動画解説?の2回目、行きたいと思います。なお動画リンク中心となるのでご注意ください。
今回取り上げるのは世界でいちばんダサいシリーズでお馴染みの、あの曲です。
BGMを変えられるMADが多く、白いニットを着て、真っ赤なパンツを履いたダサい衣装を着て謎の踊りをするバックダンサーが特徴ですw 一応男女2人組のデュオが歌ってます。
このPV、BGMを変えられることが多いため元ネタの曲がどんなものか知らない人も割といるような気がしますが、実際は結構渋めのムード歌謡のような曲だったりするんですw それに曲の中身は結構普通なラブソングだったりします。
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見ての通りのダサさで、狙いがとにかく分かりません…
ちょっと映像が古臭い感じですし、そもそも曲自体昭和歌謡みたいな渋いメロディですが、実際に1978年に発表されたフィンランドのArmi and Dannyというデュオによる「I Want To Love You Tender」という曲です。つまり40年以上の前の曲になるわけです。 ニコニコ動画で流行り始めた2007~2008年頃でも既に30年以上前になる訳ですし、よくそんな昔の遠い異国の洋楽のPVを見つけてこれたな…とは思いますw
フィンランドは北欧ですから遠いですし馴染みが薄い国ではありますよね…直行便は出ているみたいですが… 一般的に有名な物としてはサンタクロースとムーミン、マズいことで知られるお菓子のサルミアッキ、ハリセンボン春菜による「ハロネン大統領じゃねぇよ!」のネタぐらいでしょうかw
ちなみにタイトルの「I Want To Love You Tender 」というのは日本語に訳すと「私はあなたを優しく愛したい」といったところです。ちなみにこれはあくまで英語版でのタイトルであり、フィンランドのアーティストであるからには勿論フィンランド語版も存在し、こちらでは「Tahdon olla sulle hella 」というタイトルになります。読めねぇ… このフィンランド語版については後述します。
歌っているアーティストのArmi and Danny(フィンランド語ではArmi Ja Dannyとなるようです)というのは女のアーミ・アーヴィッコ(Armi・アーミ)と男のイルッカ・リプサネン(Danny・ダニー)の2人によるデュオユニットで、あのダサいダンサーの衣装のD&Aというのもこれに由来します。女の方は普通に本名からとっているのに対し、男の方は全く無関係なダニーという名前をつけていますw ダニーは76歳で今もご存命で尚且つ現役のアーティストですが、アーミは2002年に43歳の若さで亡くなってしまっています。
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ライブかテレビ番組で歌ったと思われる映像です。
1977年に結成し、コンビを組んでからは初となるデビュー曲がこの曲でした。当初はフィンランド語版の「Tahdon olla sulle hella」のみがシングルとして先に発売されました。例のダサいPVは英語版のためこの時はまだ存在しませんでした。 同じ年にPain seinaa、Kaiken sulle antaisinというシングルを出した後、翌1978年に1stアルバム、「Danny & Armi」(何故か2人の順番が逆になってます)を発売しました。 このアルバムは基本的には英語版となっており、ダサいPVもこの時に発表されました。
その後同年に新曲としてMe vainと Silloin vasta kaiken saanを発表しました。最初の数年はそれまでのソロ活動の時より派手過ぎる衣装や曲に批判も少なくなかったようです。 1981年にはmeri tanaan rauhatonとVain kaksi nauhaaという新曲を発表し、翌1982年には「Tahdon olla sulle hella」をラテン風にアレンジしたバージョンを発表しました。
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アレンジバージョンのライブでの映像です。
1983年頃の写真
80年代後半には大規模なショーやツアーよりも、サプライズとして小さなレストランやピザ屋でライブすることが多かったとwikiなどには書かれていました。しかしこの頃から双方共にソロでの活動も目立つようになっていきます。
90年代に入るとコンビとしての活動は減少し、アーミのアルコール依存症の悪化を理由に1995年をもってコンビを解消してしまいました。
この2人のメンバーについて詳しく触れていきたいと思います。
・アーミ・アーヴィッコ(Armi Aavikko/アーミ・1958年9月1日~2002年1月2日)
1958年に首都ヘルシンキで生まれ、19歳だった1977年には9人の候補を破ってミス・フィンランドにも選ばれ、これに目をつけたダニーによって同年にArmi and Dannyを結成します。あのPVで姿だけ見れば普通にお綺麗な方ですよね…
またソロでも活躍しており、1981年にはカバー曲ですが「Japanese boy」という日本人男性について歌った曲まで出しています。
