わいるどぴっぐの猪突猛進

いつも疑問に思うことを書いていきます。

年齢制限がなくなるプロセス

2015-11-14 14:58:06 | 書評
「いつでもクビきり社会」
森戸英幸(文春新書)
http://www.amazon.co.jp/%E3%81%84%E3%81%A4%E3%81%A7%E3%82%82%E3%82%AF%E3%83%93%E5%88%87%E3%82%8A%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E2%80%95%E3%80%8C%E3%82%A8%E3%82%A4%E3%82%B8%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%80%8D%E3%81%AE%E7%BD%A0-%E6%96%87%E6%98%A5%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E6%A3%AE%E6%88%B8-%E8%8B%B1%E5%B9%B8/dp/416660693X

日本のシステムは年功序列を元にしている。その理由は、高度成長期に最高裁裁判所が解雇規制を採用したからですね。現在は労働契約法16条に引き継がれてます。
ではこの年功序列を廃止したらどうなるか。アメリカ、ヨーロッパの法制と比較して分析します。

エイジフリー先進国と言われるアメリカは、1967年に「雇用における年齢差別禁止法」(通称、年齢差別禁止法)が制定されています。採用、昇進・昇格、賃金決定解雇など雇用のあらゆる面における年齢に基づくあらゆる差別が禁止されます。EUでも2000年11月のEC指令78号が、雇用における年齢差別を禁止しています。ヨーロッパも大差ないようなので、アメリカを例にします。

年齢制限に大きく2つ存在します。
一つは、採用時の年齢制限。もう一つは、退社時の年齢制限です。

1、 アメリカの制度
(1)原則
アメリカの年齢差別禁止法は、40歳以の者を年齢が高いという理由で差別してはならないというルールです。もっともこれは連邦法なので、より厳しい制限を州ごとにすることもできます。例えば30歳以上とすることです。
(2)例外
ア、年齢がその事業の正常な運営に欠かせない真正な職業上の資格であること
イ、年齢以外の合理的理由のあること
ウ、真正な福利厚生制度の定めに基づく行為であること
エ、正当な理由による解雇であること

「年齢がその事業の正常な運営に欠かせない真正な職業上の資格であること」とは、この仕事をするには客観的に60歳未満でないと無理と言えることです。しかしこの例外は殆ど認められない。
「年齢以外の合理的理由のあること」とは、セクハラ等別の合理的な理由ですね。
「真正な福利厚生制度の定めに基づく行為であること」とは、例えば会社が従業員を生命保険に加入させ保険料を負担した時に、保険料が従業員の年齢に比例して高くなる場合です。1000ドルの出費で30歳の従業員は10万ドル保障の保険を購入できるが、60歳の従業員では7万5千ドルかもしれない。この少ない保険金しかもらえないとしても、差別にならない。
「正当な理由による解雇であること」とはその通りですね。非違行為等です。
これらは日本の基準よりも厳しいです。
(3)定年制に対する例外
ア、退職直前の2年間に真正な上級管理職または高度な意思決定権限をともなう地位にあった労働者については、年間4万4千ドル以上の退職給付をすること
イ、連邦公務員の一定の職員(航空管制官、消防士、警察、外交官等)
 ただしこれは実際に殆ど問題にならない。アメリカでは高い地位についた者ほど、早期退職してセカンドキャリアを求めるから。また消防士等は体力的問題があるからですね。
(4)年齢差別法の影響
 立法時は募集における差別を一番問題視していた。なぜなら当時の議会では、高齢者の失業率自体は若年層に比較して高いと言えないが、失業期間が長いからである。しかしその後、この考えは変わる。採用時に企業に問題があっても、そこで法的闘争をするよりも、次の企業を探した方が本人にとって効率的だからである。それに対して定年の側面では、社内での人間関係、貢献、思い入れなどあることから、問題になりやすい。そこで退職の場面において年齢差別禁止法が生きてきた。
 では、どんな理由で会社を辞めるのか。大きく3つ挙げられる。
 第1に、早々に引退して、セカンドキャリアを築くということ。
 第2に、仕事の厳しさがある。終身雇用を前提としないアメリカでは、業績評価が厳しい。さらに年齢によって評価基準が変わらないので、高齢者はそれだけ働くのが大変になる。
 第3に、企業年金制度の影響である。企業はある年齢で従業員が会社を辞めるのが一番有利なような制度を整えることで、引退を促している。例えば、公的な医療保険制度の開始年齢が65歳なので、いま辞めれば65歳まで会社で医療保険を持つよという具合である。
(5)まとめ
 年齢差別を禁止していることで、問題となるのは主に退社の部分。しかし政策的に若い人を入れたい側面はあることから、政策的に定年が設けられることも認められている。もっとも、アメリカの仕事に対する厳しさ、公的年金への橋渡し政策などによって、実質的に定年までに辞める人の方が多い。
 また、年齢差別がなくなると、年齢にかかわりなく評価基準が一律になるので、高齢者ほどシンドイ職場というのも生まれてくる。

2、日本の場合
 (1)原則
 2007年10月以降に施工された雇用対策法10条によって、基本的には採用時に年齢制限ができなくなっています。「バイト募集35歳まで」というのは違法です。
(2)例外
 雇用対策法施行規則1条の3にあります。
簡単に言うと、
1、 定年が60歳なので60歳の方
2、 例えば労基法で18歳未満が禁止さているようなもの
3、 正社員として長期雇用を前提として、さらに経験不問のときに新卒採用に限ること
4、 営業職に30代が殆どいないなど、会社のなかに偏りがある場合
といった感じです。(他もありますが、それは割愛)
参考:東京労働局
http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/hourei_seido_tetsuzuki/shokugyou_shoukai/20070925-kintou.html

http://www.akiyaku.or.jp/kyujin/seigen.pdf

3、まとめ
 日本の制度もまずは退社の場面における年齢制限がなくなり、その後に入社の面について年齢差別の問題がなくなるだろうとのこと。
 しかし日本の場合は会社とは別に年齢によって言葉を使い分ける問題があり、そこを会社の中でどうするかが出てくるという。年齢は上だけど役職が下とかいうことですね。
 私は前から思うのですが、敬語を廃止すればいいと思います。みんな丁寧語で話せば、そんなの簡単にクリアできるからです。
 また終身雇用を前提としたからこそ新卒採用がありますが、それは今後は無駄になると思います。すでに就職氷河期で就職できなかった40代、引きこもりから復帰できない人など沢山いて、現状の判例をもとにすると生活保護を一斉に今後請求することになる。
 となると採用の段階で新卒を企業がやめ、まず雇ってみて、そこで割と高めの給与を与えて、その代わりに試用期間で厳格な判断とした方が最高裁の判例にも抵触しない。
 採用活動にしても、周りと同じやり方をすればいいとう時代は終わったと僕は思います。