、
ゴキゲン中飛車における菅井流や美濃+△3二金型を封じているからだ。
これを機会に良く考えておくべきだろう。
さて、本譜は居飛車が▲6八銀で急戦の態度を示してきた。
次の一手が本作戦において重要となる。
テーマ図1からの指し手(1)
△7二銀(第1図)
この△7二銀、以前は美濃囲いへ進める際に△7一玉型で
戦う意味合いであったが現在はそうではない。
ただ、第1図から直ちに▲3七桂と跳ねて来れば話は別で、△7一玉として5筋交換から△3五歩を狙える。
つまり、▲3七桂△7一玉▲7七銀なら△5六歩▲同 歩△同 飛▲5五歩△3五歩(B図)となる。
この仕掛けは常に狙い筋としてあるので必修の攻めだ。
以下は、▲6六銀△3六歩▲4五桂△1五角▲1六歩△3七角成▲同 銀△同歩成(C図)で振り飛車が優勢。
駒損でも低い陣形を保ち一方的に攻めている振り飛車が良い。
蛇足だが、▲5五歩を△同銀と取ると▲4五銀△5七飛成▲5八金右△5六歩▲7九角(D図)で失敗。
また、▲7七銀では直ちに▲4五銀と仕掛けるかもしれない。
▲3七桂△7一玉▲4五銀には△3五歩があるので覚えておくと役に立つ。
(1)▲3五同歩は△同 銀▲3六歩△1五角▲3八金△2六銀(E図)
(2)▲3四銀は△1五角▲4三銀成△5一飛▲4四成銀△3七角成▲1八飛△2六桂▲5八飛△1九馬(F図)
(3)▲4四銀は△同 角▲3五歩△5六歩▲4四角△同 歩▲5六歩△同 飛(G図)
△3五歩に替えて△1五角は▲3八金△4五銀▲1六歩(H図)で冴えないと思う。
他には、幽霊角を消す▲1六歩も考えられる。
△5六歩▲同 歩(*)△同 飛▲4五桂△同 銀▲同 銀△8八角成▲同 玉△5五角▲7七角
△2八角成▲5六銀△2九飛▲5九金右△1九飛成▲1一角成△5一香▲5五歩△6四桂(I図)で
振り飛車が良いと考える。
(*)▲4五桂は△同 銀で手順前後。
I図は銀が逃げると△5五香が歩切れで受からないし、▲5八香も△5六桂~△4八銀が厳しい。
よって、このタイミングでの▲3七桂は早計である。
少々話が脱線したが、△7二銀の本来の狙いは別にあり、
これから述べる作戦は菅井ノート 後手編でも頁数は少ないが触れられている。
最近では、長岡研究ノート 振り飛車編に詳しい研究が述べられている。
長岡研究ノート 振り飛車編
まずは、振り飛車の狙いについて述べて行きたい。
第1図からの指し手(1)
▲7七銀△6四歩▲6六銀△6三銀▲3七桂△5四銀(第2図)
第2図は既に居飛車が面白くない。
と言っても、ピンと来ないと思うが、4五の地点の利きを確認して欲しい。
振り飛車は2枚の銀により2つの利きがある為、居飛車の攻めの起点である
▲4五銀と▲4五桂を防いでいるのだ。
こうなると▲6六銀も負担になり、△6五歩でいつでも追い返されてしまう。
この後の進行は以下の棋譜を参考にして頂きたい。
実戦例も少ないので、私の将棋も掲載させて頂いた。
失敗例も含めて参考にして頂けると幸いだ。
参考棋譜1
参考棋譜2
参考棋譜3
2012/10/02 第71期順位戦C級1組05回戦 ▲富岡英作△近藤正和
また、前回も述べたが▲3七桂を見届けてから△5四銀とご記憶願いたい。
つまり、第1図から▲7七銀△6四歩▲6六銀△6三銀▲3八飛△5四銀だと、
▲3五歩△同 歩▲同 銀△6五歩▲7七銀△3五銀▲同 飛(J図)の時に、
△5六歩からの捌きがないのだ。
このあたりは前回の記事と以下の棋譜を参考にして頂きたい。
