『マディソン郡の橋』
13.運命の4日間
今度はホリウェル橋で会いました。
白い屋根の付いた美しい橋です。
そこでロバートは橋を背景にフランチェスカを撮りました。
照れた少女のようなフランチェスカが素敵です。
ロバートはフランチェスカの料理を手伝ったり、テーブルを整えたりして、フランチェスカにとても優しく接します。
フランチェスカの心の中:
「たった数分前、彼が使った浴槽」
「彼もここで体を洗ってた」
「とてもエロチックに思えた」
「彼のすべてが私にはエロチックに思えた」
そして、フランチェスカはドレスに着替えて来ました。
フランチェスカ:「何なの?」
ロバート:
「息が止まった」
「正直に言うとね」
「男なら皆、息を止めてうめく」
心が通じ合おうかというその時に、電話が鳴ります。
フランチェスカは迷いながらも電話に出ます。
それは近所の友人のマッジからでした。
彼女はロバートの体に触れながら、マッジと会話します。
そして、二人は恋人関係になります。
ここで電話の相手が夫でないのがいいんですね。
もし夫だったら作品の品が無くなりますね。
アメリカ映画のいいところです。
キャロリン:「どうしたの?」
マイケル:「外の空気を吸う」
キャロリンはマイケルなら当然そうなると思い、笑いました。
フランチェスカ:
「どこかへ連れて行って」
「あなたが行ったことのある所へ」
「地球の反対側へ」
ロバート:「イタリアは?」
フランチェスカ:「いいわね」
ロバート:「バリは?」
フランチェスカ:「汽車を降りて、それからどうしたの?」
ロバート:「駅を知ってるだろ?」
フランチェスカ:「ええ」
ロバート:
「向かいに日除けを掛けたレストランが...」
「アランチノを食わせる」
フランチェスカ:
「アラッチノよ」
「店の名は”ゼッポリス”」
ロバート:「そこでコーヒーを飲んだ」
フランチェスカ:「席は入り口の側?それとも教会に面してた?」
ロバート:「教会側だ」
フランチェスカ:
「私もそこに座ったわ」
「今日のように暑い日だった」
「買い物のあとで足元のいくつもの袋をゴソゴソ動かしてた」
「...話の続きを忘れたわ」
ロバート:「忘れていい」
フランチェスカの心の中:
「これからどうすればいいのか」
「彼はそれを読み、自分を捨てて、私を満足させてくれた」
「これが自分だと思っていた女はどこかへ消えた」
「私は別人となり、でも真の自分を見出していた」
フランチェスカはロバートに7歳の誕生日から身につけているペンダントをロバートに渡しました。
ロバート:「僕にはできない」
「一生を数日で生きることさ」
ロバートは彼女について来てほしいんですね。
これで終わりにしたくないんですね。
14.マイケルとキャロリンの心の変化
キャロリン:「どこへ行ってたの?」
マイケル:「酒場で飲んできた」
キャロリン:
「ベティに電話を?」
「しなさいよ」
マイケル:
「ルーシーの話を聞いた」
「ディレーニーと結婚した女だ」
キャロリン:「最初の奥さんが亡くなって?」
マイケル:
「その後、ルーシーと再婚した」
「ずっと不倫の関係だった」
「最初のかみさんは冷たくてね」
キャロリン:「つまり、セックスで?」
マイケル:「母さんは違った」
キャロリン:
「ワイルドな都会にあこがれてたけど、アイオワも相当なものね」
「酔ってるの?」
マイケル:「これからさ」
兄弟は母のことを想いながら楽しく会話しました。
マイケル:
「僕は結婚してから浮気をしたことはない」
「そりゃ思うけどね」
キャロリン:
「これからは?」
「僕も母さんのマネを?」
キャロリン:
「私はもう40女なのよ」
「20年間ひどい結婚生活を我慢した」
「”離婚はいけない、我慢しろ”と教えられたからよ」
「セックスでアフリカへ飛んだことなんか一度もないわ」
「ただの一度もね」
「なのに良妻賢母のあのママがチャタレイ夫人だった」
