余桃之罪、もしくは電光朝露

関西フィル、日本センチュリー、京都市交響楽団、大阪フィルの定期会員です。アイドルやら声優やら。妄想8割、信憑性皆無。

大阪フィルハーモニー交響楽団第528回定期演奏会

2019年05月23日 | 大阪フィルハーモニー交響楽団
2019年5月23日(木)19:00フェスティバルホール

指揮:シャルル・デュトワ
コンサートマスター:崔 文洙(首席客演コンサートマスター)
合唱:大阪フィルハーモニー合唱団[合唱指導:福島章恭]

曲目:
ベルリオーズ/序曲「ローマの謝肉祭」 作品9
ラヴェル/バレエ音楽「ダフニスとクロエ」第2組曲
ベルリオーズ/幻想交響曲作品14

色々あったデュトワ、学生オケやアルゲリッチ絡みの仕事はすでにあったとはいえ、日本楽壇本格復帰が事務所の差配かなにかで東京ではなく、大阪になるという。
発表になった当初、喜ぶはずの大フィルファンですら「なんで大フィルやねん」「京響のほうが合うてんで」と、一抹の寂しさを持って迎え、尾高監督の病欠となった6月の大阪国際フェスティバル「サロメ」もデュトワが代役するという瓢箪から駒みたいな話も「スケジュールがら空きやないか」「仕事選ばんのか」と、嬉しいけれどもやはり哀しさも同時にこみ上げる始末。

プログラムは十八番のフランス音楽、外れも逸れもありえないド真ん中の直球です。

キャリーバッグを転がしてる客の多いこと。顔見知りと談笑してるんだけど見事に関東弁。
こんなに遠征客が多いのも珍しい。それだけ復帰が望まれていたんでしょうが。
予約殺到といいつつも完売ではないし、2日目から1日目への席の振替も変なところへ飛ばされるほどでもない。
いつもよりはかなり埋まっている客席と、いつもより不思議なテンションの客とともに開演。

ローマの謝肉祭。出だしからイタリアの明るさと生命力を強く感じさせる、驚くべき軽快さ。
フルネが来たとき以来の響きが大フィルから出ていて、指揮者の並々ならぬ力量を感じる。
曲が終わるや、1曲めとは思えないほどの熱いブラボーが飛ぶ。復帰を待っていた人たちでしょうね。

ダフニスとクロエ。組曲なのに合唱付きの贅沢さだが、デュトワの希望らしい。
俺は全然衰えていないぜ、というデモンストレーション含みかな。成功して当たり前のプログラムだからこそ、ハードルを上げてみせる的な。
最上に整理されたバランスの良い響き、各楽器の浮き沈みの的確な統御、要所を締めて華麗さのみに偏らない組み立て、どれも一級の仕上げだった。
鈍な大フィルでこの曲を振った日本の指揮者ではなんとかオケを浮かせた井上道義がトップだったが、それとはさらに格段の違いがあったね。
大フィルが大阪以外でこの曲をやりましてね。誰とは言わんが某氏が振っていて。あまりにも重く動かず、しかもところどころひどい音が出るオケに、俺は何の曲を聞いているのか分からなくなって曲目を確かめたことがあった。
そんなことが懐かしく思い出されるほどのデュトワの名指揮だったのだ。
出番は少なかったが合唱団の出来にはデュトワも満足だったらしい。在阪オケが抱えている合唱団の中ではすでに首座に登ったとみていい大フィル合唱団。チチェスター詩篇にブラームスの埋葬の歌にと、良い仕事が続いている。

幻想交響曲。
ベルリオーズ没後150年のメモリアルイヤー、プロオケはどこもかしこもこればかりなのは少々残念だが。
官能すら感じさせる目覚ましいダイナミクス、詩情豊かな色彩美、デュトワ自身の有名な録音とは異なった、後半2楽章の感興の赴くままのテンポの動きなど圧巻の出来栄えだった。
初日でこうなのだから二日目はどうなることか。
オケの集中・緊張も常になく高く見事だった。ノーミスでしたもんね。

また来てくれたらとは思うが、まあ、観測気球みたいな公演で、これで成功したのでN響は難しくともどこか他の在京オケに客演しはじめるんだろうな。

Various: Charles Dutoit
Decca
Decca

ラヴェル:管弦楽曲集
デュトワ(シャルル),ラヴェル,モントリオール交響楽団
ユニバーサル ミュージック


大阪フィルハーモニー交響楽団第520回定期演奏会

2018年07月27日 | 大阪フィルハーモニー交響楽団
大阪フィルハーモニー交響楽団第520回定期演奏会
7月27日 (金曜日)フェスティバルホール19:00

指揮:大植英次
ヴァイオリン:イェウン・チェ
女声合唱:大阪フィルハーモニー合唱団(合唱指導:福島章恭)

曲目:
ヴィヴァルディ/ヴァイオリン協奏曲集「四季」作品8-1~4
ホルスト/組曲「惑星」 作品32

でした。
地球を表す意味での「四季」と宇宙を表す「惑星」の対比という、まあ普通ならあまりやらないプログラミング。英次だね。
四季では英次自ら通奏低音を弾きながら、ソロと弦楽合奏は立奏。
英次が客席側に終始向いてるわけで、顔芸は控えめとはいえ、第1曲なんて曲を聞く気になれないw
独奏がコンマスあたりなら英次もいろいろ仕掛けてきたとは思うけれど、ソリストお呼び立てしてるので大人しいもんです。
むしろそれで良かったのかも知れないね。
英次の持ち味である、艷やかなサウンドがじっくりと聴こえたから。

後半は惑星。
星空コンサートでの木星のライブ動画がYoutubeで大変な再生回数とコメント数を頂いている英次&大阪フィルですから。
今回は満を持してというところじゃないですか。



火星から音色の変化、リズムの処理、英次ならではの鮮やかで流麗な仕上げで文句なし。
所々でテンポとデュナーミクの大きな揺れが現れるのも英次の長所&欠点ですけども、今回は音楽が崩れる際で留まれたほうでしょう。
木星は中間部の旋律はもちろん、それが断片的に出てくる箇所でも聞き取りやすいように足取りを遅め旋律を浮き立たせて聴かせるというクドさ一歩手前のやりよう。
ライブだからこれぐらいやんなきゃ。録音でこれだったらディスクを叩き割ってやりますよ。
オケはアラもちらほら。女声合唱は表現は好演でしたけども、声自体は神秘さ薄め。

前半は大阪クラシックのプレ公演の雰囲気。
今年もいよいよ発表&発売になりましたね。
その週に定期があるセンチュリーさん以外の在阪オケの弦楽奏者合同で弦セレですってよ。
楽しみ。

