よい子の読書感想文 

読書感想文559

『怒らない子育て』(武田双雲 主婦と生活社)

 人前で読むことが憚られた。一目でわかってしまうだろうからだ。『この人は、子どもに怒ってばかりいて、そのことを悩んでいるのだな』と。
 図星である。悩んでいたのだ。藁をもつかむ気で、何かの足しにはなるはずと思って購入した。人の悩みにつけこんで、なんとも商売上手なもんだなと、読みながら半ば呆れ、半ば感心した。
 半ば呆れ、という通り、買って良かったかどうかと問われれば、やや疑問の残る内容だった。『怒らない子育て』が、児童心理学や統計学などを駆使して納得づくで読ませるものなら良かったかのだが、実際は書家・武田双雲による主観的な意見を元にした自己啓発書なのだった。
 汲むべき部分はあった。でも繰り返すが、私は自己啓発書を、常に斜に構えてしか手にしない。そのほとんどは『あなたが幸せだと思えば幸せなのです』式の、解釈を変えよという話なのだ。19世紀にマルクスが笑い飛ばした論理がそのまま再利用され続けているのである。
 とはいえ参考になりそうな部分はあったので、備忘録的に抜粋しておく。

【親の言う通りにする子はとっても危険です】
『怒られたときの感想は、「怒られて嫌だ」しかありません。怒られたから、心から反省して、さあ、やろうと思う子どもがいるでしょうか。(中略)親の言うことをすべて聞いて、怒られたからちゃんとやろう、っていう子がいたとしたら危険です。そういう子どもは、怒られないように生きるクセがつくでしょう。』

【「いえばわかる」そんな幻想を手放そう】
『投げた言葉に、即効性は無いってことにまず気がついて、人を口で動かそうとしないことです。(中略)伝わらなくて当然というところから始めると、気分的にラクになりませんか?』

【キャッチボールの準備 子どもは出来ている?】
『ただでさえ言葉は伝わりづらいもの。伝えようと思ったら、大切なのは、まずは相手にグローブを構えてもらうこと。相手のミットがこちらに向いて開くような状況を作るところから始めることです。』

【叱るときは短く 日頃の関係性が大事】
『「あなたは」を主語にして始めると相手を非難したり否定したりしがちなので、「私は」を主語にして、「私は~こう思う」「私は~してほしい」と「I」で伝えるわけです。』

【イライラ解消(初級)「不安」を書き出す】
『あなたがイライラしていることの後ろには、不安があります。それは何でしょう。紙かノートを用意して、感じている不安を書き出してみましょう。(中略)書き出された不安をもう一度見ながら、解決できそうなものに赤ペンで○をつけてみましょう。どうですか? 解決できそうだなと思ったことは、すでに不安じゃなくなっているはずです。(中略)
 それでもまだいくつか残ります。そこに残った不安を3つに分けていきます。
「今すぐに本当に解決したいもの」
「人に任せれば解決できるもの」
「今、解決できなくてもいいもの」
 その中で、あなたが解決しなければならないのは、「今すぐに解決したいもの」だけです。不安がずいぶん減って、絞り込まれてきましたよね。そうなると、あなたがこれからやるべきことが見えてきます。(中略)
 このとき、解決方法として、自分で「何かをやめる」とか、子どもに「何かをやめさせる」というのはちょっと難しい。(中略)それよりも、何か新しいことを始めるという方向で、解決法を考えてみましょう。(中略)さらにお勧めしたいのは、それを書き出して、よく見える場所に貼っておくことです。イメージを言葉にして、書き出す。書いたものを貼って何度も見る。
 書くということは、言葉の力を最大限に引き出す方法。』

【「子育て感のズレ」はコミュニケーションのチャンス】
『ズレに気がつくと、僕は、「コミュニケーションでズレを修正するチャンスだっ!」と思います。ピンチこそチャンスです。夫婦仲が良くなるとか、さらに新しいライフスタイルを手に入れる扉です。』

【意見が違うときこそ新しい発想が生まれる】
『最初はお互いにカッとするけど、企業でいえば、お客様相談窓口でクレームを聞くのと同じことです。クレームは、商品改善のヒントが眠る宝物。
 全部を「受けて言いなりになる」のではなくて、とりあえず「並べる」。そこから、何か打つ手を考える。それができると、話し合いも破綻はしないし、新たな良い関係ができていく。』

【「理想の子育て」といって思い浮かぶキーワードは?】
『子育ての中では、「信頼」や「笑顔」はもちろん、ほかにも大事なことってたくさんあるけれど、その中でも、私はこれだけは守りたいというものを、まず一つ自分で決めておくと、子育てに芯ができます。』

【未来の心配はやめて今を応援しよう!】
『「心配」に、「り」をつけると、「心配り」となります。
 心を配れるようになると、不思議と、良質な心配に変わっていくのです。』

 と、付箋紙をけっこう貼っていた。やはり私も親バカなのであろう。こうしてみると、私は自分の不安もマネジメントできていなかったし、子育てに芯もなく、心配りもできていなかった。相手にキャッチボールの準備をさせる努力もしていなかった。反省せねばなるまい。

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