映画から自己実現を!

映画を通して 人間性の回復、嫌いな自分からの大脱走、自己実現まで。 命をかけて筆をとります。

①『アメリ』〜無気力、無感動から抜け出したい人へ。一人あそびから外界へ!

2024-07-20 07:02:33 | 日記

『アメリ』

〜無気力、無感動から抜け出したい人へ。一人あそびから外界へ!

 

 

 

 

 

00.最初に

心が急停止する。

何もしたくない。何も感じられない。これまで楽しんできたことが楽しくない。

あなたはこれまで頑張ってきました。

よく耐えて来ました。

頑張れば成功して未来は楽になる。

一目置かれ、みんな認めてくれる。

私さえ我慢すれば、組織は上手くいく。

私さえ我慢すれば、お母さん、お父さんは楽しく過ごせて私を愛してくれる。

誰かを忘れていませんでしょうか?

それはあなたの中の子どもです。

あなたの源泉です。

心です。

身体は無理が利かないけれど、精神は成長するし我慢して鍛えるものだ、壊れることは私に限ってないはずと思っていませんか。

それはまったく違います。

身体が病めば心も病みます。

心が病めば身体も病みます。

必死に生きてきたのに生きる意欲をなくす。

そんな状態から解放するのは、心を自由に泳がせてあげることだと思います。

この作品『アメリ』では自由な映像言語、自由なナレーション、自由な空想がたくさん散りばめられています。

アメリといっしょに遊んでいって下さい。

そうすれば、あなたは希望が湧いて来ると思います。

『楽しいムーミン一家 お隣さんは教育ママ』

https://www.youtube.com/watch?v=ONIqq8ZGAw4

こちらも合わせて見てみて下さい。

遊ぶことの大切さをムーミンたちが教えてくれています。

それではエレガントで自由なフランス映画をいっしょに楽しんでいきましょう。

 

~《主な登場人物》~

 

アメリ・・・
主人公。23歳の若い娘。両親ともに神経質。母は幼い頃に死去。空想癖があり人見知り。

ニノ・・・
青年。人付き合いが苦手。収集癖がある。

アメリの父・・・
元軍医。引きこもり。他人に興味がない。

レイモン・・・
老画家。手の骨がもろく、不自由。ルノワールの絵の模写を日課とする。

リュシアン・・・
食料品店の店員。優しい純粋な青年。店長のコリニョンにいじめを受けている。

コリニョン・・・
食料品店の店長。

ジョゼフ・・・
カフェ『ドゥ・ムーラン』の客。ジーナと別れるもストーカー行為をしている。録音記録癖。

ジョルジェット・・・
カフェ『ドゥ・ムーラン』の売店員。神経質な女性。

ジーナ・・・
カフェ『ドゥ・ムーラン』のウエイトレスの女性。

シュザンヌ・・・
カフェ『ドゥ・ムーラン』の店主。初老の女性。

イポリト・・・
カフェ『ドゥ・ムーラン』の客。売れない小説家。

ウォレス・・・
アメリのアパートに住む管理人の女性。夫を飛行機事故で亡くしている。

 

 

 

 

 


01.アメリの生い立ち

 

 

 


ナレーション:
「1973年9月3日18時28分32秒、毎分1万4670回で羽ばたく1匹の羽虫がモンマルトルの路上に留まった」

「その時、丘の上のレストランでは一陣の風が吹いて魔法のようにグラスを踊らせた」

「同じ時、トリュデーヌ街28番地の5階で親友の葬儀から帰ったコレール氏が、住所録の名前を消した」

「また同じ時、x染色体を持った精子がラファエル・ブーラン氏の体から泳ぎだし、プーラン夫人の卵子に到達した」

「9ヶ月後、アメリ・プーランが誕生した」


 

