@kyojitsurekishi 「暗闇仕留人」の「試して候」から「別れにて候」までへの流れと、仕事人スペシャルの「大老殺し」から「横浜異人屋敷」に至る流れを比較すると、幕末における裏稼業にとって開国派だろうと攘夷派だろうと悪は悪であったということがわかる。
必殺シリーズには蘭学者は哀れな被害者で国学者と攘夷派は悪人というパターンがある。「春雨じゃ悪人退治」で描かれたシーボルト事件(1828~29)がそうで、高橋景保が被害者であり、黒幕はシーボルトを憎む国学者と商人たちだった。中村主水と千葉周作(助っ人)ら仕事人が景保の仇を討った。
シーボルト事件から10年後の1839年に蛮社の獄があり、高野長英が投獄され、小関三英が自殺。旧からくり人の時次郎が鳥居耀蔵を暗殺しようとしたが失敗し、旧からくり人は壊滅した。その後、1844年に中村主水が鳥居を暗殺し、建前では鳥居失脚とされた。
一方、必殺シリーズでは開国派が善人かというとそうとも限らず、幕末の日本に必要だった開国派が裏で悪人だったケースがある。1854年に開国派の若年寄・松平玄蕃守が仕留人の的となり、糸井貢が殉職。6年後の1860年には井伊直弼が主水の仕事の的となった。
黒船来航(1853&54)はシーボルト事件(1828~29)から四半世紀後であったが、必殺シリーズでは幕末でも攘夷派が悪人だった。攘夷派が複数の人間を大筒の試し撃ちの的にした。推定1853年には半次が、1863年には加代がこれで重傷を負った。
黒船は1853年夏と1854年初めに来航した。
「仕留人」は1974年の夏から年末まで放送されたので、劇中の季節と一致するとしたら、「試して候」は1853年夏の出来事となる。
「暗闇仕留人」第2話「試して候」では攘夷派が大砲の試し撃ちに囚人たちを使い、主水たちがその攘夷派を仕置。「横浜異人屋敷の決闘」では外国人たちと手を組んだ幕臣が人間を的にした大砲の実験をして主水らに仕置された。攘夷派も開国支持派も外道は外道である。
@JOKER_B_JOKER 必殺SP「横浜異人屋敷の決闘」では舛添要一氏が勝麟太郎に扮し、松平主税介(中尾彬氏)に反論した勝が「夜を徹して朝まで話し合いますか」と言ってましたし、中村主水が自宅の風呂に入浴剤を入れて「♪ババンババンバンバン~ここは八丁堀、箱根の湯」と歌ってました。
必殺SP「大暴れ仕事人! 横浜異人屋敷の決闘」で中村主水が松平主税介(演:中尾彬)を暗殺したが、「史実」では松平忠敏は1882年(明治15年)まで生きたことになっている。この辺りは必殺シリーズらしい解釋である。
鳥居甲斐守も公式には明治時代まで生きたことになっている。
『仕事人2014』は『仕留人』と『横浜異人屋敷』を合わせたような話に見えるが、『八丁堀の七人』にも近い。『水戸黄門』や『遠山の金さん』では討幕をたくらむ武士や忍者集団、外国との密貿易を望む商人は巨悪である。しかしそれは討幕や開国そのものが悪いのではなく、それを望む集団がそれらの「理想」を口実にテロなどの犯罪を行うのが問題であった。松平長七郎も家光と将軍の座を争った忠長の一子で、柳生と対立し、幕府とは距離を置きながら油比正雪のような討幕派にも与することはなかったようだ。一方、『八丁堀の七人』では幕府が江戸を灰にしようとしていた張本人であり、時代劇の主人公にとって体制派も反体制も関係なかった。
必殺シリーズでは、文化・文政時代は「法とは名ばかりのもの」で悪がはびこり、天保の改革の時代は綱紀粛正の嵐で庶民が苦しんでおり、最後は音楽も踊りも楽しめる自由な社会がいいという結論であった。そこには改革は反改革かという二者擇一の対立軸はない。
仙吉(演:高橋英樹)が「これで開国が遅れた」と言った時、渡辺小五郎が「どうでもいい」と言ったのは、ある意味で当然だった。しかし、糸井貢はそこを割り切れず、日本が開国する直前に殉職した。
「必殺仕事人2014」では劇中の人物が「日本の鎖国はいつかは終わる」「開国が遅れた」と考えていたが、江戸時代の人が当時自分(または日本)が「鎖国」をしていたと認識していたか怪しいし、「開国が必要」と思っていたとは限らないように思う。
「水戸黄門」や「遠山の金さん」などでは討幕や開国を考える勢力はテロリストで巨悪であるが、「龍馬伝」のような幕末ものではそれが「正義」となる。
「龍馬伝」のような幕末ものでは江戸時代の「身分」の差をなくし「鎖国」を終わらせることが志士たちの祈願であったが、今の日本人が社長と社員、先生と生徒の関係をなくそうと思うかどうか疑問で、幕末の討幕運動の狙いは別にあったのではなかろうか。
歴史は歴史修正主義者によって成り立っているので「江戸時代、鎖国はなかった」「士農工商の身分制度はなかった」などという修正主義者がいるかも知れないが、すると「水戸黄門」の印籠シーンや参勤交代の「下に下に」のシーンも怪しいということになるのだろうか。
時代劇のヒッサツシリーズにおける攘夷と開国 、蘭学者、三味線弾き
シーボルト事件→蛮社の獄→天保の改革→黒船来航→安政の大獄→桜田門外の変→浪士組
シーボルト→高橋景保→(西順之助)(鳴滝忍)→高野長英→糸井貢
前後一覧
関連語句
参照
平成29年BLOG