マイケル:
「僕は、父さんより僕が裏切られた気がする」
「これは異常かな?」
「一人息子は言うなれば、一家の王子って存在だ」
「王子を産んだ母親は性欲を持ってはいけないんだ」
キャロリン:「やはり異常よ」
マイケル:
「不幸なら、駆け落ちっていう道は?」
「先を読もう」
「ここまでは何て?」
キャロリン:「ママは彼を寝室へ連れて行った」
マイケル:「父さんの寝室?」
キャロリン:「いいわ、そこは飛ばして、ここから」
マイケルは酒瓶を一気に飲み、読み始めました。
15.失うことの恐れ
フランチェスカの心の中:「ロバートは横で眠ってた」「私は眠れなかった」「明日が来たら?」「彼は去り、新しく知った貴重ですばらしいものは消え去る」
朝、フランチェスカはいらだちながら、ロバートが朝食を食べるのを見ていました。
フランチェスカ:
「よく眠れた?」
「よかった」
「コーヒーまだいる?」
「一つ聞いてもいいかしら?」
「世界のあちこちにいる女たちとはどうしてるの?」
「時々は会うの?」
「どんどん忘れてしまうの?」
「時々は手紙を書くの?」
「どうするの?」
ロバート:「なんだって?」
フランチェスカ:「あなたの決めてるやり方を知っておきたいの」
ロバート:
「決めたやり方だって?」
「ひどいな」
フランチェスカ:「違うの?」
ロバート:
「決めるのは僕か?」
「夫を捨てないと決めたのは君だよ」
フランチェスカ:
「駆け落ち?」
「人間は好きだけど、特定な関係は嫌いな人と?」
「何の意味が?」
ロバート:「僕は正直に話した」
フランチェスカ:
「そうね、その通りよ」
「何も必要としない人だってことが分かったわ」
「じゃあ、なぜ眠るの?健康でしょ?」
「食べ物も要らないはずよ」
ロバート:「どうした?」
フランチェスカ:「世界中を家と呼べるような豊かな経験の方ですものね」
ロバート:「僕の経験を知りもせず...」
フランチェスカ:
「でも分かるの」
「孤独は謎だなんて言う人にここの暮らしが理解できる?」
「強がりばかり言って」
ロバート:「もうやめよう」
フランチェスカ:
「わたしは一生ここで考え続ける」
「今、あの人と一緒ならばと」
「彼は今頃、ルーマニアの農場の主婦の台所で、世界各地の女友達の話を聞かせてるのかしら」
ロバート:「何を言わせたい?」
フランチェスカ:
「何も言わないでいいわ」
「言う必要はないの」
ロバート:「とにかくもうやめよう」
フランチェスカ:
「いいわ」
「卵?それとも床でファック?」
ロバート:「僕は自分自身を恥じてもいないし、間違っていたとも思わない」
フランチェスカ:
「そういう人よ!」
「気分次第で傍観者で世捨て人でまた愛人にもなれる人!」
「我々は目をかけていただいた一瞬をありがたく感謝する!」
「孤独と恐れを感じないなんて人間じゃないわ」
「偽善者でウソつきだわ」
16.ロバートの本心
ロバート:「君が必要だとも」
フランチェスカ:「本当?」
ロバート:「だが叶わぬ望みだ」
フランチェスカ:
「だから抑えてるわけ?」
「お願い、ロバート、本当の気持ちを聞かせて」
「聞かないと気が狂ってしまうわ」
「正直に言って、どうしても聞きたいの」
「明日ですべてが終わってしまうんですもの」
ロバート:
「僕が君にこう思わせた?」
「僕が何度もこういう想いを経験していると?」
「そう思わせたのなら謝る」
フランチェスカ:「何を言いたいの?」
ロバート:
「なぜ僕は写真をつくるのか、その理由はここで君と出会うためだった」
「僕の今までの人生は君と出会うためのものだった」
「なのに僕は明日去る」
「君を残して...」
フランチェスカ:
「離さないで」
「どうすればいいの?」
ロバート:
「行こう」
「僕と一緒に」
そして、フランチェスカは旅の支度をします。
フランチェスカは悩み続けます。
17.板挟み、そして決断
ロバート:「行かないんだね」