朝比奈後任、大植・大フィル監督が退任 「桂冠指揮者」に

2010年12月02日 | 大阪フィルハーモニー交響楽団
朝比奈後任、大植・大フィル監督が退任 「桂冠指揮者」に - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/entertainments/music/101202/msc1012021227000-n1.htm

大阪フィルハーモニー交響楽団は、音楽監督の大植英次さん(54)が平成24年3月31日で退任すると発表した。

 大植さんは初代指揮者の朝比奈隆さんの後任として15年に就任。来年3月で切れる契約を1年だけ延長し、退任後の24年4月1日以降は「桂冠指揮者」として同楽団の指揮を続けるという。

 大植さんは「新しい世代にバトンタッチできるときが来たと思います。24年以降は一歩下がったところで、大阪フィルを支えていきたい」とコメントした。


大植英次音楽監督の契約延長について 大阪フィルニュース : 大阪フィルハーモニー交響楽団 - Osaka Philharmonic Orchestra
http://www.osaka-phil.com/news/detail.php?d=20101201

大植英次音楽監督との契約につきましては、現在の2011年3月31日までの契約期間を2012年3月31日まで1年延長することになりましたのでお知らせ申し上げます。
なお、2012年4月1日以降大植氏は、「桂冠指揮者」として大阪フィルの指揮を続けていくこととなりましたので、皆様には引き続きご支援賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。

2010年12月1日
社団法人 大阪フィルハーモニー協会

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[大植監督からのコメント]

 朝比奈先生亡き後、ある意味混乱期にあった日本を代表するオーケストラ、大阪フィルより、私に音楽監督として白羽の矢を立てて頂いたことに関しましては、非常に名誉なことと感じ、当時、熟考を重ねました上、大阪フィルを守る為に尽力したいとお引き受けいたしました。

 その後、現在まで8年間、定期演奏会を2回にすることから始まり、星空コンサート、大阪クラシック等々、様々な大阪フィルならではのキャラクターを大阪フィルファミリー(楽団員、事務局、そして支えて下さる理事会や会員、の皆様方、お客様)の皆で共に作り上げ、成長し続けて来た様に思います。

 Best OffenseはBest Defense。微力ながらも、土台を固めることが出来たように思い、音楽監督と言うタイトルを2011/12年シーズンで返上、新しい世代にバトンタッチ出来る時が来たと思います。
2012/13年以降は、一歩下がったところで、大阪フィルを支え、見守って行く立場で、関わって行きたいと思っております。

大植英次


ここのところ体調絶不調だったが目が覚めた。
悲報か吉報か。
レパートリー的にも能力的にも限界だったが、彼以上に対外的アピール力と集客力を持ち合わせた後任は見つかりそうもない。
東京含め他所のオケを眺めて・・・大阪市長選を計算に入れて・・・考えると、来年度末で退任というタイミングもどうかなあ。
そもそも論で言えば御大一本かぶりだったのがずっと尾を引いてるんですけどね。

大阪フィルハーモニー交響楽団 第443回定期演奏会

2010年11月12日 | 大阪フィルハーモニー交響楽団
10.11.12(金)19:00 ザ・シンフォニーホール
大阪フィルハーモニー交響楽団 第443回定期演奏会
指揮/大植英次(大阪フィルハーモニー交響楽団音楽監督)
チェロ/堤 剛
ヴィオラ/小野眞優美(大阪フィル・ヴィオラ トップ奏者)
コンマス/長原幸太(大阪フィルハーモニー交響楽団首席コンサートマスター)
曲目:
R. シュトラウス/交響詩「ドン・キホーテ」op.35
バッハ/無伴奏チェロ組曲第3番ハ長調よりブーレⅠ&Ⅱ(アンコール)
R. シュトラウス/交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」op.30

あんまり実のない作品だが英次十八番ともいうべきシュトラウスだ。9割がた埋まっとる。

ドン・キホーテ。
老境の騎士が妄想の遍歴へと向かう物語だったが、チェリストがまさに老境の演奏で辛かった。少々なら遅れようがズレようが構いませんが音が出てなくて・・・。リアルなドン・キホーテだったのだと思えば楽しくはあったか。
中村紘子だの堤剛だのフライシャーだヴィンシャーマンだと介護不要の健康老人大会さながらの今季の定期でも今回は人選にミスがあったと言わざるをえない。数年前にセンチュリーとやったドヴォルザークあたりがもう最後の輝きだったのだ(3月のセンチュリー定期でまたやるけどね)。いや紘子もどうかと思わんでもないがあれはあれでソロが酷くてもどうでもいい作品だったし。
一応母校の元学長を迎えて英次も借りてきたネコのような按排。これだったら次席の近藤さんあたりに背伸びして頑張ってもらったほうが良かった。

休憩挟んでツァラ。
ベートーヴェンの運命、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番、サラサーテのツィゴイネルワイゼンと並んで一般的には冒頭しか知られてないクラシック名曲であるこのツァラトゥストラはかく語りき。R・シュトラウスは冒頭一発でいかに聴衆を惹きつけるか、その大切さをよく分かっていたが、冒頭のパンチが効きすぎて誰もその後30分もこの作品に続きがあるとは思わない状況になるなんて予想してただろうか。
快楽と情熱については久々に英次らしい、伸びやかで燃焼度の高い表現が聞こえた。ここがしっかりやれるからこそ、直後の墓場の歌から科学についての静寂が生きてくる。ただ以前の英次なら夜のさすらい人の歌の冒頭はもっと突き抜けた音が引き出せていたのだが、今ひとつ盛り上がりきらなかった。余裕を残したというよりもそこまでオケを持って行けなかったような気がする。

前半は残念だったけど、後半はまあ宜しかったんじゃないでしょうか。
プログラム氏が固定になったようで良かった。大フィルさんは王道でないといけないので曲目解説は簡潔でツボを抑え、なおかつ「今夜の聴きどころ」でそれとなく書き手の持ち込みたい世界を匂わせるところなど曲者感があって楽しく読めます。

大阪フィルハーモニー交響楽団 ブラームス交響曲 全曲演奏会 Ⅲ

2010年11月05日 | 大阪フィルハーモニー交響楽団

10.11.5(金)19:00 ザ・シンフォニーホール
大阪フィルハーモニー交響楽団 ブラームス交響曲 全曲演奏会 Ⅲ
指揮/大植英次(大阪フィルハーモニー交響楽団音楽監督)
ピアノ/フセイン・セルメット
コンマス/長原幸太(大阪フィルハーモニー交響楽団首席コンサートマスター)
曲目:
ブラームス/ピアノ協奏曲第2番ロ長調op.83
ソレール/鍵盤楽器のためのソナタニ長調No.84(アンコール)
ブラームス/交響曲第3番ヘ長調op.90

