水戸光圀こと徳川光圀は1661年から1690年まで約30年間、水戸藩主であった。
水戸市長にとっては大先輩である。
水戸市長が東京を訪れ、TBSで『水戸黄門』継続を陳情したらしい。
まるで水戸光圀が江戸を訪れて、劇団に『水戸黄門漫遊記』の芝居の全国上演を頼むようなものだ。
『水戸黄門』では日本のある藩で騒動が起こり、藩からの使者が光圀に事件の解決を頼むケースが多い。この番組では日本各地で問題が起きると地元では解決できず、いつも外からの力に頼るという展開が繰り返されている。
『水戸黄門』がヒットし続けていると政界や財界で「元~」「前~」といった長老がいつまでも口を出す「院政」が続き、それが「政界の水戸黄門」として紹介されて老害の危険性が忘れ去られる可能性がある。さらに地方自治の精神が薄まって、何でも陳情することが横行し、あるいは、大衆が地元の問題を地元で長時間かけて解決することを放棄し、どこから強い力を持った権力者が出てきて問題を一瞬で取り除いてくれるのを待つだけになる可能性も出てくる。むしろそういう風潮が『水戸黄門』人気を支えてきたのだろう。
水戸藩主の肩書きは今で言えば水戸市長だ。
『水戸黄門』の物語を今に置きかえると、水戸の前市長が数名の部下を連れて、日本の各都道府県を訪れて、訪問先の内政に干渉しているという話になる。もちろん、水戸の前市長には普通、そんな権限はない。大体、交通費は公費になり、どれだけ予算がかかるかわからず、税金の無駄遣いである。光圀の趣味のせいで、綱條の時代、水戸黄門藩の財政は逼迫していたに違いない。
『水戸黄門』において光圀が偉いとされるのは中納言の地位のほか、徳川家康の孫で、徳川綱吉の親戚であることによるところが大きい。
要するに水戸市長が総理大臣の親戚ということになる。
『水戸黄門』では光圀は「さきの副将軍」とされる。実際には「副将軍」という役職は存在しなかったようだ。しかしドラマで光圀が「副将軍」だったとすると、光圀は今で言えば水戸市長が総理大臣の親戚で副総理も兼務していたことになり、すさまじい世襲と血縁、血統による一族支配である。民主主義国家とは相いれないものだ。
水戸市長は水戸市を全国に宣傳するなら、今後は『水戸黄門』に頼らない方策を考えるべきだ。『水戸黄門』は42年続いた作品で、知名度は充分にある。町起こしを『水戸黄門』に頼る3市の知事3人の姿は『水戸黄門』に出てくる大衆や各藩の藩士と同じである。
茨城県では県民が松之草村小八兵衛の墓を勝手に「風車の弥七の墓」に仕立て上げて、観光スポットにしているらしい。県内にはテレビや映画そのままの光圀、助、格の銅像らしき物まであるようだ。
虚構である『水戸黄門漫遊記』の世界に更に虚構を重ねたのがテレビドラマ『水戸黄門』。それを観光客招致の「餌」にするのだから茨城県民は町起こしでも完全に『水戸黄門』のフィクションの世界に「おんぶにだっこ」状態で、ウソの歴史で観光客を釣ろうとしているようだ。
新潟にも『ドカベン』のキャラクターの銅像があるし、某所では『ゲゲゲの鬼太郎』の像もあるので、光圀主從の銅像や「弥七の墓」も似たような物かも知れない。
ただ、『水戸黄門』の中の光圀は、本来、西山荘で『大日本史』編纂に從事すべきところ、年中、西山荘を留守にして、他の藩を訪れている。綱條は江戸にいて光圀は各地を勝手に歩き回っているのだから、これで政治がうまくいったのは光圀でも綱條でもなく家臣たちが「名君」だったからだろう。
せっかく隠居したのに水戸黄門を留守にしてばかりいたドラマの水戸光圀が果たして「名君」だったかどうか疑問である。
結局、光圀は「史実」でも「時代劇」でも名君とは言い難い人物だったことになる。
水戸市長たちは『水戸黄門』終了が観光事業に多大な影響を及ぼすと言っていたようだが、一体、市長たちはTBSの時代劇『水戸黄門』が未来永劫続くと本気で思っていたのだろうか。京都に集中している撮影所を茨城県内に作るなどの対策を考えなかったのか。TBSに陳情してもパナソニックが資金を提供しないと番組は作れないのだ。そろそろ茨城県も『水戸黄門』に頼った観光事業から卒業すべきであろう。
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2011年8/5~9 8/9 8/9~10
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