フランチェスカ:「何度も何度も考えたけど、正しくないことだわ」
ロバート:「誰に?」
フランチェスカ:
「家族、皆に」
「町の噂に殺されるわ」
「リチャードは理解することができない」
「立ち直れないわ」
「誰も傷つけたことのない彼をそんな目に?」
ロバート:「それでも人は生き続ける」
フランチェスカ:
「100年以上もここに居着いた農家で、よそでは暮らせない人よ」
「それに子供たち」
ロバート:「もう大人で話すこともなくなったと」
フランチェスカ:
「話はしないけど、キャロリンはまだ16歳」
「今から男と女の関係を知る年頃よ」
「誰かに恋をして、いずれ誰かと家庭を持つ」
「そういう娘にどんな影響が?」
ロバート:「じゃあ、僕らは?」
フランチェスカ:
「分かってるはずよ、心の奥でね」
「今の気持ちは長続きしない」
ロバート:「そう、いい方に変わる」
フランチェスカ:
「この家からどんなに遠くに離れようと、私の頭にはいつも彼らのことがある」
「そして、その苦しみをあなたのせいにする」
「そして、すばらしかったこの4日間までバカな間違いに思えてくる」
ロバート:
「僕らが感じているこの気持ちを経験する人間は少ない」
「もう一心同体だ」
「多くの人は経験どころかその存在も知らない関係だ」
「それを諦めることが、正しいことだと君は本気で言うのかい?」
フランチェスカ:
「どういう選択をするかが人生よ」
「分からない?」
「そうでしょ?」
「女ならば結婚して子供を産もうという選択をする」
「そこから人生は始まり、同時に止まってしまうの」
「日々の些事に追われて、子どもたちが前進できるよう、母親は立ち止まって見守る」
「子供はやがて巣立っていって、さて、いよいよ自分の人生を歩もうとしても、歩き方を忘れてしまっている」
「そういう女にこんな恋が訪れるなんて」
ロバート:「でも、訪れた」
フランチェスカ:
「だから一生大切にしたいの」
「この気持ちのままあなたを愛し続けるわ」
「ここを捨てたらその愛は失われる」
「新しい人生のために過去を消し去れと言うの?」
「心の中の私達を支えに生きていくわ」
「分かってちょうだい」
ロバート:
「こんな恋を捨てるのか?」
「そう考えるのはこの家にいるせいだ」
「明日、家族が戻ったら考えが変わるかもしれない」
フランチェスカ:「どうかしら」
ロバート:
「僕はもう数日この町にいる」
「心を決めるのは先でいい」
フランチェスカ:「ロバート、苦しめないで」
ロバート:
「ここで別れるなんて」
「まだ時間はある」
「気が変わるよ」
「話し合えばきっと変わる」
フランチェスカ:
「その時はあなたが決めてね」
「わたしはとても...」
ロバート:
「一度だけ言う」
「初めて言う言葉だ」
「これは生涯に一度の確かな愛だ」
ロバートは出ていきました。
18.一心同体
もう一生会えないと思ったフランチェスカは走ってロバートを追いかけます。
そして、家族が帰ってきました。
目を真っ赤にしたまま、家族を迎え入れます。
フランチェスカの心の中:
「あなたたちが戻ってまた日常の暮らしになった」
「2日ほど過ぎると日常の雑事が彼への想いを紛らわせ、あの4日間を遠いものにした」
「安全なホッとする思いだった」
ある雨の降る日、フランチェスカは夫と町に買い物に出かけました。
フランチェスカは雑貨屋で買い物を先に終え、車に戻ってきました。
すると、通りの向こうにロバートの車が止まっています。
ロバートは車から降り、ずぶ濡れになって、フランチェスカを見つめました。
フランチェスカは決死の目つきでロバートを見ました。
そして彼は数歩歩み寄り、二人は見つめ合いました。
フランチェスカは少しだけ微笑みかけました。
さようならとでも言うように...。
そしてロバートは優しく微笑み返します。
ありがとうとでも言うように...。
