いよいよ報われるタイミングだったのかもしれないが、先週、6年半も囚われていたスーパーツールのバリュートラップから脱出した。
スクリーニングによる選定
スーパーツールは、ジャスダック(現スタンダード)銘柄、プロ用工具の大手で、産業機器や太陽電池パネル販売も行っている。
この銘柄は、2015年の秋、安定的に配当をもらえそうな銘柄を探すため、低PBR、低PER、高配当利回りでスクリーニングしてリストアップした銘柄の中から選んで投資した。もちろん投資前に改めて検討して選んだが、そもそもリストアップした時点でバリュートラップにつかまりやい条件だった。
以前書いた高配当株、連続増配株への投資という記事の中で「バリュートラップに注意」という項目を書いた。再掲すると以下の部分だ、
----- (再掲開始)
業績はそこそこよく、配当利回りもいいという株がある。割安だと思って買うと、一定の稼ぎはあるが成長性の乏しい株に投資してしまうことになる。その結果、株価も全然上がらないという事態になる。いわゆるバリュートラップというやつだ。配当利回りと合わせてPBRやPERでスクリーニングして銘柄を選ぶと引っかかりやすい。
----- (再掲終了)
上記の内容は私の経験を踏まえてのものだったが、その一例がスーパーツールだったのだ。
最近はスクリーニングできるツール(マネックス銘柄スカウター等)も増えているので、売上や利益なども含めて少しは伸びている銘柄を選んだ方がよいと思っている。ただ、コロナ禍のようなことがあると売上増や利益増が不連続になることもあるので、単純にはスクリーニングし難いかもしれない。
スーパーツールの値動きと売買
いつものごとく、チャートに実際の売買の状況を追記すると下記の通りとなる。
最初に買った時は5株併合後の株価換算で2,250円、ちょうど6年半後に売った時は2,320円で僅か3.1%しか上がっていない。チャートを見ての通り、2012年末から始まったアベノミクス相場での買いが回ってきて水準訂正した後、長期に渡り2,200円±400円程度の値動きを続けてきた。
逆にコロナショックのように市場全体が暴落している時でも落ち具合は小さかった。そのため、2020年2月末から3月初旬にかけて100株ずつ薄利売却(合計で税引前利益は約3万円)し、コロナショクで下げている銘柄の購入資金を捻出した。この時点で一旦バリュートラップから脱出したはずだった。
ところが、スーパーツール自身が売却後一週間で500円以上も下げたので、1,800円で100株だけ買い戻してしまった。スーパーツールの値動きだけを見ればうまく買い戻せているが、本来の狙い通り、もっと下げのきつい銘柄に回すべきだったと思う。
スーパーツールは昨年7月央から上限50,000株、2.44%、1億円、11月末までの市場買い付けの自社株買いを行った。発表後は好感された買が入って一段高となったものの、普段の出来高は非常は小さい銘柄なので、その後は底固くジリジリと上げていくだけだった。
自社株買いは、板情報を見ていると、前日の終値で少しだけ買い注文を出しておくような買い方に見えた。それでも9月には2,400円台に到達した。その頃も売ろうかと考えていたが、結局、売りそびれてしまった。
その後は2,000円割れまで下げていたが、4月27日に発表した前期決算と今期見通しが良かったので出直ってきた。22年3月期の連結経常利益は前期比25.5%増の6.1億円、23年3月期も前期比35.2%増の8.2億円に拡大する見通しだった。 今期年間配当は10円増配の70円の予定だ。
PBRや予想PERは相変わらず割安水準にあるが、私が最初に投資した頃の年間配当は90円に相当するので、当時の配当利回りには未だに戻っていない。今では当時よりも高配当株が増えたので、高配当株としての投資対象にはなり得ない。
また、昨年売り損ねていたこと、マネックスGの買戻し資金の穴埋めも必要だったことから、出直り途中であるが売ることに決めた。そして、5月13日に2,320円で売却し、バリュートラップから脱出した。
今回の売却で税引前利益は約5.1万円、コロナショック時の売却益と合わせれば税引前利益は8万円を超えた。株価は6年半で3.1%しか上がらなかったが、途中売却と買戻しが功を奏した訳だ。今回も暴落が利益をもたらしてくれたことになる。
個人大株主の存在
スーパーツールには創業家とは関係ない個人大株主がいる。大量保有報告書(5%ルールの開示)で名前が公表されているので書くが、重田光時氏だ。ネット検索すればすぐ分かるが、光通信会長兼CEOの重田康光氏の長男だ。
今年3月9日付の開示では保有割合は14.44%になっていた(四季報最新号では個人名では2.1%)。重田光時氏は鹿児島東インド会社、Hikari Investment BVI、スノーボールキャピタル等と共同で大量報告を出している。四季報の株主ではHSBC(シンガポール)等になっているようなので、ぱっと見分からないようだ。
出来高がゼロの日も結構あるスーパーツールでどうやって買い集めたのかはよく分からないが、先の大量保有報告書を見た限りでは小口で丁寧に拾っているように見えたので、買い上げるような買い方はしないのだろうと思った。
最近は出来高急増
売却した5月13日は1万株(10,900株)を超えていて、この株にしては出来高の大きい日が続いている。そして、午後になると少し大口の買が入りすっと上がったりする。昨日も12,200株の出来高で年初来高値を更新し、私が売った時よりも既に10%以上高くなった。
IRでは特別な情報はないが、何か隠れた上げ理由があるのかもしれない。いよいよ報われるタイミングだったのに売ってしまったのかな? 売った銘柄が上がるというのはよくあることなので、そういう場合は運が悪かったと思って素直に諦めるしかない。そして、次に行く。それが株式投資だ。
【2022.5.19夜追記】
元の記事は5月18日に書いていて、夜中の12時過ぎに投稿したが、5月19日の引け後、スーパーツールは第三者割当による新株式発行に関するお知らせを発表した。内容はトラスコ中山等に対して2,360円で281,774株の第三者割当を行うことによって約655百万円を資金調達し、3,200百万円を予定している物流倉庫の建替え及び工場の拡張の費用に充当するというものだった。
新株は発行済株式の約13.5%に相当し、その分だけ希薄化することになる。普通この手の増資があるときは発行決定まで株価が抑えらることが多いが、今回は逆に買い上げる動きが行われていたように見える。出来高急増・値上がりと無関係とは思えない。
資金の使い道は有効だと思うが、希薄化は間違いないし、工場を拡張したからと言って業績が伸びるとは限らない。したがって、今後の株価かどうなるにせよ、売ってしまってよかったと思っている。