原爆以降の日々を描く短編と、童話六編を含む二十一編。
中でも『鎮魂歌』は、『心願の国』と並んで、原民喜の最後の燃焼を思わせる。
優しく、透明な文体が、特異な作風を醸し出す原民喜だが、しかし『鎮魂歌』においては、その嘆きと祈りが、たたみかけるような勢いでほとばしり、結晶していく。激しく、なのに静けさに満ちて。
妻の死という“一つの嘆き”と、原爆による“無数の嘆き”。生き残ってもなお、生を圧迫していく苦悩。
原民喜は、『鎮魂歌』によってそれらの嘆きと一体化し、苦悩を昇華し、『心願の国』に至って、かすかな救いを、まどろみを、得たのだったろうか。
これからも私は、ふと星を見上げるようにして、この人の書いたものを、ひもとくだろう。
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