よい子の読書感想文 

読書感想文364

『春の小川でフナを釣る』(大穂耕一郎 まつやま書房)

 アマゾンで真鮒釣りの本を検索して見つけた。釣りのハウツー本でなく、“田んぼと用水路と魚たちの今”と銘打った副題に示されるように、フナを取り巻く環境を危惧した問題意識から書かれたものだ。それは私自身、真鮒を釣る場所の少なさには苦労してきたから、切実に同感できる話である。
 というわけで、面白く興味深く読めた。最近は渓流以外の淡水魚はキャッチ&リリースばかりで、料理に言及するのが少ないが、著者は鮒の味に執着していて、自ら料理する。正統派の真鮒釣りだと思う。私もそうありたいので、そのへんの姿勢にも同感できた。
 しかし在来の淡水魚を愛するあまり、外来魚や農薬にはヒステリックに反応している。ちょっと滑稽なくらいである。バスやブルーギルを釣った場合は、『足で踏んで殲滅』し、『岸辺の草の肥やしになってもらう』という。食べればいいではないかと思うのだが(調理法によってはバスもブルもおいしくなるらしい)、『嫌いな魚を自分の体の中に入れるのは、精神衛生上好ましいことではない』のだそうだ。
 非常に熱心な人で、琵琶湖や茨城県まで外来魚の駆除作業に参加するため出かけていく。その様子も本文にある。農薬や田んぼのことも勉強して、除草剤を激しく非難する。
 面白かったし、同感できるが、あまりに原理主義的に真っ直ぐ過ぎて、少し不安になった。著者は小学校の先生なのである。自分の論理を聖典みたく絶対的に言って語る教師の幾人かを、私は小中学校で見てきた。生徒にとって教師は大きな存在だ。権力者であるし、子どもにとっては無謬の大人である。
 バスやヘラブナ釣りがスポーツ的に市民権を得ているのに対して、確かに真鮒を取り巻くあれこれは、ヒステリックに叫びたくもなるような体たらくなのではあるが……。
 ちなみに本書のおかげで、この春の釣行プランに良き参考を得た。漢字の変換ミスなどは残念だったが、素人っぽいイラストは、かえって真鮒釣りの雰囲気に合ってて良かった。また、著者の出身大学は私の生まれ故郷にあり、そこでの釣りの話も出てきて、懐かしくなった。私も同じ水系で真鮒釣りをしていたのである。地元でまた釣りをしたくなった。真鮒釣りというのは、郷愁を誘うもののようだ。

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