ずぶ濡れのロバートはゆっくりまるで死んだかのような顔でまばたき一つせず、車のほうに振り返り、去っていきました。
何とロバートの無様な姿でしょう。
孤独を好み、寂しさや恐れがないと言ったロバートの哀れな姿。
あなたはきっとこのロバートの姿に胸を打たれることでしょう。
この微笑みだけの言葉のない会話のなかに、どれだけの想いが二人の間に伝わっていたでしょうか。
イーストウッドとメリル・ストリープの迫真の演技です。
後世に必ず残る名シーンです。
19.現世での別れ
フランチェスカはうなだれ、涙が止まりません。
そこに夫が帰ってきました。
フランチェスカの心の中:
「一瞬どこにいるのかを忘れた」
「彼はわたしをあきらめたというような足取りで、歩み去って行った」
ロバートの車をリチャードが追い越そうとした時、ロバートは割って入り、そのまま信号を待ちます。
リチャードの車はロバートの車の後ろに停車しました。
フランチェスカは一瞬も見逃すまいとロバートの後ろ姿をじっと見つめます。
フランチェスカの心の中:
「彼は物入れの方に手を伸ばした」
「8日前も彼はそうして、腕がわたしの脚に触れた」
「1週間前のわたしはドレスを買ってた」
ロバートはフランチェスカのペンダントをバックミラーに優しくかけました。
これからこのペンダントを君だと想って、独りで生きていくよと言っている風でした。
リチャード:
「遠くから来た車だ」
「ワシントン州」
「カフェで噂を聞いた写真家だな」
信号が青になりましたが、ロバートは車を進めません。
リチャード:「早く行けよ」
もう会えないと思ったフランチェスカは助手席ドアノブを強く握り、駆け出そうとします。
そしてドアノブを回転させ、今にもドアが開きそうでした。
リチャードはクラクションを鳴らしました。
その音でフランチェスカは我に帰りました。
リチャード:「出せよ」
ロバートはリチャードに促されるように、車を左折させました。
そのままリチャードは直進します。
ロバートが曲がる時、ロバートの顔が見えました。
フランチェスカはまばたきもせず、じっと見送りました。
フランチェスカはドアノブを握りしめていた手の力を抜きました。
フランチェスカの心の中:
「行かないと言ったわたしが悪いのよ」
「でも、行けないの」
「なぜ、行けないのか言わせて」
「なぜ、行くべきなのか言って」
「彼のあの言葉が聞こえた」
「”これは生涯に一度の確かな愛だ”」
リチャードは理由がわからず泣くフランチェスカを見て、
リチャード:
「どうした?」
「いったいどうしたんだ?」
フランチェスカ:「すぐ落ち着くわ、リチャード」
フランチェスカはロバートに対して、
フランチェスカ:「許して...」
と言いました。
家に帰るとフランチェスカはラジオの音量をあげて、部屋の隅で独り泣きました。
フランチェスカの心の中:
「沈黙がありがたかった」
「わたしは知った、愛は期待に答えぬことを」
「愛の謎は純粋で、しかも絶対的」
「ロバートと一緒になったら、愛は長続きせず、リチャードと別れたらその絆はたちまち消える」
「このことを家族に話せたら、話したら家族はどう変わってたか」
「あの美しさは理解されただろうか」
20.その後の生涯
フランチェスカの手紙の中:
「わたしとルーシーは親友になった」
「でもなぜか、あの話を打ち明けたのは2年後」
「でもルーシーといると安心して彼のことを考え、愛し続けられるように思えた」
「私達は町の噂など、気に留めなかった」
「お父様もね」
やがて年を取り病に伏すリチャードはフランチェスカに言います。
リチャード:
「フラニー、お前にはお前の夢があったんだろう?」
「それを与えてやれなかった」
「でもお前を愛している」
フランチェスカの手紙の中:
「お父様の死後、ロバートに手紙を書きました」
「でももう雑誌社を辞めていて、連絡先は不明でした」
「残されたつながりはあの日彼と行った場所」
