新聞の書評でアドラーの名を初めて知り、Amazonで検索したら本書が入門用として評判が良かったので買ってみた。
参考になったが、コンビニ本の水準まで噛み砕かれていて、ちょっと拍子抜けしてしまった。アドラーの“心理学入門”というよりは、アドラー心理学を援用した自己啓発書である。噛み砕かれ過ぎて著者の解釈なんだか一般的学説なんだかアドラー本人の言なんだかわからず、少しでも学術的要素を期待して読んだらガッカリしてしまうだろう。
というわけで自己啓発書に過ぎないのだと割り切れば、汲むべき、参考になる部分は少なくなかったので備忘録的に抜粋しておく。
『アドラーはまず罰したり叱ったりすることを否定します。また、子どもに恥をかかせたり、面目を失わせたりすることで行動を改善するよう影響を及ぼすことができるとは決して信じてはならない、罰すること、説教することでは何も得ることはできない、といっています(中略)罰せられると自分には能力がない、と思うようになり、子どもが学校や家庭には居場所がないという気持ちを強くすることから、ひいてはこの世界には自分の居場所がない、と感じるようになり、人々は私の仲間ではない、自分の敵である、と感じるようになるでしょう。』
『そこで不適切な行動には注目しない一方で、適切な行動に注目します。そうすることによって、やがて不適切な行動は減っていきます。適切な行動をすることで注目されるのであれば、ことさらに不適切な行動をしてまで注目されようとする必要はないからです。』
『ほめるのとは違って、すなわち、評価するのではなく、喜びを共有すること、自分の気持ちを伝えることは勇気づけになります。当たり前だと思って見逃しがちな行為に対して「ありがとう」とか、「うれしい」とか「助かった」といってみます』
『頼まれもしないのに、手出しや口出しをすると、苦境にあるときにはいつでも親が助けてくれると考えて子どもは依存的になってしまうかもしれません。そうなると、自分には能力があるとは思えないようになるかもしれません(中略)以上なような自然の結末の他に、たとえば、宿題をしない子どもに声をかけずに学校での社会的な結末を体験してもらうこともあります』
『アドラー心理学では、縦の人間関係は精神的な健康を損なうもっとも大きな要因である、と考え、横の対人関係を築くことを提唱します。ほめることに対して勇気づけは「横の関係」を前提とするのであり、横の関係のときだけ勇気づけることがてきる、ということができます』
『今日、価値観が多様化している中にあって共同体を想定することの危険性も明らかになってきました。(中略)社会通念の押しつけ、協力の名のもとに強制、統制がなされる危険があることに絶えず敏感になっていなければならないでしょう。貢献や信頼を強制することはファシズム以外の何ものでもない、と私は考えています』
『自分は他の人の期待を満たすために生きているのではないという権利を認めるのであれば、他の人にもそれと同じ権利を認めなければなりません』
『察しと思いやりはこのようにうまくいかないときの危険があまりに大きいので勧めることができません』
と抜いてみると、ほとんど育児にまつわる自己啓発書であって、これなら気楽に読めて一般の読者にはちょうどいいのかもしれない。
まあ通勤退勤の電車で紐解くには良かったが、出版社またはそのシリーズの読者対象も見極めて買い物せねばなるまい。通販の難しさではある。
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