「息子が百名山を全部登りたいって言い出してさあ」
と、お子さんの自慢話に花を咲かせていた上司の口から出た“百名山”という言葉が、ふとひっかかった。
全然知らないのである。毎年、遭難や雪崩や噴火のニュースは耳にするが、それがどこにあり、どういう山で、ということに従来興味を抱いていなかった。
トレイルランニングを始めて、低山を走るようになったが、本格的な登山の山には目を向けるに至っていなかった。
しかしトレイルランニングで山という世界を知って、世界観が広がっていき、ワクワクするものを感じ始めていた。まだ少数派だが、トレイルランニングの身軽さと、宿泊しつつの縦走を兼備したジャンルも開拓されてきて、たまに登山用品店でテントなんかを見ていた矢先だったのだ、“百名山”の話を聞いたのは。
同時期、偶然に深田久弥作品を初めて手にし、著者について調べるうち『日本百名山』を知った。
無知を恥じてというのもあるが、純粋に山のことをもっと知りたいと思って手にした。ガイドブックを手にする前に、選んだ人の原文を通読すべきだろうと思った。
で、感想だが、私の身の回りに、山に登る人といえば、トレイルランナーや山菜採りくらいしかいなかったので、ホントの登山家の山への偏愛ぶりに当初は面食らった。ついていけねえやと思いつつ、東北や関東の知っている山だけは興味深く読んだが、日本アルプスあたりに集中する数十の山を読み通すのは、いささか飽きそうであった。
ところが、著者の温度が伝わってきたのか、だんだんと面白くなっていった。『天声人語』みたいに、短く限定された分量の中で歯切れ良くまとめられていて、なかなか名文だなと思うものも少なくなかった。
とりあえずは赤城山や雲取山に登ってみたいと思う。
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