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これがその曲の動画で上がアーミが歌った方のPV、下がカバー元でテレビ番組?での映像です。PVの方はあのダサいPVから4年経ちだいぶ洗練されたものになってますね。下のテレビ番組での映像は和風?に見せたものとなっています。しかし、いかにも外国人から見た日本…って感じがしますね…日本人の目線から見ると…
ググってみて出てきた歌詞を見る限りTokio(普通に東京のことで決して5人のメンバーのうちの1人がやらかしたアレではないw)というのも入っているみたいですね。 そしてこれはスコットランドのAnekaという歌手が同じ年に歌ったものをカバーしたものです。結構ヒットした曲のようで近年になっても中国のアーティストにカバーされています。
1989年時点での写真。
2002年、エスポーにてアルコール依存症に起因する肺炎のため43歳の若さで亡くなってしまいました。 エスポーはヘルシンキに隣接している港町で、日本で言うなら横浜のような都市です。携帯電話で有名なノキアの本社もあります。 またこの年にはベストアルバムが発売されています。
・イルッカ・リプサネン(Ilkka Lipsanen/ダニー・1942年9月24日~)
1942年にフィンランド10番目の都市であるポリにて生まれました。ポリはフィンランド南西部のスウェーデンとの国境に接する都市です。正式にはイルッカ・ヨハネス・リプサネンという名前になります。
3年後には弟のペッカも生まれ、11歳の時にヘルシンキ東部のカタヤノッカへ移住します。そこでフィンランド有数の作曲家であるエーリク・ベリマンに影響を受け、 音楽の研究を始め、その後ポップに興味を持つようになりました。また同時に地元の少年サッカークラブにも所属していた模様です。
1962年に英語を勉強するためにイギリスのマンチェスター(サッカーのマンチェスター・ユナイテッドで有名ですね)に留学します。翌年には帰国し、プリムラというレストランチェーンで働く一方、歌手デビューに向けて準備を進めていました。
そして1964年、ついにアーティストとしてデビューしました。芸名のダニーはこの時に決まり、パトリック・マイケル・リチャードなどの候補の中から決まった模様です。 しかし翌年には徴兵制のため軍隊へと行ってしまいました。(フィンランドでは男子に半年から1年の徴兵制がある)。
1966年に復帰し、ヘルシンキ西部のラウッタッサリへと移住しました。この年に1stアルバム「Se olla voi toisinkin pain」を発売し、同年のユーロビジョン・ソング・コンテストで2位となりました。 ユーロビジョン・ソング・コンテストというのは簡単に言えば「EU版レコード大賞」みたいな物でEU各国で予選を勝ち上がった後、毎年開催国が変わる決勝大会にて1位を競う大会です。 デビューしていきなりEUで2位なのですから凄い実績を持っている方なんです。さらに同年からは毎年夏にツアーを開き、 これは後にArmi and Dannyを結成してからはそちらで行うようになり1995年までの長きに渡り続きました。また自らが所属するDプロダクションという事務所まで立ち上げました。
デビュー間もない頃のダニー
1968年にはカンヌで最も人気のある海外のアーティストとして賞を受賞し、リオデジャネイロでポップシンギング世界選手権というのにも参加した模様です。 この時期には当時人気のあった歌手のカトリー・ヘレナと交際していました。 1969年にはフィンランドで人気のあるアーティストを集めた「ロック・サイド・ストーリー」に参加しましたが、そこで爆発事故が起こるというハプニングにも遭遇してしまっています…
70年代に入ると1972年にはリサ・リプサネン(旧姓Seppala・セッペラと読むのか?)と結婚しますが一旦失速してしまいます。特に1973年から1974年にかけてフィンランドのポップ全体に大きな変化があり、その時期に新しくデビューした歌手のヒットや彼自身が過度のストレス、彩度、やる気の欠如に苦しんでしまったことで批判を浴びてしまったことから低迷しました。
しかし1975年、Seikkailija(冒険家という意味のようです)という曲がヒットし、再びユーロビジョン・ソング・コンテストに出場しました。ここから帰り咲き、2年後に若い人と組んでいきたいとの考えから同年のミス・フィンランドに選ばれたアーミ・アーヴィッコとコンビを組むことになります。
その後約1986年に「忍者」というアルバム・曲をリリースします。まさかのまた日本に関係するタイトルですね…アーミの方はジャパニーズボーイで、ダニーの方は忍者とは…
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当時、「忍者」でユーロビジョン・ソング・コンテストに出場した時の映像です。
1995年にArmi and Dannyのコンビを解消して以降、1996年に「Valo and Energy」(光とエネルギー)、翌1997年に「taika」(マジック)というアルバムを発表しました。また1996年には大統領勲章であるフィンランド獅子勲章を受章しました。 2002年には60歳になったことを記念してフィンランド最大の屋内競技場であるハートウォールアリーナにて記念コンサートを開きました。しかし2005年には33年連れ添ったリサ・リプサネンと離婚してしまいました。2008年には生まれ故郷、ポリの生家に記念プレートが貼られました。
2008年時点での写真