主人公のアメリは現在20歳代の女の子。

この世に生を受けたアメリ。

すべての偶然の出来事は重なり、天文学的な確率でアメリという気質を備えた女の子が出来上がります。

この世に来る人、あの世に去る人。

新たな生がまた始まり、今まで同じもののない人生という絵を描きます。

 

 

 

 

02.アメリの父と母

 

 


ナレーション:「アメリの父は元軍医で、今はアンギャンの治療院に勤務」


 

”薄いくちびるは冷淡さの印” とポップ広告のように表示されています。

 


ナレーション:

「プーラン氏の嫌いなこと。連れション、そしてサンダルを軽蔑の目で見られること。濡れた水着が体に張りつくこと」

「好きなこと。壁紙を大きく剥がすこと、靴を並べ磨きあげること、道具箱を空け中を掃除し元通り仕舞うこと」


 

嫌いなことと好きなことのコーピングですね。


人それぞれ感覚が好き、嫌いを感じて人を性格を作ります。

 


ナレーション:「アメリの母、アマンディーヌは元教師で昔から情緒不安定だった」


 

 ”目の痙攣は神経質の印” とまるで落書きのように軽やかに書かれています。

 


ナレーション:
「嫌いなこと。長風呂で手にシワが寄ること。嫌いな人間に近づき触られること。頬にシーツの痕(あと)がつくこと」

「好きなもの。フィギュア・スケートの衣装。床をピカピカに磨くこと。バッグを空け中を掃除し元通り仕舞うこと」

「アメリは6歳。父に抱きしめられたいと思っていたが、その機会はなく月に1度の検診の日に、父に触られて動転し心臓が早鐘のように打った」

「それ以来、父は娘を心臓病だと信じ込んだ」


 

神経症的な出来事や幼少期、父母の性格を面白く軽妙に教えてくれていますが、少し考えてみるととても深刻なことばかりです。

両親に愛されることを願っていたアメリは、気に入られようといつも緊張していたことがうかがえます。

この作品では生い立ちを詳しく説明していません。

ただ神経質な雰囲気で表現することのみです。

作品全体が、快い出来事なのか不快な出来事なのかという視点で描かれているところが面白いですね。

ヨーロッパ映画のとても感覚的で、楽に観れる作品です。

 


ナレーション:「こうしてアメリは学校へ行かず、母からの教育を受けた」


 

母が最初に国語の教科書を音読し、アメリがそれに続きます。

 


母:「めんどりは...しばしば...修道院で...卵を...産む...」

幼いアメリ:「めんどりは...しばしば...」

母:「大変結構!(笑顔で)」

幼いアメリ:「しゅどう...(言葉につまる)」

母:「ダメ!(怒って)」


 

アメリの緊張と母親の不安定な喜怒な性格が分かります。

深刻な幼少期を軽妙に伝えています。

あまり悲惨さを強調していないので、気付かない方もおられると思います。

両親に気に入られるように、怒らないようにしようというアメリの性格のベースとなって行きます。

 

 

 

 

 

03.空想を好む少女

 

 


ナレーション:
「他の子どもとの接触もなく、神経質な母と冷淡な父に挟まれ、アメリは空想の世界に逃避した」


 

アメリの心象風景です。

 


ナレーション:
「レコードはクレープのように作り、意識不明の隣人は自分の意志で目覚めることもできる」

意識不明の隣人:「一生、目を覚ましてることだってできるのよ」


 

要は感情を出すことを止めて、抑圧することで生き抜いてきたということです。

感情を表出出来ないアメリは心のバランスを保つために、心の中だけの空想の世界で育つんですね。

自己治癒的な感じですが、よく考えるととても悲しい解決方法ですね。

 


ナレーション:

「親友は金魚の ”クジラ(名前)”」

「だがクジラは冷たい家庭に絶望し、身投げ」

「クジラの自殺未遂で母のストレスが悪化。その結果...」

母:「もううんざりよ!」


 

母は我慢できず橋の上から金魚を放流します。

アメリは悲しげに "クジラ" の様子を見つめます。

そこに雨が降ってきて、"クジラ"  のいる川に雨の波紋がきれいに散りばめられます。

 