「私は毎年、誕生日にその場所を訪ねました」
「ある日、彼の弁護士から手紙と包みが届きました」
そこにはロバートの遺品と彼女への手紙が入っていました。
愛用のカメラと、ロバートの著書”永遠の4日間”、彼のブレスレットとペンダントです。
本を開けると最初のページに、フランチェスカが夕食に誘ったメモが挟まれていました。
そして、最初のページには親愛なる”F”へ捧ぐと書かれていました。
ロバートの言葉”これは生涯に一度の確かな愛だ”は決してうそではなかったのです。
彼のブレスレットを身に付け、ずっと彼がかけていたペンダントをいたわるように優しく握りしめました。
ロバートの死を知ったフランチェスカ。
どんな想いでペンダントを握ったのでしょうか。
ロバートもまた、どのような気持ちで生涯を閉じたのでしょうか。
「昔の夢はよい夢」
「叶わなかったがいい思い出」
自分を納得させながら生きていたのだと思います。
キャサリンとマイケルは、母たちが飲んだブランデーを母たちが飲んだグラスで乾杯しました。
フランチェスカの手紙の中:
「彼を思わぬ日はありませんでした」
「彼が一心同体と言ったのは正しかったのです」
「私達は一体でした」
「彼なしでは長い歳月を農場で暮らせなかったでしょう」
この文で、子どもたちがロバートに”感謝”する理由が分かると思います。
この4日間があったからこそ、家族と向き合う決心がつき、ここの暮らしを我慢できたということです。
フランチェスカの手紙の中:
「あなたがほしいと言ったドレス」
「”ママが着ないから”と」
「でも笑わないでね」
「私にはウェディングドレスのように大切だったの」
「この手紙を読んで、火葬を望む理由が分かったと思います」
「老女のたわ言ではないのです」
「わたしは家族に一生を捧げました」
「この身の残りは彼にささげたいのです」
21.母への理解
マイケルは妻のもとに戻り、言いました。
マイケル:
「君は幸せかい?」
「それが僕の望みだ」
「なによりもね」
そして抱きしめました。
マイケルは母の気持ちを知り、妻が心配になったのでしょう。
面白いですね。
あなたは日常の生活に追われて、ついパートナーに対して単調で淡々としたコニュニケーションやスキンシップになってないでしょうか?
悪い言い方をすれば、自分の所有物のように、何も考えていないとお思いではないでしょうか?
すれ違いの始まりですね。
気にしてあげたいですね。
キャロリンは母の大切なドレスを着ました。
そして母に勇気をもらって、夫に連絡します。
キャロリン:
「あなた?わたしよ」
「元気よ、あなたは?」
「話があるの、今ここで」
「しばらくここで暮らすわ」
「いつまでかは...」
「何も怒ってないわ、スティーヴ」
「本当よ、怒ってないわ」
これがキャロリンの選択でした。
夫への愛情を再確認したのかもしれませんね。
フランチェスカの手紙の中:
「写真集はルーシーに預けました」
「興味があれば見て」
「わたしの言葉の足りない所は写真が物語るでしょう」
「それがアーティストの作品なのです」
「あなたたち2人を心から愛しています」
「恐れずに幸せを求めて」
「人生は美しいものです」
「幸せに、わたしの子どもたち」
そして、二人は心からの母の確かな気持ちを受け止め、ローズマン橋から遺灰を撒きました。
愛情をもって母をロバートの所に行かせてあげました。
22.愛のカタチ
フランチェスカは家族を傷つけず、思い出も美しいまま、この世を去りました。
ロバートを傷つけてしまったという罪悪感と彼についていきたいという抑圧を胸にしまいながら、ルーシーにだけは打ち明けて、生涯を閉じました。
あなたは今の妻や夫、恋人以外でこのような思い出がありますか?
過去にはあったという人はいるのではないでしょうか
それは今のパートナーや家族との愛情に負けず劣らず、輝くいい思い出なのではないでしょうか?