8割位かしら。
不人気第3番ではこんなものなのだ。晩秋の夜にこれほど相応しい作品もないのに・・・。

前半はとりあえずおいておこう。第3番。バスがオケ後方に一列にならぶ。
おぢさんの隣席はね、初めて見たときは青年男子であったのにすっかりジジイになった(向こうもそう思っているに違いないが)うるさ型の大フィルファンがおるわけ。第1楽章が終わった瞬間にそいつが舌打ちした。普段ならイラッとくるおぢさんだが今回はヤツの気持ちも分かるので一瞥もくれずじっと正面を見据えていた。
第1楽章終盤のあの急加速。乱れるオケ。そして楽譜以上の減速と遅いテンポに切り替えてこの楽章の終結が終楽章のそれと対応していることをひけらかすわけだが、俺を含め聴衆の99.9%は耳が悪いが、頭まで悪いわけではないのでそこまでしていただく必要はないです。というかそこまでしてほしけりゃブラームスはそう書くだろう。そう書いてないということはわざわざ明らかにしてくれるなという意味じゃないか?
第427回定期の演奏に加えてオケの精度をよりあげてくれるだけで良かったのに、なぜまた弄ったのか分からぬ。中間2楽章が前回さほど変わらない演奏で充実していただけに惜しくてならん。誰とも違うものをやろうという意欲が両極端に針が触れたような演奏をするばかりで空回りしとる。
前半の協奏曲の伴奏のような、バーンスタインゆずりの情熱的で健康的な音づくりの中にに英次ならではの耽美的かつ恍惚とした表情を引き出せる力をもっと素直に出してくれたらそれで万事うまくいくのだが。

で、前半のピアノ協奏曲第2番。
いつものようにバスを1stVnの後方に配置するパターン。
セルメットのピアノは明るくくっきりとした打鍵で、やりようによってはオケともども陰鬱に傾きかねない作品を中和し続けた。第1番を弾いたヌーブルジェもそうだったけど、さほどブラームス向きではないソリストを当てて化学反応を引き出そうということかしら。オケの配置はこちらのほうがまだ響きの充実を感じるね。第2楽章の暗く甘く跳ねるオケのなんと素晴らしかったことか。


大阪フィルハーモニー交響楽団 第442回定期演奏会

2010年10月15日 | 大阪フィルハーモニー交響楽団
10.10.14(木)19:00 ザ・シンフォニーホール
10.10.15(金)19:00 ザ・シンフォニーホール
大阪フィルハーモニー交響楽団 第442回定期演奏会
指揮/オリバー・ナッセン
ピアノ/ピーター・ゼルキン
コンマス/崔文洙(大阪フィルハーモニー交響楽団客演コンサートマスター)
曲目:
ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲
バルトーク/ピアノ協奏曲第3番
ナッセン/交響曲第3番op.18
ドビュッシー/交響詩「海」

やはりこのプログラムだと7割ぐらいの客。
プログラム解説には演者の共通項として生誕80年になる武満のことについて触れられていた。ほんまやで、ドビュッシー1曲どかして武満でも1曲放り込んだったらよかったんや。と思うわけ。この二人で東京では追悼コンサートやったらしいじゃない。それを大阪でもやりたかった。岩城さんが生きていればきっとそうしたに違いない。
もっとも、そうしたらそうしたで客足は一層遠のくわけだが・・・。
にしてもナッセン太ったな。もともと大柄だったのに。

牧神。
自身も優れた管弦楽法の使い手であるナッセンだけに精妙でバランスのとれた美しい出来。フルートが期待以上に健闘した。

バルトーク。
名手P・ゼルキンなので楽しみにしてたけど、実際はあまり良いものではなかった。スコア出してきた時点で嫌な予感はした。彼のスケジュール見るとどうも久々にやる曲を大阪でおさらいしに来た模様。強い打鍵でも全く音を混濁させずにキリキリと進めるところなどは流石と思ったものの、全体には温い仕上がり。

休憩挟んでナッセンの自作。
標題音楽的な内容らしいのだがプログラム読まないことにはまずそれと認識出来る部分無し。
ギターまで出してくるカラフルな作品で見て聞いて愉しい作品ではあった。それだけの作品。前回やったヴンダー城のなんとかとなにが違うのか。

海。
牧神同様。重層的な響きを上手く処理して雄大な海が聴こえた。
しかしこれがナッセンを是が非でも呼ばなければ達成できない成果なのかは分からん。
関西なら沼尻さんあたりで似たような演奏出来るでしょうに。なぜわざわざ。

コンマスが崔さんで定期初登場でした。次は英次のシュトラウスだ。

大阪フィルハーモニー交響楽団 第441回定期演奏会

2010年09月22日 | 大阪フィルハーモニー交響楽団
10.9.22(水)19:00 ザ・シンフォニーホール
大阪フィルハーモニー交響楽団 第441回定期演奏会
指揮/ヘルムート・ヴィンシャーマン
ソプラノⅠ/市原 愛
ソプラノⅡ・アルト/加納悦子
テノール/櫻田 亮
バリトン/河野克典
コンマス/長原幸太(大阪フィルハーモニー交響楽団首席コンサートマスター)
合唱指揮/三浦宣明
合唱/大阪フィルハーモニー合唱団
曲目:
J.S.バッハ/ミサ曲ロ短調BWV.232

合唱団のご関係も入って8割5分は埋まった会場。
まあヴィンシャーマン先生90歳超えてるし、期するものあって参集するもの多し。
今回にあたって数年ぶりに手持ちの録音をあれこれ聴いてみた。カラヤン、クレンペラーはさすがに胃もたれ。リリングはちと小ぶり。ショルティは合唱が元気で荒くてほのぼのする。ブリュッヘンやクイケンは古楽器の雑音性が出すぎて聴きづらい。名盤リヒターは最初にこの作品を聞いた盤なので安心するけど、いまさらこれもどうか。シュライアーは声もオケも美しく、モダン楽器ならこれが聴きやすい。古楽器ならガーディナーか鈴木、合唱の透明感が最高。一番好きなのは特殊だがジュリーニ。テンポは遅いが息の長い一つの旋律を聴いているような錯覚がする。

