新書の¥100コーナーで見つけた。2008年発行で、それほど時事的な内容でもなさそうなので、これはめっけものと手にとった。以前、岩波新書で『スェーデンの挑戦』というのを読んだことがあり、そういえばフィンランドはどうなんだろう? と読み比べたくもなった。
お堅い内容と思いきや、エッセイ風で、気軽に読めた。『スェーデンの挑戦』みたいに政治・経済を論じてはくれないが、広く浅くフィンランドを紹介してくれる。コミュニケーションを専攻したという著者ゆえか、文章は淡々としながらもウィットを欠かさず、最後まで面白く読めた。
新書には、雑文・雑学よりは、やや学術書に近い内容を期待している私だが、この本に関しては不満を感じなかった。フィンランドの善し悪しが著者の体験をもとに語られ、ちょっと真面目なガイドブックといった体裁であるが、これはこれでいい。おそらくフィンランドの福祉政策や子どもの高い学力について専門に触れたものは他にあろう(本書でもある程度は述べられている)。
私はもともと北欧の社会主義的政策に興味とシンパシーを持っていたが、本書によって、俄然フィンランドが好きになりそうだ。国民性は日本だと東北人に似ている。著者はフィンランド人の飲酒好きが(その弾け方が)嫌いと書いていたが、普段の無口とのギャップ、まさに秋田県人を彷彿とさせる。
また合理的で成熟した個人主義、暗いとさえ言われる朴訥としてダイレクトな会話法。お喋りを好まないというのも、なんだか親近感を持たされた。難解だというがフィンランド語に興味を持ったし、海外旅行するならここだなーと思った(本書の紹介で初めて知ったが、距離的にいちばん近いヨーロッパでもある)。
先日、日本の相対的貧困、就中、子どもの貧困を扱った本を読んだだけに、フィンランドの“豊かさ”は、わが国にとって痛いくらいの示唆になるだろうと感じた。読んでいて移住したいとさえ思ったくらいなのである。