ナレーション:「アメリを慰めようと母は中古カメラを買い与えた」


 

アメリがうさぎやくまの形をした雲を撮影していると、車の衝突事故がおこります。

 


ナレーション:

「隣人はカメラが事故を招いたと信じ込ませた」

「山ほど写真を撮ったアメリは恐怖に襲われた」

「恐る恐るテレビをつけ、大火事の責任を感じた。脱線事故にも飛行機事故にも。」


 

アメリはとても感受性の強い子でそれがまた自己否定と結びつき、世の中の事故を自分のせいにしてしまいます。

 


ナレーション:「数日後、真実を知ったアメリは隣人への復讐を誓った」


 

アメリは隣人のテレビアンテナを抜き差しして、サッカー中継のチャンスシーンを観せないようにしました。

 

 

 

 

 

04.母の死

 

 


ナレーション:
「そして悲劇が...息子が欲しい母はノートルダムで毎年お祈りをして、3分後天から答えが落ちてきた」

「残念ながら赤ん坊ではなく、失恋して身投げしたカナダ人旅行客だった」


 

アメリの母親は運悪く身投げに巻き込まれ死んでしまいます。

 


ナレーション:「アマンディーヌ・プーラン即死」


 

アメリは哀しみを感情に出すことはありませんでした。

くまのぬいぐるみをぶらんこに乗せて揺らすシーンが悲しさを感じさせます。

 


ナレーション:
「母の死後、アメリは父と二人きりになった」

「父は以前に増して自分の殻に閉じこもり、庭にミニチュアの霊廟(れいびょう)を作って妻の遺灰を納めるのだった」

「日が、月が、年が流れていった」

「何も変化のない毎日、アメリは家を出て自立する日を夢見た」

「5年後モンマルトルのカフェ ”ドゥ・ムーラン” へ」

 

 

 

 


05.カフェ、ドゥ・ムーラン

 

 

アメリは大人に成長し、カフェの店員として働きます。

 


ナレーション:
「1997年8月29日、48時間後にアメリの運命が激変するのだが今の彼女には知る由もない」

「カフェの仲間や常連客に囲まれた平穏な日々。女主人のシュザンヌ。足は悪いがグラスは割らない。サーカスは曲馬乗りだった」

「好きなもの、負けて泣くスポーツ選手。嫌いなもの、子どもの前で恥をかく親」

「売店のジョルジェットは病気魔で頭痛がしない日は坐骨神経が痛む」

「嫌いなもの、祝福の祈り」

「アメリの同僚のジーナ。祖母は治療師だ。好きなもの、指を鳴らすこと」


 

常連客に売れない小説家のイポリトがいます。

 


ナレーション:「好きなもの、牛に突かれる闘牛士」


 

その他の常連客では、目つきが悪い男ジョゼフがいて、彼はジーナに振られたばかり。

彼女に恋人がいるかを知るため常に見張っています。

 

 

 

 

06.好きなもの、嫌いなもの

 

 


ナレーション:
「唯一彼が好きなのは梱包材のプチプチを潰すこと」

「スチュワーデスのフィロメーヌ。フライト中はアメリに猫を預ける」

「好きなもの、猫の水入れを床に置く音。猫のロドリーグが好きなのはお伽話を聞くこと」


 

ここまでで皆さんはお分かりかと思いますが、人物紹介時に好きなものと嫌いなものを教えてくれています。

ストレス源としての嫌いなもの、ストレスを解消するための好きなものですね。

これをコーピングレパートリーと呼びます。

特に好きなものの方を皆さんはいくつ言えますか?

