『五分後の世界』は、いまから20年前、一緒に研修を受けていた同期生から勧められて読んだ。最後の場面が強く印象に残っている。読んだときの、環境も影響していたのかもしれない(ある意味で、世間から隔絶した、五分後の世界みたいな3ヶ月間の研修だったのだ)。
という経緯があった上、パンデミックを扱った作品ということで、期待を膨らませ過ぎたかもしれない。
悪くはなかった。小難しいウイルスのウンチクが多くて辟易しそうになりながらも、退屈せず読ませる筆力に引っ張られた。
ただ、劇画風の読み物っぽさに終始惑わされた。CNNの女性記者の視点で描かれるのだが、ハリウッド映画を活字で読んでいる風なのだ。こんな劇画を活字だけで描けてしまうことには感心せざるを得ないわけだが。
読む側の環境もまた、受けとる印象に影響を与える。20年前は、『五分後の世界』に同調してしまう中にあった。『五分後の世界Ⅱ』は、九州でのパンデミックが世界に拡大していくところでエピローグを迎える。その点、現実世界はポスト・パンデミックとなりつつあり、作品の凄みや象徴するものが霞んでしまったようにも感じる。
悪い意味で、私は麻痺してしまっているのかもしれない。
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