ミサ曲ロ短調。
冒頭、合唱の入りを聴きながらドイツバロックの流儀を感じる。声というよりも楽器のような硬質の発音は往年のリヒターやラミンの録音でもお馴染みのもの。
今季の大フィルさんは懐古的な指揮者やソリストを登用して20世紀中盤から後半の演奏史を摘んでゆくようなところがある。
第2次大戦後、ドイツ文化の健全な立て直しを図るべく戦前の良いところを保ちつつも新たな演奏家を使って様々な録音が作られたわけだけども、中でもバッハ録音はレコード会社も力を入れた分野だった。リヒターやラミンやヴェルナーやミュンヒンガーやマウエルスベルガーやリリングあたりが声楽曲では気を吐いていた。シェリングやヴァルヒャ、アランなどの素晴らしい器楽演奏を聴いたことがないバッハファンはいないと思う。ここらへん細かく語ると長いので割愛するけども、ヴィンシャーマン先生は60年代後半から蘭フィリップスに世俗カンタータとコラール集などLP13枚分を録音したが、東欧中欧の良い歌い手に恵まれて今聴いても心おどる素晴らしいものが多い。もっとも、その後にレオンハルトやアーノンクールの古楽器によるカンタータ全曲が始まってバッハ演奏はピリオドアプローチ全盛になってゆく。
今夜はこういう演奏が20世紀ドイツで行われておった、という一つの懐かしみとして楽しんだ。

でもやはり遅いよね。録音なら耐えられるけど実演はね・・・。

大阪フィルハーモニー交響楽団 ブラームス交響曲全曲演奏会Ⅱ

2010年08月27日 | 大阪フィルハーモニー交響楽団
10.8.27(金)19:00 ザ・シンフォニーホール
大阪フィルハーモニー交響楽団 ブラームス交響曲全曲演奏会Ⅱ
指揮/大植英次(大阪フィルハーモニー交響楽団音楽監督)
ヴァイオリン/長原幸太(大阪フィルハーモニー交響楽団首席コンサートマスター)
コンマス/崔文洙(大阪フィルハーモニー交響楽団客演コンサートマスター)
曲目:
ブラームス/ヴァイオリン協奏曲ニ長調op.77
ブラームス/交響曲第2番ニ長調op.73

9割5分ぐらい?ごくわずかに空席。

Vn協。
腰幅に開いた脚でステージをガッと掴んだまま仁王立ちで一音一音を彫るように弾く、その雄々しい様。
男のヴァイオリンだねえ。ブラームスはこういうスタイルでないといかんよ。
常なら流麗に付ける伴奏もこのソロに対してはすこしスケールを大きく構えるしかない。なよなよしていられん。
オーボエが首席ではなかったが期待を損なわず健闘した。
素晴らしい。このソロでブロッホのVn協とかどうかね。

休憩挟んで2番。
もちろん1番同様、バーンスタインそっくりの遅いテンポでじっくりと攻めた。第1楽章のホルンとトランペットの不出来は責められない。だってテンポが遅すぎて弛緩しちゃってるんだもの。バーンスタインの遅いテンポは伝統と技量が備わっている欧州のオケの補足あってこそのもので、大フィルさんでここまで遅くすると耐え切れないのも仕方ない。第2楽章は美しかったが作品の内容を考えれば過剰の一言。世紀末芸術じゃないんだから。
酷かったのは終楽章の極端なリタルダンドとクレッシェンド、やればやるほど音楽のスケールが萎縮して流れが澱んでいく。頻発すりゃそうなるわな。飯守先生もやらなくはないが1発に留めるし、そもそもバーンスタインもそこまでやってないので英次オリジナルなんでしょう。エピゴーネンってのはそのままでいたらほぼ劣化コピーなんだしね。
英次まだまだ模索中。まあ年齢考えたらベートーヴェンとかブラームスを極めてゆく指揮者人生ではないんではないかとも思う。
それよりもマーラーとかラフマニノフとかやろうよ。

とはいえ、これはこれで面白いわけ。期待していた演奏でないときのほうがむしろ楽しいね。自分が間違ってるんではないか、愚かなのではないかと悩めるから。
是非皆様詰めかけてください。次回第3番は出来は見えてる。第4番はまだ分からん。どーなるかなあ。

大阪フィルハーモニー交響楽団 第440回定期演奏会

2010年07月09日 | 大阪フィルハーモニー交響楽団
10.7.8(木)19:00 ザ・シンフォニーホール
10.7.9(金)19:00 ザ・シンフォニーホール
大阪フィルハーモニー交響楽団 第440回定期演奏会
指揮/大植英次(大阪フィルハーモニー交響楽団音楽監督)
コンマス/長原幸太(大阪フィルハーモニー交響楽団(首席ソロコンサートマスター)
曲目:
バルトーク/管弦楽のための協奏曲Sz.116
シューマン/交響曲第2番ハ長調op.61

今日、7月9日は御大が存命なら102歳。その日に定期があるってすてきやん。
9割強ぐらいの客入り。バルトーク&シューマンでは満員は無理か。シューマン生誕200年なんだが。

バルトーク。
せっかくのオケコン、ここまで大フィルは変貌したよということを天国の御大に示したかったが第3楽章までは先日の大友&関フィルと出来に差を感じない。関フィルが上出来だったのか大フィルがイマイチなのか。ここのところの演奏内容を鑑みるに後者だと思うね。第4楽章は指揮者がこの旋律を好いているのを感じさせる入念さ。オケも噛み合ってきた。終楽章は絢爛とやりきったが、第3楽章までの不振を払拭するほどではなかった。大フィルはもっとやれるようになっていないとダメなのだ。オケコンはセンチュリーさんも楽季末の定期でやるのでそれを楽しみにしたい。

ここのところプログラム解説の質の低下を感じるときがある。興味もないのに連れてこられた層、興味はあるけど知識はない層、興味も知識もある層、指揮者とオケを応援したいだけで音楽の知識はない層、様々に対応した一文を工夫して拵える職人がいないのだ。センチュリーは昔から学究的、京都市交響楽団&シンフォニカーは辞典解説風で書き手の差はあれ一貫しているのでマシだが、大フィル関フィルは時折エッセイレベルの内容で済ましてくる。自分たちが取り組むプログラムをまともに客に解説しようという気がないんだろうかと不安になるんだが、今回のプログラム氏は曲を知らない人でもどこかしら曲に取り付くシマが出来るように書いてあり、さらにこの曲を通じたバーンスタイン-大植の師弟関係をちゃんと前書きに書いてある。素晴らしい。これぐらいを最低限とは言いませんがある程度のスタンダードにしてもらえませんかね。
そうか、バーンスタインか。と思いながら舞台転換を眺めていた。
ベートーヴェンやブラームスでは両翼配置やら古典配置やら時代にあった配置をとって来る英次なので、当然コントラバスが舞台上手か最後方に一列並びになるだろうと眺めていた。
変えなかった・・・。
・・・お前どんだけバーンスタインなんだよと。始まる前から涙が出た。

休憩挟んでシューマン。
師匠のスタイルを50過ぎの男がそのまま踏襲してたらエピゴーネンというよりバカでっせ。狂い咲き気味の師匠のアプローチの半歩先を行こうという無茶が聴こえたから涙が止まらない。師匠よりも高速に回転する第2楽章、師匠よりも遅く美麗に歌い切る第3楽章。間延び寸前ですよ。第3楽章なんて。
ブラームスよりよほど納得出来る、作品の内容から遠くない良い演奏になったんじゃないかな。