多ければ多いほどいいですね。

それらがあなたの興味があるものであり、あなたのなかにいる子どもの遊び心であるからです。

子どもの心を大切にすることです。

人がどんなひとかというのは、地位や職業や経歴ではなく、その人がどんなふうに日々を感じながら生きているかということです。

物語は続きます。

 


ナレーション:「アメリは週末には北駅から列車に乗り実家の父を訪ねます」

アメリ:「人生を楽しめば?」


 

父親は食い気味に言います。

 


父親:「どうやって?」

アメリ:「旅行は?この村を出てみたら?」

父親:「若い頃はお前のママとよく旅行をしたが、その後は...お前の心臓のせいで...」

アメリ:「わかってるわ」

父親:「今はもう...今はもう...」


 

娘のせいだと言うところがどこか思いやりにかける冷たい気質なんですね。

この作品は登場人物たちがどうすれば前向きに生きることができるかの解決法を教えてくれてます。

家庭環境や育った環境、その人の気質、病歴などを持ったその人が、どのようにすれば変化が起き、前向きに生きられるか。

『前向き』。無気力、無感動から抜け出したい。

決してとびっきりの明るさでなくていいと思います。

その人が背負ってきた哀しみもあるのですから。

 


ナレーション:「金曜の夜、たまに映画に行く」

アメリ:「映画を見ている人の顔を見るのが好きなの」


 

皆、顔がにやけています。

 


アメリ:「誰も気づかない些細な事柄を発見することも好き」


 

キスシーンの窓辺にハエが歩いているレアな映画映像。

 


アメリ:「嫌いなのは昔のアメリカ映画で脇見運転するところ」

ナレーション:
「恋人はいない。1、2度試したが結果は期待外れだった」

「とはいえ彼女には彼女なりの楽しみがあった」

「豆袋に手を入れること」

「クレーム・ブリュレのお焦げを潰すこと」

「サンマルタン運河で水切りすること」


 

このようにコーピングレパートリーがたくさん並びます。

『ベルリン・天使の詩』にもたくさん出てきました。

感覚的なもの、子供心というのはとても大事なものですね。

大人になろうが消えることは決してありません。

人は永遠に子供ってことですね。

 

 

 

 

 

07.アメリのアパート

 

アメリのアパートの窓から老画家の部屋を覗くことができるんですね。

アメリには覗き趣味があるんです。

人との温かなつながりを本心では感じています。

 


ナレーション:
「彼はガラス男、先天性の病気で骨がガラスのように脆い」

「家具は全部布張りだ」

「手を握っても骨が砕けるので20年も外出していない」

「成人してもアメリは空想の世界に逃避していた」

「眼下に広がる街に向かってバカな質問をしてみる」

ナレーション:
「そして1997年8月30日の夜、ある事件がアメリの運命をひっくり返した」

TVニュースキャスター:
「ダイアナ元妃がパリで交通事故のため死去、同乗していた友人アルファイド氏も死亡。運転していたホテルの使用人も死亡。ダイアナ妃のボディガードは重体です」

「ダイアナ妃とアルファード氏は昨夜パリに到着。氏の父が所有するホテルを出て...」

 

 

 

 

 

08.タイムカプセル

 

ニュースを聴いたアメリは驚きのあまり、持っていた化粧品のフタを床に落とします。

フタが転げて行った先の一片のタイルが割れて取れてしまいます。

タイルを外してみるとそこには空洞があり、何かが入っていました。

チョコレートの金属の箱のようなものが出てきます。

その瞬間オルゴール調の優しい曲が奏でられます。

 


ナレーション:
「ツタンカーメン王の墓を発見したような感動だった」

「彼女が発見したのは40年ほど前、少年が大切に隠した宝箱だった」


 

その箱の中には誰かの幼い頃、若い頃の写真、マッチ、自転車、カーレーサーのミニチュアなどが入っていました。

その人の思い出の品々です。

 


ナレーション:
「8月31日朝4時、アメリの心にすばらしい考えが浮かんだ」

「持ち主の少年を探し出し、宝箱を返してやるのだ」

「彼が喜んでくれたら自分の世界から飛び出そう。ダメならそれまで...」


 

