私欲のない境地に （２００５年８月の自分史）

　　
お昼過ぎに連れ合いから電話がありました。

１ヶ月ぶりに聞く声でした～


元気をもらえる素晴らしい声の持ち主であることは分かりきったことなのですが、

昨日一日中うれしさが持続して昨夜は乾杯気分いっぱいでした～


アルコールに強い私だけど最近は血圧や体重などの関係で自重しているから、

久しぶりにうれしいお酒をいただけました～


彼は若いときの病歴のためにＣ型肝炎になってしまい、８年前くらいから年に４回くらい定期検査を受けていました。


「どうだった結果は？」

とよく訊ねていたものです。


「うん、お前からみたら最悪の数値が並んでいるけど、

主治医とは同じ数値で変化がないから良しとしようと話しているよ～」

と答えていました。


悪いなりに変化がないから、この調子で～というのです。


彼は仕事に拍車をかけてやりかけの仕事や新しい事業の実現などに粉骨砕身没頭して行きました。

仕事が趣味だと言って～


「先祖の守護神が憑いているから思い通りの道が開け最高を極めます！

６２歳の時に足の怪我に気をつけましょう～」


体のことや仕事のことで彼の卑弥呼として決めている霊能者に毎月１回は伺いを立てていました。

その頃のお告げでした。

大和には八百万の神がいて、信仰心の篤い人が多い土地柄です。


傍で見ている私には人の３倍ほど働いて休むことのない彼を見て、

最高に素晴らしい人生が開けるってなんだろう？と感じていたのでした。


ひょっとして　難病と１９歳の時から付き合い始めて気の休まることのなかった彼だから、

最高の境地とは、天国に行くことではないのか～？とさえ疑っていたのです。


６２歳で足の怪我に注意しなさいって言うことは、そこまで生きることなのかな～？と明るい気持ちになってみたり・・・


４年前に新会社を興し社長となり、長年勤めていた会社の副社長に３年前になり、数少ない人しか経験しないような

高いところで物を動かし考える立場に今はいるのです。


ゆっくりと定年を迎えて自分や周りを見ながら過ごす幸せを　私は説くのですが、彼には理解できないらしいのです。


現在は私を実家の母の親孝行に専念させてくれているから、

奈良の８人の家族の束ねや気配りを怠りなくしてくれています。


「きっとたいへんだろうなあ～

気の休まる時がまったくないじゃないの～」

と竹田にいてよく思い出しているのです。


「親孝行、したい時にも親がいるという　素晴らしく恵まれた運命をうんと愉しんでくださいよ～」

と息子は励ましてくれています。


「だけどなあ～」と申し訳なく連れ合いの苦労を思い、沈む日が多いのも事実。



「喜びはお前にも聞かせてやろうと思って～」といつも以上に弾んだ彼の声が耳に飛び込んできたのでした。


「定期検査の結果を今受け取ってきたんやけど、Ｃ型肝炎の数値が正常値に戻り消えていたんやで～

こんなことアリですかと医者にきいたけど、そうやなあと驚いていたんや～」


「へえ～

よかったわねえ～

過酷な中で心の休まる時がないだろうと案じていたけど、あなたの考える基本が最近特に

私欲を超越していると感じていたから、体に良い影響を与えていたのよねえ」

と　しみじみと物事を達観している彼の境地を思いやりながら　感想を述べました。


「おう、俺もうれしくなって、お前にも伝えておこうと思ってな～」


森○さんの気力に負けたよ～と２５年前の最悪の時に　医大の先生から言われたことがありました。


入院加療を強く勧めてくれるけど、彼は

「どこで倒れても本望。

子どもたちに強い父親だったということを示したいから仕事を取ります！」

と通院で切り抜けたのでした。


自分を捨てている人間の強さを見る思いでした～


大きな重荷を背負わされて気の毒な人だと見ていましたが、何回か生をあきらめねばと言う瀬戸際に

立たされた彼は　その都度天命をまっとうするのみ！という　私欲のない境地に上っていけたのでしょう～


私を自由に解放してくれたのも　そんな境地だからできたことなんだと　つくづく思い知らされたのでした～






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