「時代の変化」とは「『水戸黄門』を観る客の減少」であるから、結局は視聴率低下である。
朝日新聞と読売新聞は「家族の解体」と関連付けて論評している。
TBSが『水戸黄門』を打ち切ったのはあくまで月曜夜8時のパナソニックドラマシアターでの本放送の打ち切りであって、ネットや衛星放送の普及した「時代の趨勢」の中では、再放送は地上波でも衛星放送でも観られるし、新作をスペシャルで出す手もある。
むしろ今までパナソニック1社提供に縛られていたことで、パナソニックが最新型の3Dテレビなどを宣傳するには若い層に観てもらいたいという事情が、高齢者に人気の時代劇の打ち切りを招いたとも言えるのであって、今後、数年たってスペシャル版で復活すれば、日立やアリコなどの大手各社がスポンサーとして参加する可能性もある。
ただTBSが「時代の趨勢」と言っている「時代の変化」を作ってきた責任はTBSの側にもあるし、テレビ局と視聴者戦隊がそういう時代を作ってきたことは確かだ。テレビ番組が個人で楽しむものとなり、録画で観る人も増えた昨今、旧態依然とした視聴率を当てにするテレビ界は自分で時代を作りながらそれに適応していないと言える。
一流大学が、受験生の携帯電話によるネット投稿を見抜けなかったのと似た現象だ。
『水戸黄門』が受け入れられない時代は、自然現象でできたのでなく、TBSや視聴者が作ってしまったわけだ。
また、「『水戸黄門』はテレビ番組としての役割を終えた」という意見もあるが、では『水戸黄門』が今までどういう役割を果たしてきて、なぜ2011年7月の時点でそれが終わったと言えるのか、具体的な説明がない。
しかも第43部の第2話まで放送されてから打ち切りが急に決まったということは、「TBSが視聴率を観てから打ち切りを決めた」と見るのが普通だろう。「時代の趨勢」を理由にするなら第43部が始まる時点で、「今回が最終シリーズになるかも知れない」ということをレギュラー出演者や茨城県水戸市関係者に傳えておくべきであった。
特に里見浩太朗は40年前の1971年に助三郎を演じてから『水戸黄門』に出演してきた功労者であり、『江戸を斬る』や『大岡越前』の最終回スペシャルにも出演した。その里見浩太朗に事前の連絡もなしにいきなり打ち切りを決めたTBSは出演者を大事にしているのかどうか。里見浩太朗に『水戸黄門』打ち切りを告げたのはTBSでなく、もう一つの製作会社であるC.A.Lの社長からの報告だったらしい。TBSは『水戸黄門』を続けるかどうかについて陰でこそこそやって、場当たり的なキャスト変更や設定の作り直しが裏目に出て、第43部製作發表記者会見では里見浩太朗が「時代劇が少なくなっている中、『水戸黄門』を続けたい」と言っており、スタッフもこれで中止にするなど一言も言っていない。第43シリーズが始まって打ち切り決定という結果を招いた。
TBSがこのようなテレビ局では今後、どんな新作を作っても出演者との関係がこじれるだけだろう。
ただ『水戸黄門』の終焉そのものは時代の必然であり、むしろ歓迎すべきことである。
徳川光圀はほとんど関東から出ておらず、「副将軍」も虚構である。その虚構を廣めてきた『水戸黄門漫遊記』が講談、映画、テレビで人々に提供されてきた時代がひとまず終わったのである。
TBSナショナル劇場の『水戸黄門』の歴史は43年だが、映画とテレビを合わせると100年を超える。
『水戸黄門』『大岡越前』『遠山の金さん』といった江戸時代の権力者を英雄に仕立て上げた講談起源の時代劇が21世紀に入って次々と作られなくなっていったことは、やはり時代の変化を意味しており、民主主義国家においては当然の結末である。
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2011年8/5~9 8/9 8/9~10
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