近年では2016年に「Songs」というアルバムを発売し、作曲家のエサ・ニエミネンによってプロデュースされています。また昨年の2018年にはIskelma-Finlandiaという国内有数のエンターテイナーに贈られる賞を受賞しています。
あのPVこそ無茶苦茶ダサいですが、このように華やかなキャリアを積んだとても偉大なアーティスト達なんですよね… 特にダニーはマジで今もフィンランドという国を代表するアーティストと言っても間違いでは無いです…多分フィンランドの国民で知らない人はまずいないレベルなのではないかと思われます。 日本で言うなら誰だろ…詳しくないけどマッチこと近藤真彦さんが近いのかな…?
さて本題の例のPVに戻りますが、これは英語版・フィンランド語版のwikiにも「出来に問題があった」とはっきり書かれている程ですww 本国でも当時からダサいと感じられたようですが、この曲自体は当時大ヒットして1万枚以上を売り上げ、国内の賞レースにおいて金賞を受賞したそうです。そのためこのPV自体もネタとして受け入れられたそうです。
PVの撮影時に撮られたと思われる写真
このPVは元々「Armi ja Danny Avaruusajassa」という番組内で放送されたものを使用しており、翻訳すると「アーミ&ダニーの宇宙」とか出てきました。 日本で言うならAKBINGO!のようなアーティストとのタイアップ番組だと思われるこの番組、タイトルに宇宙と入っているからこそラストのシーンは宇宙っぽくなったのかもしれません。
ちなみにフィンランド語版のジャケットには何故か日立製のカセットテープが写っていますw また日本に関するものが出てきましたね…2人ともそれぞれ「ジャパニーズボーイ」「忍者」という曲を出してますし、30年以上経って日本のネット界でネタにされるわけですから、日本との縁があり過ぎますねwww
フィンランドはヨーロッパの中では割と親日的な方という噂を聞いたことありますし…
英語版は本来アルバムに収録されていたのですがシングルとしても出ていたようで、それのジャケットがこれになるのですがまだ普通な感じがします。
しかし、そのアルバムの方のジャケットはPV同様かなりダサいですw
動画の右下にはMTVというのが入っていますが、これは音楽チャンネルのMTVでは無くフィンランドの民放テレビ局の名称です。MTVは1957年にフィンランド初の民放テレビ局として開局しましたが、1993年以降はMTV3という名称に変更されて今に至ります。
またライブかテレビ番組で歌ったと思われる映像に出てくるYLEというのもテレビ局の名称で、こちらは公共放送…つまりNHKと同じです。NHK同様受信料を徴収し、テレビとラジオを運営しています。
他にも数多くのフィンランドのアーティストによってカバーされており、また例のダサいPVも国内のコメディアンなどによるパロディが存在します。勿論一般の人でも真似する例は結構あるようです。
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現地の一般人と思われる2人が庭で真似している動画です。
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学園祭?か何かで真似した例です。
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発表から40年以上経ちますが最近になってもカバーされているようで、この動画の場合今年録られたものだと思われますが、結構アレンジされています。
このため、フィンランドにおいては老若男女問わず有名なネタ曲…といった扱いなのだと思われます。日本で言うなら吉幾三さんの「俺ら東京さ行ぐだ」みたいなものでしょうか(これもニコ動においてラップ調に合いの手が入る形でネタによく使われていますねw)
歌詞 フィンランド語・英語・日本語の順に並べてみました。フィンランド語と英語は海外の歌詞サイトに書いてあったもの参考にし、日本語は英語版を翻訳サイトにかけながら和訳していきました。
なお、フィンランド語版の歌詞は英語版においてそこに該当する部分のを書いただけで意味まで同じであるかは不明です…
Tahdon sulle olla hyvin hellä I love you,I Want To Love You Tender 愛してる、私はあなたを優しく愛したい
oisit mulle kukka kämmenellä You could be my only sweet surrender あなたはただ一人の運命の人さ
tuskaa sulle en vois ikinä mä tuottaa I would never bring you any kind of sorrow あなたを悲しませるなんてことはしない
Tahdot mulle olla hyvin hellä You love me,you wanna love me tender あなたは私を愛してくれる、大切に愛してくれる
näin kun väität käsi sydämellä How can I he sure you`re not pretender? だけど私はあなたを信じて良いのか分からない
täysin voinko silti
You want me today 今日は愛してくれる
sun sanomaasi luottaa
But what about tomorrow? だけど明日は分からないよね?