ただ無茶は無茶ですからね、この先に路があるとは思いませんが。
それにこのオケはそこまでの表現に耐えうるキャパシティはもちあわせてないし。

大阪フィルハーモニー交響楽団 ブラームス交響曲 全曲演奏会 I

2010年07月02日 | 大阪フィルハーモニー交響楽団
10.7.2(金)19:00 ザ・シンフォニーホール
大阪フィルハーモニー交響楽団 ブラームス交響曲 全曲演奏会 I
指揮/大植英次(大阪フィルハーモニー交響楽団音楽監督)
ピアノ/ジャン=フレデリック・ヌーブルジェ
コンマス/長原幸太(首席ソロコンサートマスター)
曲目:
ブラームス/ピアノ協奏曲第1番ニ短調op.15
ブラームス/6つの小品より第2曲 間奏曲イ長調op.116-2(アンコール)
ブラームス/交響曲第1番ハ短調op.68

これ録音するんやて。全集を作るんやて。
ということは関西4オケ全部がここ5年でブラームス交響曲全集のCDを作るわけですけどトレンドなんですかね。それだったらシューマン全集のほうがいいのに。
9割5分入ってるとは思うけど、やはりベートーヴェンチクルスほどの完売御礼祭にはならんか。
バスを舞台上手にならべる古典配置。

協奏曲。
巨大な第1楽章と第2第3楽章のバランスが難しく、暗めの響きを放ちつつも激しく燃えるような力が欲しいという面倒な作品。
いつぞやの大フィル定期では演奏してたことすらおぢさんの中では忘れ去られたヌーブルジェだったが、今回は若々しく明るい音色で弾き始めた。これでオケが軽めに付けてくるなら、まあ作品の暗さを全員でハッピーに掬いあげるということにもなったんだろうが、オケはやや重かった。ぬう。
アンコールはブラームスチクルスだからか間奏曲。京響定期で聴いたことを思い出した。名品だと思う。これは明るい音色を柔らかくぼかして良い演奏だった。

休憩挟んで交響曲。
バスをオケ最後方に並べ替え。
以前に定期でやったものと全体の構築は変わらない。序奏終わりでテンポを落とすところから、早くもバーンスタインのエピゴーネンらしさ満開だぜ。各楽器のバランスがより滑らかに聴こえるように磨きあげた上に、バスを後方に置いて全体を包むように響かせるものだからなんとも中性的な優しい中間2楽章になる。それで第3楽章の快活さが少し薄くなってしまった。前回聴いた時の終楽章はオケの音の座りが悪いままに緩急の差を激しくとった結果、一貫した流れが損なわれて内容が散漫になったが、今回は終結部のアッチェレランドが唐突でドタバタに聞こえるというところ以外は落ち着いて進んだ。情熱は感じられるが指揮者の志向が音楽の特質と適合しているとは思われないだけに、オケがカバーしてやるべきなのだが、御大のころは下手うまなりに味があった管楽器は小器用だがそれ以外の何者でもなく、総体としては単調で無感動な集団になってしまった。個々人は良い演奏家だと十々承知しているが、それが順調に音に結びつかないのがオケの面白いところではある。ホルンソロは美味でした。これが続いてくれぬものか。弦楽器は相変わらず美しい。


ではバーンスタインのブラームスは誰のエピゴーネンだったか。

大阪フィルハーモニー交響楽団 第439回定期演奏会

2010年06月25日 | 大阪フィルハーモニー交響楽団
10.6.24(木)19:00 ザ・シンフォニーホール
10.6.25(金)19:00 ザ・シンフォニーホール
大阪フィルハーモニー交響楽団 第439回定期演奏会
指揮/ヤクブ・フルシャ
ピアノ/中村紘子
コンマス/長原幸太(首席ソロコンサートマスター)
曲目:
ショパン/ピアノ協奏曲第1番ホ短調op.11
マーラー/交響曲第1番ニ長調「巨人」

定期の間隔が短いからか7月定期の大きなポスターが市営地下鉄の駅にも貼り出されてる。
英次はまだまだ売れてると思いたい。
9割ぐらいの客入り。何せマーラーですから。
メモリアルイヤーに巨人だけって寂しいけど、来季もメモリアルに当たるわけだから期待していよう。

ショパン。
で、今年はショパンもメモリアルイヤーなわけ。生誕200年。
この記念すべき年に大フィルさんとしては様々なソリストがいる中で、長年の付き合いである中村紘子女史を招いてきた。
今年は彼女の芸歴50周年のメモリアルイヤーでもあり、中村紘子ピアノ・リサイタルツアーまで組んでる。ところによっては「デビュー50周年&ショパン生誕200周年記念」なんてタイトルの会場もある。
しかしまあ大フィルとも長い付き合い。毎年どこかで共演して。朝比奈先生も幾度も伴奏したはず。最初の定期登場は1967年の第59回に今回同様ショパンの第1協奏曲でございますからね。彼女以外にこの定期に相応しい人もいないから。落語やその他の芸道同様、戦中派世代が少ないクラシック界に小澤征爾や岩城宏之や堤剛らとともに颯爽と現れた戦後派第1世代の紅一点。40代50代のクラシックファンのショパン体験には録音であれ実演であれどこかに紘子が存在するはずで、おぢさんもありがたいものを見せていただいておるなと、内心手を合わせてながら聴いた。
まあ、上記のような思い出補正をかけて聴いてる時点で演奏の仕上がりはだいたい予想していただけると思うので何も言わない。白い豪奢なドレスとコレオグラファーでも付いてるのかと思うほどに優美なあのフレーズ終端の手のポージング。

休憩挟んでマーラー。
マーラーの若気の至りをまだ29歳の指揮者が振る。それだけで十分上手くできそうな気がするけど、そうはいかなかった。素朴な歌謡性を主体にしている指揮者の特質と現代的な感性とが、あれやこれやとやりたいことを沢山持ち出して焦点が定まらずに終わった。もっとピンポイントにまっすぐ突き進んで良かったのに。しかしまだ29歳。あと10年、いや5年待ちたい。彼なら必ずノイマンやマーツァルのような朗らかのんびり系マーラー指揮者になってくれるはずだから。もっともそれまでおぢさんが生きているかがそろそろ疑わしいのだが。
オケも良くない。金管はまもなく3割バッターになると思う。野球なら良い打者だが音楽で3割しか当たらないとなったら。
木管にセンチュリーからニコリンともっちーがトラとして入っている。センチュリーさんが危ういので移籍を見越した助っ人参加であればまだいいが、実は小泉和裕のマーラーシリーズを来季やるための下準備だったらどうしよう(笑)。

