今まで北朝鮮の楽曲について何度か取り上げてきましたが、今回は北朝鮮と同じ分断された社会主義国家であった東ドイツの国民的アイドルについて取り上げたいと思います。
東ドイツでもロックは他の資本主義国同様に禁止されており、裏でビートルズのレコードが流通してこっそり聴いていた人もいたとか言われています。
ただし実は軽音楽自体は「ダンス音楽」として認められてたため、普通に数多くの色々なアーティストがいますし、北朝鮮のように国営の限られた楽団以外にアーティストが存在しない…という訳ではありません。
70年代から80年代にかけて、地元からプーディスやカラット、シティといったオストロック(オストはドイツ語で東、つまり東ロック) のグループが登場し、東西ドイツの両側で人気があったと言われている程ですし…
体制批判こそもちろんNGとは言え曲の雰囲気もガチガチの共産臭がする訳でも無く、やはり同じ分断国家でも北朝鮮程に厳しくはなかったようです。むしろ東欧の国では鎖国を行ったアルバニアとか、あるいはその北朝鮮を真似しようとしたルーマニアの方が厳しかったかと…
まあ、北朝鮮は宗教じみた狂信的なレベルの個人崇拝していますけど、東ドイツは初代書記長のウルブリヒトの方針もあって個人崇拝は無かったですしね…
とは言え、日常生活は秘密警察のシュタージによって監視され、3人集まれば1人はシュタージの協力者…と言われた程の密告社会で息苦しかったとは思われますが…
そんな東ドイツにおいて、60年代に国民的アイドルであったイナ・マーテル(Ina Martell)を取り上げていきたいと思います。なお()内にある曲名の日本語訳についてはGoogle翻訳にかけた結果を載せています。
上記の動画は東ドイツでのアイドルの動画集ですが、この動画において、1分38秒から4分42秒までは先ほどのイナ・マーテルの楽曲です。
動画内では「Zwei Küsse beim Nachhausegehn」(帰り道での2人のキス)、「Down Town」(都心)、 「Liebe kann man nicht erzwingen」(愛を強制できない)、Der schönste Tag(一番美しい日)の3曲が取り上げられています。
他に動画内で取り上げられているアーティストについても今後追記や別記事の形で触れていきたいと思います。
イナ・マーテルはナチス時代末期の1944年1月27日に首都ベルリンで生まれました。21歳の時に先ほどの動画内にある「Down Town」という曲でデビューしています。社会主義国なのに英語のタイトルOKだったんですね…実はアメリカやイギリスをそこまで敵視してなかった…?
検索候補にも上の方に「ina martell heute」と出てきますが、「heute」というのはドイツ語で今日・今という意味ですので、恐ら日本で「○○○○(人名) 現在」と調べるのと同様、この人の名前を検索する場合は今あの人は何している?という目的で調べてる人が多いんだと思われます。
という程ですので、デビュー当時にベルリンの国営ラジオ局で銀賞を受賞しヒットした方であるにも関わらず最後のシングルを出した1971年以降の消息は不明です……
やはり社会主義国だからでしょうか…でも他の動画内にいるアーティストはちゃんと近況わかっている人いるんですよね…60年代一番ヒットしたのはこの人らしいのですが…それにしてもMVが白黒の映像だらけなのが時代を感じさせます…
1965年の「Wenn du Hochzeit hast」(結婚式になったら)という曲です。こちらは華々しい雰囲気の曲で、恐らく結婚式を祝う曲なのでしょう。どうやらHochzeitというのがドイツ語で結婚式という意味らしいです…やはりドイツ語は言葉の響きが固い感じ…
1966年の「Er ist wieder」(彼が帰ってきた)という曲です。
彼女の最大のヒットソングは、やはりこの1967年に発表された「Zwei Küsse beim Nachhausegehn」(帰り道での2人のキス)という曲です。名前で検索しようとした時にもこの曲が真っ先に検索候補に上がってきた程です。またMVの映像がカラーになりました。
ドイツ語はわかりませんが男女のイラストが描かれていてラブソングなのがわかりますね。
1968年の「Wann Kommt Der Tag」(その日はいつ来るのだろうか)という曲で、歌詞はわからなくともメロディはタイトル通りの物悲しさは感じさせる雰囲気で、いい感じのバラードソングですね…
また1970年には同じ東ドイツにおけるヒットシンガーのマイケル・ハンセンとのデュエットソング、「Der zug fahrt ab」(列車が出発していく)という曲を発表しています。他にこの2人のデュエットでは「The First Dance」という曲もあったそうです。
マイケル・ハンセンは1940年にドイツ北東部のメクレンブルク=フォアポンメルン州ロストック郡ギュストロー(戦後は東ドイツ領)の出身で、本名はクラウス・シビルスキーと言います。
造船所での勤務を経て1966年に歌手デビューを果たし、60年代~70年代に東ドイツでポップシンガーとして活躍した後に、80年代はハンセンは東ドイツの国営エンターテイメント芸術委員会の委員長にまでなりました。
東西ドイツ統一後はレコーディングスタジオの運営や環境保護団体での活動、音楽フェスティバルの開催などを行っているそうで、現在でも音楽監督、作曲家、講師として活躍されているそうです。
彼の最大のヒット曲がこの「Wer hat sie gesehn」(誰が彼女を見た)という曲です。1969年の曲だそうで、やはり西側の曲と比べても見劣りはしないクオリティだと思います。
若い頃の姿中々イケメンですね……
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