Niin suloinen oot
Oh, you're absolutely fine ああ、あなたはとても素晴らしい
sun vartalosi on
Your lips are taste of wine あなたの唇はワインの味のようだ
niin uskomaton
I'd like to think you're mine 私はあなたを彼女にしたい
jos sua koskea mä saan
And if I could touch your hand そして、もし私があなたの手を触れるのなら
mä sillon kauttaaltaan
This rock would turn to sand この岩も砂のようになって
käyn vapisemaan
So this is where we stand 私たちの足元に落ちる
Tahdon sulle olla hyvin hellä
You love me,you wanna love me tender あなたは私を愛してくれる、大切に愛してくれる
näin kun väität käsi sydämellä
How can I he sure you`re not pretender? だけど私はあなたを信じて良いのか分からない
täysin voinko silti
You want me today 今日は愛してくれる
sun sanomaasi luottaa
But what about tomorrow? だけど明日は分からないよね?
Tahdon sulle olla hyvin hellä
I love you,I Want To Love You Tender 愛してる、私はあなたを優しく愛したい
muuten en sua voisi käsitellä
I just want to be your loving fender あなたは私の運命の人だ
täysin voinko silti
I would like to take you 私はあなたを連れていきたい
sun sanomaasi luottaa
I know I can't deceive you 私はあなたを騙すことなんて出来ない
~間奏~
Tahdon sulle olla myöskin hellä
I love you,I do can be so tender 愛してる、私はあなたを大切にしたい
jos voit muutakin kuin lähennellä
I can be your only sweet surrender 私はあなたをただ一人の運命の人と信じれる
jos voit mulle yksin
And if you give your heart もしあなたの心をくれるなら
jos voit mulle yksin
I'll never ever leave you 私は永遠にあなたから離れない
Niin suloinen oot
Oh, you're absolutely fine ああ、あなたはとても素晴らしい
sun vartalosi on
Your lips are taste of wine あなたの唇はワインの味のようだ
niin uskomaton
I'd like to think you're mine 私はあなたを彼女にしたい
kun sua koskea mä saan
And if I could touch your hand そして、もし私があなたの手を触れるのなら
sä sillon kauttaaltaan
This rock would turn to sand この岩も砂のようになって
käyt vapisemaan
So this is where we stand 私たちの足元に落ちる
*
Tahdon sulle olla hyvin hellä
If we all say "Wanna love you tender," 「あなたを大事にしたい」と皆が言えば
silloin onni oisi ihmisellä
No-one has to be a great pretender 大の嘘つきはいなくなる
kaiken kun hän saa
And this world would be そしてこの世界はもっと
ja kaiken myöskin antaa
A better place to live in もっと良い場所になるだろう
*フィンランド語版のみ、*の後の最後のサビを繰り返す
VIDEO 最後に、他にもフィンランドは初音ミクが歌ったことで有名な「levan Polkka」(ロイツマ)や、かの有名なYMCAのカバーですがこれまたダサくなってしまった「しょし」を生み出した国でもあります。ロイツマって本来はlevan Polkkaを歌ったアーティストの名前なんですけどね… 他にもこういったネタ要素以外にメタルバンドを中心に洋楽界において有名な曲が多く、国家産業として音楽産業の育成には力を入れている程、音楽には非常に強い国です。これは隣のスウェーデンを始め北欧全般に言えることで、スウェーデンもかつて流行した「ウッーウッーウマウマ(゚∀゚)」や「高らかにオ〇ニー」を生み出した国でもあります。