第4楽章冒頭の鮮烈さだけが耳に焼きついたまま。

大阪フィルハーモニー交響楽団 第438回定期演奏会

2010年05月20日 | 大阪フィルハーモニー交響楽団
10.5.20(木)19:00 ザ・シンフォニーホール
10.5.21(金)19:00 ザ・シンフォニーホール
大阪フィルハーモニー交響楽団 第438回定期演奏会
指揮/イオン・マリン
コンマス/長原幸太(大阪フィルハーモニー交響楽団首席コンサートマスター)
曲目:
ムソルグスキー/交響詩「はげ山の一夜」(R=コルサコフ版&原典版の折衷版)
ラヴェル/組曲「クープランの墓」
ムソルグスキー(ラヴェル編)/組曲「展覧会の絵」

7割強~8割5分ぐらいの客入りかな。
マリンちゃんです。BBCMMからマーラーの4番とかDGからロッシーとか出てて聴いた記憶が。
元ウィーン国立歌劇場常任指揮者という触れ込みで色んなオケを振っている。近々ベルリンフィルの定期に出るんだそうです。佐渡さんもいよいよ振りますね。
今回はムソルグスキー&ラヴェルプログラム。同時に全曲が編曲作品でもある。

はげ山。当初発表されたプログラムだと原典版となっていた。
wiki見ても分かるように4つほどのバージョン?があって、広く演奏されてるのは作曲者の死後リムスキー=コルサコフが編曲したもの。今回の演奏はR=コルサコフ版をベースに終結部分だけゴリッと原典版を接ぎ木するという超絶荒業。そんな無茶な、と思いますが原典版聴いたことがあれば気持ちは分かる。作曲家の異様な個性は楽しめるけど、いかんせんくどいくせに管弦楽法が下手くそで飽きるからね。
意外な展開に訳知り顔のおやじたちが身を乗り出して聞き耳を立てるのは面白いもんです。
指揮者用の譜面台を斜めに立てるのは好かん。

クープランの墓。
けったいなアゴーギクにのけぞる。が、チェリビダッケだのシルヴェストリだのジョルジェスクだのエネスコだの、千変万化のテンポとのっぺりと弦楽器に歌わせるルーマニア系指揮者の常道だと思えば実は大したことはない。去年センチュリーさんにきたゲルゴフもそうだったか。ルーマニアはブルガリアと並ぶ民族音楽の宝庫だけど、そこらへんと関係があるのかどうかは今度考えよう。
オーボエが期待以上の頑張り。

休憩挟んで展覧会。
素晴らしい指揮者だ。輝かしいプロムナードの音の組み立て、やや湿り気を帯びた情景が目に浮かぶ古城、重く悲しいビードロ、荘厳な雰囲気のキエフの大門。どれもこれも気品があって薫り高い内容で纏められていて芸術を聴いてる感満点です。先月の京響定期の秋山先生がスコアを鳴らし切るような演奏してたので全く違う方向の完成度のものを聴けて幸せ。
これには客席も沸いていた。

ただ・・・色んな所には呼ばれるけれどどうもポストには恵まれてないのはひょっとすると引き出し少ないのかも知れない。youtubeで展覧会の絵と新世界より見てたらちょっとそう思えた。短期の首席客演止まりなのは仕方ないか。大フィルさんは間違ってもこういう指揮者を定期的に招くのはいいけど迂闊にポストに迎えてはいけない。同じようなのがすでに監(ry



大阪フィルハーモニー交響楽団 第437回定期演奏会

2010年04月16日 | 大阪フィルハーモニー交響楽団
10.4.16(金)19:00 ザ・シンフォニーホール
大阪フィルハーモニー交響楽団 第437回定期演奏会
指揮/大植英次
ピアノ/アンドレアス・ヘフリガー
曲目:
ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第5番変ホ長調op.73「皇帝」
モーツァルト/アダージョロ短調K.540(アンコール)
コープランド/交響曲第3番

英次の集客力も昔ほどではなくなったとはいえ、やはり9割以上は入る。

ベートーヴェン。
英次の古典派はこだわりの古典配置。冒頭からものすごい顔芸をやらかしてくるのでどちらかというと苦手なこの曲に惹きこまれた。あんなに陶酔して振るべき曲だとは思えない。しかし英次にかかると英雄の生涯のようなヒロイックだがどこかチープな作品に変貌する。ヘフリガーは実にムラのあるピアニストのようで雑に流す部分と己の弾きたい部分で表情の濃さがかなり違う。時折客席を窺ってみたり目を閉じて沈思したりと神経質な人のようだ。
アンコールはシューベルトかと思うぐらい暗く沈潜したモーツァルト。小ホールでハイドンやモーツァルトの協奏曲を弾くか、室内楽をやるかしたほうが向いている人なんだろう。これは美しかった。

休憩挟んでコープランド。
第二次大戦中に着手された作品で愛国的な内容。アパラチアの春のような美しい旋律やロデオのような躍動感が放り込まれて、それまでのコープランドの作風の変遷が巨大な作品に統合されている。
英次はバーンスタインの弟子だが、コープランドはバーンスタインの盟友にして年上の○○。
英次はかつての手兵、ミネソタ管弦楽団とこの曲を録音済み。referenceレーベルの素晴らしい音質で大迫力の良い出来なのでそれが再現されたらいいんだけど。
で。演奏はまあ金管が心もとない場面がちらほらあったぐらいで楽しめたんだけど、英次がやれることってもう無いんじゃないかという一抹の不安。
企画力もある。人気もある。でも肝心の指揮者としての能力は今の大フィルさんに必要なメカニックのブラッシュアップには役立たない人なんじゃないかと思うわけ。どうなんかな。
首席客演で誰かつけるかしたほうがいいのかな。



大阪フィルハーモニー交響楽団 2010/2011 定期演奏会他について

2010年04月14日 | 大阪フィルハーモニー交響楽団

大阪フィルハーモニー交響楽団 2010/2011 定期演奏会
音楽監督/大植英次
主催:社団法人 大阪フィルハーモニー協会
後援:大阪府・大阪市・朝日新聞社・毎日新聞社・朝日放送
協賛:パナソニック株式会社関西電力株式会社


10.4.15(木)19:00 ザ・シンフォニーホール
10.4.16(金)19:00 ザ・シンフォニーホール
大阪フィルハーモニー交響楽団 第437回定期演奏会
指揮/大植英次 ピアノ/アンドレアス・ヘフリガー
曲目:ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第5番変ホ長調 op.73「皇帝」 コープランド/交響曲第3番