少し他力なところがありますが若い女性の可愛らしい勇気に、これまでの生きづらさが悲しくも愛らしく思えてきます。

「鬼滅の刃」でカナヲが銅貨のオモテウラで運命を決めるシーンみたいですね。

 

 

 

 

09.未亡人ウォレス

 

アメリはアパートの古くからの住人に40年前の住人のことを訊きます。

 


ウォレス:「5階のお嬢さん、珍しいわね」

アメリ:「40年前、私の部屋に住んでた少年をご存知ですか?」

ウォレス:「男の子ねえ...ポルト酒はいかが?さあ入って。ドアを閉めて」


 

ポルト酒・・・
ポルトガル北部ポルト港から出荷される特産の酒精強化ワイン。日本の酒税法上では甘味果実酒に分類される。ポルト・ワインともいう。 ポートワインは、まだ糖分が残っている発酵途中にアルコール度数77度のブランデーを加えて酵母の働きを止めるのが特徴である。

 


ウォレス:
「男の子ねえ、男の子は沢山いたから。小さい頃は可愛いけど大きくなると憎たらしくて」

「雪玉だのガムだの...」

アメリ:「ここにはいつから住んでいるのですか?」

ウォレス:「1964年よ。私の噂、聞いていない?」

アメリ:「いいえ」

ウォレス:「そう...変ね。座ってね」

「夫が保険会社で働いている頃、誰もが秘書と浮気してるってよく言ってたわ」

「パティニョルの高級ホテル、連れ込みじゃなく秘書ってすぐ股を広げるけど、お金がかかるって」

「夫は会社の金を横領、初めは少し次には一度に5千万。愛人と南米へ駆け落ち」

「さあ、お酒を飲んで」

「1970年1月20日、男が訪ねてきて『ご主人が死んだ。南米で交通事故を起こして』と言ったわ」

「私の人生が止まったわ。”黒ライオン” も悲しくて死んだ。その犬よ」


 

なんと飼い犬が死んだあと、剥製にしていました。

 


ウォレス:「ほら、まだ主人を愛してるのよ」


 

残酷で奇異な行為ですがどことなく可笑しさが伝わるシーンですね。

作品全体がそういった悲しさを可笑しさと優しさで包まれています。

 


ウォレス:「手紙があるの。(アメリが立ち上がろうとすると)いいの、座ってて。まだいいでしょ」


 

ウォレスは誰かに聞いて貰いたかったのですね。

 


ウォレス:「兵役のときの手紙よ。『愛するマド』マドって私のことよ。」

 

手紙の文面:「

眠れない、食欲もない。

人生をパリに残したまま今を生きている。

2週間後の金曜まで帰れない。

駅のホームで待っててくれ、僕のイタチちゃん。あの青いドレスを着て。

君は透けすぎると言っていたね。君にキスを送ります

 

ウォレス:「こんな手紙を貰ったことがある?」

アメリ:「いいえ、まだ恋人は...」

ウォレス:
「私、マドレーヌ・ウォラスよ」

「『マドレーヌのように泣く』んですって。そう言うでしょ?」

「ウォラスって泉もあるし、私って泣いて暮らす運命なのよ」


 

駆け落ちした夫から手紙を貰ったことで夫の気持ちを知り、まだずっと夫を愛しているのですね。

ウォレス:「そうそう、お尋ねのことは食料品店のコリニョンがここに長く住んでるわ」

 

 


10.店長と店員

アメリは雨の中、傘をさしてコリニョンの食料品店に行きます。

 


コリニョン:「やあ、アメリちゃん。イチジクにクルミ3個かい?」

アメリ:「40年前に私の部屋に住んでいた人の名前を知らない?」

コリニョン:「そりゃ難しい質問だ。俺は2歳だぜ。そのバカの精神年齢と同じだ」


 

コリニョンは隣の従業員のリュシアンに冷たく当たります。

 


