腕を磨いて男を上げようと (2006-11-09 の自分史より)
新入生担任となりました。
次男が中学に入学した時で 私は40歳でした。
入学式後、自教室で担任の自己紹介を済ませて教科書配布を
している時に、取っ組み合いの喧嘩が始まりました。
教室の後ろには 保護者もいるのに、平気なのです。
親をはるかに超えている生徒がいるのだと感じました。
翌日『中学生になって』を書かせて見ると、
「人には力が必要だと思う。勉強の力もあるが 俺は腕の力をみがきたい。」
と ただそれだけの抱負を書いたのがMでした。
町工場を経営している父親で、いつも何かに怯えているような
気の弱さを感じさせる人で、母親が手伝いながら、
明るくてきぱきと切り盛りしているようでした。
年子の妹が優秀で 親は大阪の私学に中学から入れるのだと
兄のことにはまったく期待をしていません。
兄妹を比べて大きくしてきたようです。
勉強で妹に勝てないから、腕を磨いて男を上げようと
単純に思っているみたいです。
言葉どおりに 武者修行の毎日を想像し生活しているようでした。
別に弱いものいじめではなく、強い相手だと思うと
喧嘩を売るようです。
教師に暴力を振るったりはしません。
隣の中学の生徒を相手に 喧嘩をしてきて、謝りに生徒指導部の教師に
連れられていくことが度々でした。
もちろんクラスからは浮き上がり、誰も友達にはならず
相手にされていません。
孤独な毎日だったはずです。
家庭訪問で両親が信頼を寄せているのを肌で感じるのか、
Mも私には一目置いているのは良く分かりました。
2年になりクラス替えがあり 担任ではなくなったけど、
近所のKの家庭訪問の時に 良く立ち寄っていたのです。
あいかわらず、腕を磨くことに熱を入れているMでした。
クラスにはKと言う 小柄で瓢軽な弱い立場の男子生徒がいて、
いじめの対象になりやすく、その子を中心にした
学級経営をしていたのです。
目立つような荒れた生徒はいませんでした。
Kと話すときの先生の顔はとっても優しくって
大好き~と女子生徒が ふと言ってくれました。
クラスもKを中心にして よくまとまっていたのです。
外の非行の嵐は この学級には無関係で陽だまりのような
暖かさにあふれていました。
音楽の時間よくKが瓢軽なことをしゃべって みんなが笑うので、
教科担任はKがわざと授業妨害をしていると勘違いして、
こっぴどくネチネチと叱るそうなんです。
それが頭にくるということで、5時間目の音楽の時間、
教壇の上の時計がきっかり2時になったら、クラス全員で
抗議の行動に出ようと団結したようです。
一斉に40人が筆箱を床に落としたのですって!
結構大きな音になるようです・・
良いクラスだと思っていたのに、なんてひどいクラスでしょう~!と、
それはそれはカンカンにご立腹でした!
このクラスには授業に行きませんから!と
校長室に訴え出たそうです。
即学活に切り替えて、ことの仔細を生徒たちに聞き、
やり方を間違えると大変なことになると
話して聞かせました。
「K君はボーダーラインの知的障害を抱えているし、
みんなで支え合ってここまで団結しているのです。
やり方を間違えていることは教えましたので、決して妨害しようなんて
大それたことではありませんので、許してやってください~」
と頭を下げてきました。
でも、荒れた環境は まともな判断力を示すはずの真面目な8割の生徒までも
巻き込むのだと 切実な問題として感じました。
一部分の悪がきが 暴れているのではなく、
すべてが狂い始めてきているのです。
狭い教室に40人以上詰め込んで 潤いのない学校生活で
綺麗な心など育つはずがありません。
情操教育の必要性を痛感しました。
当時 校務分掌は文化部に所属していました。
生の演劇を文化祭で見せてやりたいと思いました。
東京の劇団が『走れメロス』を上演して 地方の学校の体育館で
公演活動をしていることを知りました。
素晴らしい物や綺麗な文化に触れることによって
人間の素晴らしさを教えてやりたいと願いました。
職員会議にかけましたが、予算がないということでした。
電気代を節約するために、教室の蛍光灯を半分取り外すほどの財政難でした。
私はポケットマネーを出してでも
本物を見せてやりたいのだと粘りました。
60万円の公演料でした。
50万円くらい出しても惜しくないと思っていました。
感動を味わわせてやりたい!
この荒れたときに友情や信頼で結ばれた人間の強さを
教えたいのです!と食い下がりました。
続きは明日~
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