10.5.20(木)19:00 ザ・シンフォニーホール
10.5.21(金)19:00 ザ・シンフォニーホール
大阪フィルハーモニー交響楽団 第438回定期演奏会
指揮/イオン・マリン
曲目:ムソルグスキー/交響詩「はげ山の一夜」(原典版) ラヴェル/組曲「クープランの墓」 ムソルグスキー(ラヴェル 編)/組曲「展覧会の絵」

10.6.24(木)19:00 ザ・シンフォニーホール
10.6.25(金)19:00 ザ・シンフォニーホール
大阪フィルハーモニー交響楽団 第439回定期演奏会
指揮/ヤクブ・フルシャ ピアノ/中村紘子
曲目:ショパン/ピアノ協奏曲第1番ホ短調op.11 マーラー/交響曲第1番ニ長調 「巨人」

10.7.8(木)19:00 ザ・シンフォニーホール
10.7.9(金)19:00 ザ・シンフォニーホール
大阪フィルハーモニー交響楽団 第440回定期演奏会
指揮/大植英次
曲目:バルトーク/管弦楽のための協奏曲 シューマン/交響曲第2番ハ長調op.61

10.9.21(木)19:00 ザ・シンフォニーホール
10.9.22(金)19:00 ザ・シンフォニーホール
大阪フィルハーモニー交響楽団 第441回定期演奏会
指揮/ヘルムート・ヴィンシャーマン
ソプラノⅠ/市原 愛 ソプラノⅡ・アルト/加納悦子 テノール/櫻田 亮 バリトン/河野克典 合唱/大阪フィルハーモニー合唱団
曲目:J. S. バッハ/ロ短調ミサ BWV.232

10.10.14(木)19:00 ザ・シンフォニーホール
10.10.15(金)19:00 ザ・シンフォニーホール
大阪フィルハーモニー交響楽団 第442回定期演奏会
指揮/オリバー・ナッセン ピアノ/ピーター・ゼルキン
曲目:ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲 バルトーク/ピアノ協奏曲第3番 ナッセン/交響曲第3番op.18 ドビュッシー/交響詩「海」

10.11.11(木)19:00 ザ・シンフォニーホール
10.11.12(金)19:00 ザ・シンフォニーホール
大阪フィルハーモニー交響楽団 第443回定期演奏会
指揮/大植英次 チェロ/堤 剛 ヴィオラ/小野眞優美
曲目:R. シュトラウス/交響詩「ドン・キホーテ」op.35 R. シュトラウス/交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」op.30

20.1.20(木)19:00 ザ・シンフォニーホール
20.1.21(金)19:00 ザ・シンフォニーホール
大阪フィルハーモニー交響楽団 第444回定期演奏会
指揮・ピアノ/レオン・フライシャー ピアノ/キャサリン・ジェイコブソン・フライシャー
曲目:ベートーヴェン/序曲「コリオラン」op.62 モーツァルト/2台のピアノのための協奏曲変ホ長調 K.365 べートーヴェン/交響曲第7番イ長調 op.92

20.2.17(木)19:00 ザ・シンフォニーホール
20.2.18(金)19:00 ザ・シンフォニーホール
大阪フィルハーモニー交響楽団 第445回定期演奏会
指揮/大植英次
曲目:ショスタコーヴィチ/交響曲第9番変ホ長調op.70 ブルックナー/交響曲第9番ニ短調

20.3.15(木)19:00 ザ・シンフォニーホール
20.3.16(金)19:00 ザ・シンフォニーホール
大阪フィルハーモニー交響楽団 第446回定期演奏会
指揮/円光寺雅彦 ヴァイオリン/アン・アキコ・マイヤース
曲目:ドヴォルザーク/序曲「謝肉祭」op.92 プロコフィエフ/ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調 op.19 フランク/交響曲ニ短調


ブラームス交響曲全曲演奏会2010/2011

10.7.2(金)19:00 ザ・シンフォニーホール
大阪フィルハーモニー交響楽団 ブラームス交響曲 全曲演奏会Ⅰ
指揮/大植英次 ピアノ/ジャン=フレデリック・ヌーブルジェ
曲目:ブラームス/ピアノ協奏曲第1番ニ短調op.15 ブラームス/交響曲第1番ハ短調 op.68

10.8.27(金)19:00 ザ・シンフォニーホール
大阪フィルハーモニー交響楽団 ブラームス交響曲 全曲演奏会Ⅱ
指揮/大植英次 ヴァイオリン/長原幸太
曲目:ブラームス/ヴァイオリン協奏曲ニ長調op.77 ブラームス/交響曲第2番ニ長調 op.73

10.11.5(金)19:00 ザ・シンフォニーホール
大阪フィルハーモニー交響楽団 ブラームス交響曲 全曲演奏会Ⅲ
指揮/大植英次 ピアノ/フセイン・セルメット
曲目:ブラームス/ピアノ協奏曲第2番ロ長調op.83 ブラームス/交響曲第3番ヘ長調 op.90

11.2.9(水)19:00 ザ・シンフォニーホール
大阪フィルハーモニー交響楽団 ブラームス交響曲 全曲演奏会Ⅳ
指揮/大植英次 ヴァイオリン/竹澤恭子 チェロ/アルバン・ゲルハルト
曲目:ブラームス/ヴァイオリンとチェロのための協奏曲イ短調op.102 ブラームス/交響曲第4番ホ短調 op.98


いずみホール特別演奏会 2010/2011[ウィーン古典派シリーズ]

10.5.27(木)19:00 いずみホール
ウィーン古典派シリーズⅠ
指揮/延原武春 ヴァイオリン/長原幸太
曲目:ハイドン/交響曲第94番ト長調 Hob.I:94「驚愕」 モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲第4番ニ長調 K.218「軍隊的」 ベートーヴェン/交響曲第4番変ロ長調op.60

10.9.16(木)19:00 いずみホール
ウィーン古典派シリーズⅡ
指揮/延原武春 ホルン/池田重一
曲目:ハイドン/交響曲第7番ハ長調 Hob.I:7「昼」 モーツァルト/ホルン協奏曲第1番ニ長調K.412 ベートーヴェン/交響曲第6番ヘ長調 op.68「田園」

10.12.3(金)19:00 いずみホール
大阪フィルハーモニー交響楽団 いずみホール特別演奏会 [ウィーン古典派シリーズ III ]
指揮/延原武春 クラリネット/金井信之 オーボエ/大森 悠 ファゴット/久住雅人 ホルン/村上 哲
曲目:ハイドン/交響曲第45番ヘ短調 Hob.I:45「告別」 モーツァルト/管楽器のための協奏交響曲変ホ長調K.Anh.9 (297b) ベートーヴェン/交響曲第8番ヘ長調 op.93