2011/10/11第24期竜王戦6組昇級者決定戦 ▲船江恒平△伊藤真吾
普通に組むと△5四銀で攻めを封じられてしまうと言う事は、
△5四銀とされる前に仕掛ける必要がある。
「最短の仕掛けで攻め潰せない様では銀対抗に急戦は通用しませんよ。」
これは、超速に対する振り飛車の挑戦状なのだ。
第1図からの指し手(2)
▲7七銀△6四歩▲3七桂△6三銀▲4五銀(第3図)
実は、初手から第3図までの進行はプロの将棋でそのまま現れているのだ。
第71期B級1組順位戦▲松尾歩△久保利明
その後、度々実戦に登場しており、現在超速対銀対抗で最もホットな局面である。
第39期棋王戦予選▲堀口一史座△佐藤和俊
第72期B級1組順位戦▲松尾歩△広瀬章人
第72期C級1組順位戦▲小林裕士△近藤正和(参考棋譜なし、名人戦棋譜速報より閲覧可能)
このあたりの解説は、長岡研究ノート 振り飛車編で述べられているのでそちらに譲りたい。
要約すると、第3図から△1五角▲3八金△4五銀▲同 桂△7二玉(K図)と、
▲5三銀を防ぐために一度自陣に手を戻さなければならないのが不満と見られている。
その為、第72期C級1組順位戦▲小林裕士△近藤正和の様に▲4五銀に△3五歩でどうかが
現在の命題となっている様だ。
既に、第2の手を模索している状況で閉塞感が出てきているように思う。
そこで、私が考えるアイデアをひとつ提示してみたい。
テーマ図1からの指し手(2)
△7二玉▲7七銀△6二銀(第4図)
△7二玉~△6二銀が工夫手順。
と言っても、何の事も無いただの早囲いの様だが、
例えば▲5八金右なら△5三銀上▲7七銀△5四銀(L図)
というルートで△5四銀型が完成する仕組みだ。
よって、これを防ぐには
(1)▲3七桂として、△5三銀上に▲4五桂の両取りを用意する。
(2)▲6六銀として、△5三銀上に▲5五銀左の一歩得を用意する。
この2パターンしかない。
順に調べて行きたい。
第4図からの指し手(1)
▲3七桂△5六歩▲同 歩△同 飛▲4五桂△1五角
▲2四歩△4六飛▲同 歩△3七角成▲1八飛△4六馬(第5図)
▲3七桂には桂頭を狙って5筋の歩を交換する。
次に△3五歩が来ると忙しい先手は▲4五桂と角取りに跳ねるが、
△1五角の幽霊角で勝負する。
ここで△4二角と緩めると▲2四歩~▲2二歩の仕掛けで参る。
先手としても、次に△5二飛と引かれると▲2四歩~▲2二歩の仕掛けも無くなるので、
▲2四歩と突いて催促するが、飛車と銀を刺し違えて馬を作った第5図は
低い陣形を保った後手が指しやすい。
ただし、この場合は玉の横っ腹を開けると▲2三歩成~▲2二飛があるので注意するべきだ。
また、△1五角に▲1六歩は、△4六飛▲1五歩△4七飛成▲4八飛△4五龍
▲同 飛△同 銀(M図)と進める。
以下は、(1)▲6八銀には△4六飛、(2)▲5八金右には△5七歩、
(3)▲5九金右には△5七桂の要領で攻めて振り飛車が良いと思う。
第4図からの指し手(2)
▲6六銀△6四歩▲3七桂△6三銀▲4五銀(第6図)
第3図と第6図を比較して頂きたい。
第6図は▲6六銀と△7二玉の交換が入っている事がご理解頂けるだろうか。
この2手の交換では振り飛車に価値が高いだろうと言う主張なのだ。
先程の第3図からの進行では途中で△7二玉が必要となり面白くなかった。
予め△7二玉が入っていればその分、他の一手が指せる訳だ。
ただし、▲6六銀の価値が上回れば意味が無いので検証して行きたいと思う。
第6図からの指し手