ナレーション:
「彼はリュシアン。頭はよくないが優しい青年だ。特に野菜の持つ手つき、宝石でも扱うような繊細さは仕事への愛の現れである」

コリニョン:
「なんだその手つき。巣から落ちたヒナでも拾うつもりか」

「ブドウなんか運ばせようとしたら来週までかかる。早くしろ、のろまめ!」

「奥さんがお待ちだ」


 

そんな優しいリュシアンをアメリは気に入ります。

目を合わせて「頑張ってね」と言うように笑顔を授けます。

 


コリニョン:「お袋に会いに行け。ゾウみたいに記憶力がいいんだ。母親ゾウだ」


 

一方、アメリはコリニョンが大嫌いなようです。

睨みつけるように言います。

 


アメリ:「ありがとう...」

 

 

 

 

11.探偵アメリ

アメリはコリニョンの実家を訪ねました。

 


コリニョンの父:「名はプルドトーだ」

アメリ:「えっ?」

コリニョンの父:「探している男の名前だ。だが確かじゃない。わしはもう耄碌(もうろく)しとる」

コリニョンの母:「すっかり耄碌(もうろく)してるわ。見てよ、このローリエの葉」


 

その時コリニョンの母はテーブルのティーセットをグチャグチャに倒してしまいました。

老夫婦はケンカしそうな勢いです。

 


コリニョンの母:
「昔、この人は地下鉄の車掌だったの...」

「3ヶ月前から夜中に起き出してローリエの葉に穴を空けるのよ」


 

登場人物の神経症的な思わぬ行為がとても面白く表現されていて、慈しみが感じられます。

 


コリニョンの父:
「本当はリラの葉がいいが仕方ない」

「人それぞれに心を癒やす方法がある」

アメリ:「私は水切り遊び」


 

アメリは小声で言いました。

 


コリニョンの母:「お得意は記録してあるのよ。全部ね」

コリニョンの父:「何だ。何をだ?」

コリニョンの母:「息子が50歳になっても私が帳簿をつけてやれるわ」

コリニョンの父:「高校生の息子にまだ歯を磨いてやってたろ。過保護だ」

コリニョンの母:
「カミユ、カミュは...2階の右。B階段はプロサール、わかった!これよ」

「プルドトー、5階の右。パ=ド=カレの出身だったわ」

コリニョンの父:「そう、プルドトーだ。それだよ」


 

宝箱の持ち主の名前が分かりました。

 

 

 

 

 

12.ニノとの出逢い

 

 

アメリが地下鉄を歩いているとホームでシャンソンのレコードを聴いているずっと正面を向いたままの盲目の老人がいました。

 


レコードの歌:

♫ あなたがいなければ、生きていけない。

♫ きっと知らずにいたでしょう。この夢のような幸せを。

♫ あなたの腕に抱かれると心が喜びで満ちあふれる。

♫ とても生きてはいけないわ。もしもあなたがいなければ


 

アメリはそっと老人のそばに硬貨を置きます。

 

その先の証明写真撮影機の前で何かを探している青年を見つけます。

 


ナレーション:

「この青年の名はニノ・カンカンポワ」

「アメリとは逆に子供のニノは友達に囲まれていた」


 

彼が子どもの時にいじめられていたシーンが出てきます。

 


ナレーション:「二人は9km隔てた所で、一方は兄を他方は妹を夢見て生きていた」


 

二人は一瞬目を合わせ、アメリは去って行きます。

それぞれの2階から鏡を太陽に反射させて遊ぶ子供の頃の二人のシーンは、感覚的なものが非常に近く ”運命の二人” を感じさせます。

 

 

 

 

 

13.引きこもりな父

 

アメリの父親は白雪姫の七人の小人の陶器に色を塗ったり、きれいに掃除していました。

 


アメリ:「新しいお友達?」

アメリの父:
「いや、前から家にいた。お前のママが嫌がるんで物置に仕舞ってた」

「今から仲直りさせよう」

「できた、いいだろう?」


 