愛情ってなんて不思議なのでしょうね。
1つだけで存在するとはかぎらないですね。
あなたが人を愛した数だけ存在します。
一番大事な人だけれど、それをいい思い出のままにするという選択。
なんて人間は聡明であることか!
たった4日間だけ、彼女は自分のために生きました。
たった4日間だけですが、命をかけたこの恋愛が彼女のその後の人生に活力を与えました。
この4日間がなければ、その後の人生に耐えられなかったと言っています。
一方、ロバートもつらかったでしょう。
彼女を愛していたからこそ、苦しみながら人生を歩ませるのはかわいそうと思ったのでしょう。
恋愛とは相手が自分の一部分となる気持ちだと思います。
別離とはその一部分が離れることです。
こんな辛いことはありません。
フランチェスカはロバートのことを想わない日は1日もなかったと言っています。
雑誌の写真のロバートは首にフランチェスカのペンダントをつけていました。
ロバートも同じく、1日たりともフランチェスカを想わない日はなかったはずです。
若い人にはたくさん、恋をしてほしいと思います。
それがどれほど大切な思い出になるか、
年を経るごとに輝きは増すと思います。
人生を後悔しなくなります。
たとえ死期が迫っていても、あの思い出があるから、いい人生だったと思えるのです。
23.批判に耐えうるメロドラマの演出
そして、この作品のすごさはやはりその演出です。
☆遺品整理から始まるストーリー
☆遺言という形で母の生き様を伝えた事
☆長男から見た母の恋愛の反応
☆長女から見た母の恋愛の反応
☆子どもたちの現在の境遇と重なるところ
☆フランチェスカの自由を求める気持ち
☆フランチェスカの聴く曲
☆フランチェスカの視線で心情が分かるカメラワーク
☆家族とロバートのドアの閉め方の違い
☆田舎の人の排他性とまっとうな暮らし
☆家畜のいる家にいつもいる蝿
☆自家用に乗るトラクター
☆美しいローズウェル橋のラブロマンスの調和
☆家庭的な人妻と孤独で自由な男の対比
☆倫理観の象徴となっていた家庭的な食卓や寝室
☆フランチェスカとロバートに突き刺さる倫理観
☆妻に逃げられて、田舎でで暮らし続けるのは耐えきれないというリチャードへの思いやり
☆フランチェスカの誰も傷つけたくないという理性
☆4日間を後悔させたくないための決断の聡明さ
☆どしゃぶりの中、ずぶ濡れの哀れな姿のロバート
☆初老のロバートの哀愁がある白髪と顔のしわと体つき
☆ロバートがフランチェスカに去らせずに、自分から去っていったという優しさ
☆臨終のリチャードがフランチェスカに謝るシーン
☆名演技のメリル・ストリープとクリント・イーストウッド
☆大人になった子どもたちに気持ちを知ってほしいという母心
☆同じ境遇で苦しんでいるルーシーとフランチェスカの心の通い合い
☆恋人の代わりのペンダントと思い出のドレス
☆ローズウェル橋で死後二人はいっしょになるという演出
名シーンのオンパレードのような映画でした。
24.愛を追憶することの価値
これほど悲しみがジーンと長く続く作品はありません。
長編物語を見てきたかのような、ずっと続く寂しさと切なさです。
ロバートが言った貴重な経験、
「僕らが感じているこの気持ちを経験する人間は少ない」
「多くの人は経験どころかその存在も知らない関係だ」
このような貴重な恋を、若い人にたくさんしてもらいたい。
そして、パートナーや家族がいる人は昔を思い返してみてください。
そういった思い出を掘り起こしてみてください。
それを思い返した時、今の生活をより価値のあるものに変えていけると思います。
是非とも、この作品を観てください。
観た方はもう一度見返してください。
人生のステージによっても見え方が変わってくるので、何度でも観てほしいです。
長い間、お読みくださり、ありがとうございます。
それでは、また次の作品でお会いしましょう。
さよなら。
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