よい子の読書感想文 

読書感想文298

『語ろうシャア!』(斎藤秀夫 谷田俊太郎編 カンゼン)

 最近、アマゾンでウィンドショッピングをよくする。本屋で現物を前にどきどきする宝探しのような面白みはないが、検索するだけで全国に散らばる多くの書籍がヒットしてしまうので、これはこれで楽しい。しかも出品者が値下げ競争してしまう場合があって、買い手にはありがたいのである。
 戯れに“シャア”で検索していたら見つけた。しかも1円。つまり送料のみ。息抜きにいいかもなと、買ってみた。
 声優や監督、デザイナーにゲームプロデューサー、分野はさまざまだが、仕事でガンダムに関わった8人との対談集である。帯にも書いてあるが、いわば“シャア専用トーク集”だ。
 こんな本が出るだけ、シャアは人気があるのであり、それを見つけて買った私も、ガンダムといえばシャア抜きには語れない輩の一人なのである。
 読んでみて、“シャア”に過剰な期待をするからだろう、対談形式のだるさにやや残念な感じがしたが、それぞれのシャア像があって面白いなと思った。
 本書にはシャア語録だけでなく、生みの親である富野由悠季監督の『発言集』というのも収録されていて、その中の『逆襲のシャア』に関する発言には深く感じ入るものがあった。以下、引用。
《今度の映画はシャアと決別する為の「ガンダム」でもあるからなんです。シャアのファンの方にはショッキングな言い方かもしれませんが、つまりこういうことです。
 もうそろそろ初恋は終わりにしましょうよ、と。》
 格好良かったはずのシャアが、『逆襲のシャア』ではひどく格好悪いのはファンの間での定説であるが、作り手にそんな隠れたメッセージがあったとは、驚きつつ、妙に納得もしてしまった。
 とはいえ本書じたいはシャアの人気に寄りかかって成り立っているものであり、1円まで下がるのも故なきことではなかったのかもしれない。けれど帯にあるように、“ガンダムが通常の3倍面白くなる”かどうかは別として、また『ファースト』から『逆シャア』までを観直したい気持ちにさせてくれたのは確かだ。
 ちょうどいま、私も『逆シャア』のときのシャアと同じくらい年齢になったわけで、決別すべきあれこれは、たぶん少なくないはずなのである……



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