何年ぶりに読むのだろうかと紐解いてみると、案外新しい既視感があって、当ブログで確認したら、5年前に岩波文庫版のを読んでいた。
岩波、新潮、角川等、出版社毎で微妙に収録作品が違うために、こうして重複して買ってしまうことが、たまにある。
今回は芥川龍之介の才能や文学的素養といったものに驚かされながら読み進んだ。巻末の註は、さながら辞典のようであり、作品を通読するだけで勉強になってしまう。こういった細部にわたる古典世界の描写が、これら王朝ものに風雅な香りを付加し、話の筋をどうこう言う前に、その文章のみで読者は平安京にトリップするような不思議な快感が得られる。
材に拠りきらない、材に寄りかからない、もはや材を駆使し、凌駕さえしているのである。
個人的には最晩年のものが好きだが、全作品を通読してみたくなった。どういった変遷を経て、天才は死へ向かっていったのか。そこに近代文学を理解するひとつのヒントがありそうな気がする。『藪の中』を読む度、何かを掴めそうな予感がするのだが、それは芥川龍之介の周縁を触るだけのようでもある。
相剋、摩擦、或いは矛盾。そういったものを一身に受けてしまったのか。収録作の幾つかは、著者の顛末を予言している気もするのである。
