随分と前に、シリーズ第1作の『兵士に聞け』は読んだ。
面白かったが、隊員らの微妙な演技に気づいてない著者の書きっぷりが、歯がゆかった。
久々に手にして、期待が膨らんだ。海自の密着取材という。陸と違って実戦のワッチに就く彼らのルポなら、読み応えがあると思った。
第1作から感じた歯がゆさは、やはり変わらない。著者は自分がお客さんとして迎えられ、決して普段通りの姿を見させてもらってないとは気づかないのだろうか。気づいていながら、敢えて気づかないふりをしているのだろうか。
背伸びをし、やせ我慢している隊員を、等身大の隊員のように描く筆致は、誇張も加わって、ときどき鼻をつまみたくなる。ルポくさくなるというか、作品化されているのが如実に見えてしまうところもあって、読むのが怠くなることもあったのが正直な感想だ。
エピソードごとにオチがあって、感心させられる名ルポもある一方、だらだらと引き延ばされたような物語も少なからずで、私としてはめずらしく読みあぐねるほどだった。
きっと『兵士を聞け』で名が知られたぶん、隊員も自衛隊の広報も、身構えたろう。自然な接し方はできないのは当然だ。書かれる、世に出ると思えば、普段通りにはいかない。
著者はそのことを少しは考慮し、場合によっては「」に入れるような解釈をしてみてほしかった。
一般の社会の目に触れない世界だからこそ、そういう部分を知らぬふりで済まそうとしたのだとしたら、ずるい書き手だ。気づかなかったのなら、間抜けとしかいいようがない。
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