名曲ベストセレクション マチネシンフォニー

10.7.27(火)14:00 ザ・シンフォニーホール
大阪フィルハーモニー交響楽団 名曲ベストセレクション マチネシンフォニー Vol.3
指揮/井上道義 ヴァイオリン/クリストフ・バラーティ
曲目:ベートーヴェン/序曲「コリオラン」op.62 ショスタコーヴィチ/ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調op.77 ストラヴィンスキー/バレエ組曲「火の鳥」(1919年版)

10.11.16(火)14:00 ザ・シンフォニーホール
大阪フィルハーモニー交響楽団 名曲ベストセレクション マチネシンフォニー Vol.4
指揮/井上道義 チェロ/タチアナ・ヴァシリエヴァ
曲目:ドヴォルザーク/チェロ協奏曲ロ短調op.104 チャイコフスキー/3大バレエ音楽「白鳥の湖」「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」抜粋


というわけで大フィルさんの2010/2011定期その他でございます。
第437回はファン待望のコープランドの交響曲第3番。第438回は俊才イオン・マリンによるラヴェル&ムソルグスキーの一夜。第439回は昨年の颯爽とした指揮ぶりが記憶に新しい若手フルシャが若々しいマーラーの第1番に挑む。ショパンは紘子、カレーはハウス。第440回は師匠バーンスタイン譲りの熱血シューマン&大フィルの機能性を大いに発揮したいバルトーク。第441回はバッハ演奏の司徒ヴィンシャーマン先生による大作ロ短調ミサへの挑戦。聞き逃してはいけない。第442回はナッセン再登場。自作を含めた近現代作品に取り組む。第443回は誇大妄想系作品に適したケッタイな表現力を持つ英次によるR・シュトラウスの大型交響詩を2つ。第444回は伝説的左手のピアニスト(今は治った)レオン・フライシャーによる古典の名作。第445回はタコ9&ブル9という対照的というよりも水と油な2曲を英次がタクトで攪拌します。悪酔い確実なのでみんなで聴きに行こう。第446回は大フィルの実質的正指揮者、円光寺さん(9年ぶり4回目、東京・桐朋)久方ぶりの登場。何でもやれるので何とかやるでしょう。何をやるか何も知らなくても大丈夫です。

今季の目玉企画はブラームスチクルス。たまたま名古屋フィルもやる。
英次のブラームスはブラームスを聴くというよりもどうしても英次を聴かざるを得なくなるわけですが、あの耽美的でグロテスクな表現をやらかす英次のブラームスも面白いじゃないですか。それに交響曲だけではなく協奏曲も合わせてのチクルスなので聴く価値はある。

いずみシリーズはようやく形になったかと思いきや、ウィーン古典派シリーズなどという一時期の聖響/センチュリーのような内容を延原さんと。延原さん関西ゆかりの人ですから大阪力をアピールする意味でもええでしょうね。団員ソリストも裏を返せば財政の厳しさですけど、レベルアップに繋がれば結果としては良いわけだ。

寂しい客入りだった昼公演シリーズ、マチネシンフォニーは客が来るのか昨年度以上に不安にさせてくれるザ・シンフォニーホールへ早くも会場変更。3年様子見ないとダメな施策だったと思うのだが、こらえ性が無いなあ。大フィルさんの客層を思うに昼の主催公演は年1回が限界なんじゃないかと。

もちろん定期会員として参戦予定。ブラームスもたぶん行くじゃろう。

大阪フィルハーモニー交響楽団 第436回定期演奏会

2010年03月19日 | 大阪フィルハーモニー交響楽団
10.3.19(金)19:00 ザ・シンフォニーホール
大阪フィルハーモニー交響楽団 第436回定期演奏会
指揮/下野竜也
ヴァイオリン/ルノー・カプソン
曲目:
ベートーヴェン/劇音楽「アテネの廃墟」序曲
モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調K.219「トルコ風」→ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調K.213
グルック/オルフェオとエウリディーチェより精霊の踊り(アンコール)
ブルックナー/交響曲第1番ハ短調(ウィーン稿)

18.March.2010 7:00p.m.The Symphony Hall
19.March.2010 7:00p.m.The Symphony Hall
Osaka Philharmonic Orchestra 436th Subscription Concert
Conductor/SHIMONO Tatsuya
Violin/Renaud CAPÇON
Concertmaster/Nagahara Kota Principal Concertmaster of Osaka Philharmonic Orchestra
Program:
L.V.Beethoven/Overture "Ruins of Athens"
W.A.Mozart/Violin Concerto No.5 in A major "Turkish"K.219→Violin Concerto No.3 in G major K.213
A.Bruckner/Symphony No.1 in C minor(Vienna Revision)

アテネ~トルコ~ウィーンってなんかカッコいいじゃないかと期待しつつホールに着いたら曲目変わってた(笑)
なんでも来日前に実演重ねて仕上げてくるつもりが体調不良で上手くやれなかったらしい。中途半端な仕上がりは出せないので手馴れた3番にしたいんだそうな。仕方ないね。
大フィルのブルックナーながらやはり1番だからか8割強の客入り。

ベートーヴェン。
盟友の聖響同様にさっぱりと出来上がってたけどそもそも聴いた覚えが希薄。なんだろう。

モーツァルト。
前回同様、何をやっても美音で通すから別にモーツァルトだろうがなんだろうが関係なかった。曲目を変える必要があったんだろうか。アンコール含めてとにかく美しくない音は一度も出さなかった。あと半日ぐらい聴かされても苦にならないね。伴奏は伴奏。懐かしベルテレフォンアワー伴奏オケ並みの無個性。
カプソンの弾くデュティユー「夢の木」が凄いので、今度来るときはそれを。

休憩挟んでブルックナー。
考えて御覧なさい。小学校高学年のときに校内写生大会で入選した水彩画を、四十越えておっさんになってから直接その上に油絵の具で書き足したら、そりゃどうかしてるでしょう。目の前にそんな人が居たら「まあまあ落ち着きなはれ」とやんわりたしなめるか、場合によっては羽交い絞めにしないといけない。この第1番ウィーン稿ってのはそれをやりとおしちゃったおっさんの作品だと思えば宜しい。
素朴なメロディーが厚いオーケストレーションで塗り込められているので、小学生ボディービルダーを見るような怪奇さが漂う。なにせ8番第1稿の反応が芳しくなかったための強烈な自己批判に起因する改訂なので、長く太くくどくなってる。指揮者の腕前で骨格となる1番の筋を見せつつ、改訂後の豊麗な管弦楽をここぞとたっぷり乗せて非常に楽しめた。
是々非々はまだまだ後年の人々に委ねたい的なプログラム氏ではあったけども、正直なところこれはやりすぎだと思う。ヴァント、シャイー、ロジェストヴェンスキーあたりだけが資料的に録音にトライしているのは当然のような気もする。

まあ珍しいものが聴けたので良し。
通常良く取り上げられるリンツ稿ならスウィトナーを良く聴きますね。