△1五角▲3八金△4五銀▲同 桂(途中図)△3七銀▲1八飛
△3八銀成▲同 飛△4八金▲1八飛△4四歩▲5三銀
△4五歩▲5二銀不成△同金右(第7図)
長く進めたが、変化について細かく調べて行きたい。
まず、△4五銀に▲1六歩は△4二角▲4五桂△4四銀▲4六歩
△5六歩▲同 歩△同 飛(N図)と捌いてどうか。
負担になりそうな歩を交換できてまずまずな分かれだと思う。
途中図まで進めてK図との比較で△7二玉が既に入っている効果が
実感できるのではないだろうか。
途中図はここで手抜いて△3七銀を利かせる事が出来る。
▲3七同金は△同角成が4六~5五に利いてくるので、
▲1八飛△5四金(O図)で△6五歩~△4五金と好調に進められる。
つまり、▲4六歩は無効であり、▲5五銀~▲5三銀の様な乱暴も出来ない。
本譜に戻り、金銀交換から△4八金が大事な一手。
▲1八飛を限定する事で△3七角成を権利としており、
▲1六歩と突かれた後からでは手抜かれる可能性を排除している。
そして、△4四歩で桂取りを見せて▲5三銀を催促し、
清算した第7図は飛車と金桂交換の勘定。
最終手は△5二同金右が良く、△同金左では▲3一飛から桂香を拾われて苦戦。
△同銀も後で▲5五銀~▲6四銀を許す事になる。
第7図以下は、▲5五銀△3七角成▲6四銀△同銀▲4四角△5三銀
▲1一角成△2六桂▲6六香△6二銀打▲同香成△同金(P図)
が一例で振り飛車が十分だろう。
玉周辺の金銀の枚数が形勢に影響している様に思う。
以上が銀対抗対居飛車急戦におけるアイデアである。
プロの実戦に出現していない事もあり、私もなかなかの高勝率を挙げているのでぜひ試して頂きたい。
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実は、今回の第6図のような局面は検討した事があるのですが・・・
第6図の1手前 ▲4五銀 に変えて ▲4五桂 とされた時のゴキゲン側の指し手がこれといっていい手順が思いつかず、そこで研究をストップさせてしまったので・・
是非、ゴキ研さんの考えを聞かせていただきたいと思いまして、コメントした次第です。
第6図の▲4五銀に替えて▲4五桂には、△4二角▲5五銀左△同銀▲同銀△1五角で良いのではないでしょうか。
▲4六銀なら△1二香▲1六歩△3七銀▲1八飛△4六銀成▲1五歩△4五成銀▲1一角成△3一金。
居飛車に有効な手も無いように思います。
なるほどですね。
また研究してみます。
ありがとうございました。
▲4五桂以下は、
△4二角 ▲5五銀左 △同銀 ▲同銀 △1五角 ▲1六歩 △3七銀 ▲1八飛~
ということでしたが、
▲1八飛に替えて▲2七飛とされた時がなかなか後手が大変なような気がしました。
以下は、
△4六銀成 ▲同歩 △5一角 ▲5三銀 △3二飛 ▲2二銀で後手が苦しそうな気がするのです。
どうでしょうか?
考えてみたのですが、そもそも1五角が出れなくなれば後手がさらに損だと感じます…
第6図から
2四歩 同歩 4五桂 4二角 5五銀左 同銀 同銀 と進み、以下は
3三桂 4六銀 4五桂 同銀 5七飛成 1一角成 4七竜 4八飛
のように進むと後手が厳しい気がします…
2四歩~4五桂の変化についてご教授お願いします。
△1五角はおかしな手ですね。
▲4五桂△4二角▲5五銀左△同銀▲同銀△3三桂で十分ではないでしょうか。
居飛車側の条件がかなり悪いので△6五桂など振り飛車に楽しみが多いと思います。