よい子の読書感想文 

読書感想文363

『禁煙セラピー』(アレン・カー 阪本章子訳 KKロングセラーズ)

 読むのは三度目。つまり二度も禁煙に失敗したわけで、この本を手にとると情けなさに打ちひしがれそうになる。
 最初は人に借りて読み、禁煙は1ヶ月できた。当時は長期の出張中で、ただでさえ引っ込み思案な私は、周囲の喫煙者と会話する数少ない機会を失して、禁煙のストレスと孤独感で二重に苦しんでまた吸ってしまった。喫煙者の多い職場のため、喫煙所での雑談は一種のコミュニティーになっていて、そこに加わりたいというのが、喫煙を正当化する強力な言い訳になってしまったのだ。
 二度目は二年前の年度末。タバコが値上がりするというし、咳もひどいし、そろそろ止めようと思い、3月31日を最後に禁煙すべく、この本を買って、漸進的に煙草を絶っていった。急に止めるのでなく、カートン買いを止め、次に買いだめを止めて一個ずつ買うようにした。その一個が切れたら、試験的な禁煙を繰り返した。こうしてニコチンの切れたときの自分を何度も観察して、また本書のアドバイスも取り入れて、年度末の禁煙に成功したのだった。
 二ヶ月くらいは、喫煙する夢を見たりと、精神的依存の強さに悩まされたが、もう欲しいとは思わなかった。体力も向上したし、冷え症も改善した。良いこと尽くしだった。震災の起こるまでは。
 被災地で救援活動をした。狭いテントに六人で生活。私以外の五人が喫煙者だった。これは意志の強さ弱さで評価できる話ではないような気もする。被災地の匂いや、風呂に入れない自分らの匂いを紛らわしたかった。酒も飲めない夜、闇に明滅する煙草だけが気分の転換になる気がした。私は隣に寝ている後輩から『わかば』を売ってもらった。それから一年、私は喫煙者に戻ったままだ。
 一年を機に止めようと思って再びひもといた。本書の内容は、精神的依存からの脱却に主眼が置かれており、喫煙が世間や煙草会社の洗脳にもたらされているのに対して、本書は逆洗脳でそれを排除しようとする。自らをその逆洗脳に染まるよう仕向けていかないと、『読むだけで絶対やめられる』とは思えない。マスコミの洗脳にたやすく染まる単純な人々が対象なら、かなり強力な禁煙効果が得られるだろうが。
 しかし私は私の意志と経験と、この本の力を合わせて、また非喫煙者に戻りたいと思う。



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