アメリの父は小人を庭に据え付けて飾りました。

 


アメリ:
「ねえ、パパ。子供の頃の宝物が見つかったらどんな気がする?」

「嬉しい?悲しい?懐かしい?」

アメリの父:「ドワーフは子供の頃の宝じゃないぞ。これは退役記念の贈り物だ」

アメリ:「違うの。子供の頃、宝のように大切に隠した物のことよ」

アメリの父:「秋になる前にニスを塗らねばならないな」


 

父親はアメリの話を聞きません。

心が病んでいる人は自分のことにこだわり過ぎたり、精一杯なところがあります。

諦めて話を変えるアメリ。

 


アメリ:「お茶をいれるわ。パパも飲む?」


 

仕事場のカフェの紹介です。

 

 

 

 

14.神経症な面々

 

同僚ジーナがお客の首の関節を鳴らしてほぐしてあげています。

グリーンのカーディガンがとても美しいです。

 


ジーナ:「息を吸ってじっとして」


 

少し神経質で怒りっぽいジョルジェットです。

 


ジョルジェット:「ちゃんとドアを閉めて!すきま風が入るでしょ」

ジーナ:「凍死はしないわ」

ジョルジェット:
「私はアレルギーなの。咳がひどくて昨夜は肋膜(ろくまく)が剥離(はくり)する寸前よ」

ジーナ:「肋膜剥離?」


 

自分は病気を持っているのではないかと思ってしまう病気不安症です。

身近な人の死別によって、自分もその病気になるのではないかと恐れることがあります。

一人の男性客がジーナを監視しています。

録音機を持ってジーナの行動を記録しています。

 


客ジョゼフ:「12時15分、高笑い、動機は男を誘うため」

ジーナ:「あいつ、頭にくるわ」

店主シュザンヌ:「本当にしつこい男ね。他の店に行ってよ!」

ジョルジェット:「シュザンヌさん、グラタンってクリーム入りよね?」

店主シュザンヌ:「それが?」

ジョルジェット:「私、クリームはダメなの。シュザンヌは馬肉がダメでしょ?」

店主シュザンヌ:「私の場合、胃ではなく思い出の問題ね。馬より人を食べるわ」

ジョルジェット:「私は人もダメだわ」


 

この神経質な雰囲気のオンパレードがコミカルでいいですね。

とてもフランス映画らしいなと思います。

そうした人間の弱さをも愛でているところが人間讃歌ですよね。

アメリはカフェの電話帳でプルドトーの住所を調べます。

 


アメリ:「マダム・シュザンヌ、今日早退してもいいですか?」

店主シュザンヌ:「あら、彼氏ができたの?名前は?」

アメリ:「ドミニク・プルドトーです」

 

 

 

 

 

15.調査

 

一人目に訪れた、プルドトーは若い青年で人違いでした。

 


アメリ:「プルドトーさん?」

青年:「そうさ、僕だよ。何の用?」

アメリ:「ええと...ご署名を。目的は...ダイアナ妃を聖女に」

青年:「いや結構」                  


 

幼くして両親が離婚した家庭環境で育った、内気な性格のダイアナ妃にアメリは特別なシンパシーがあるのかもしれませんね。        

二人目のプルドトーの訪問です。

 


アメリ:「欧州連合の国勢調査です」


 

探偵が板についてきています。

 


男:
「上がって、3階だ」

「こんちには、子猫ちゃん」

「アールグレイそれともジャスミン?どのお茶がいい」

アメリ:「お仕事中なので...」


 

男は写真とは面影もなく、女装をしていました。

3人目です。

 


女:「ここよ。何かご用?」

アメリ:「こんにちは、実はプルドトーさんに会いたくて来ました」

女:「お気の毒に、少し遅すぎましたわ」


 

棺が階段を降りて運ばれて来ました。

 

 

~PART②へ続く~