

ここはお馴染みのマンソンの非常階段。
犬を飼うことが許可されているマンソンではあるが、「 おおむね中型犬まで 」 という掟がある為、
「 おおむね中型犬 」 には到底見えない七色は、入ることができない。
だから人目を忍んで こそこそと裏口から入り、非常階段を上って行かねばならない。

非常階段を利用する人は滅多にいないので、
未だにマンソンの住人と会ったことはないけれど、
監視カメラがあるので、そこから警備の人に見られている可能性は十分ある。
また、先日の震災で、非常階段のタイルがはがれ落ちたので、工事の業者さんと鉢合わせするかも知れない。

だから


いつもよりも速く上らなければならないのだった。

そして最上階まで上ると、動悸 息が切れ めまいで、「 誰か。ワタスに救心を下さい! 」 と心の中心で叫んだ隊長。

薄れゆく意識の中で、この顔が見えた。


なに。この胸やけしそうなほどの爽やかな元気ちゃんの笑顔。

この笑顔を見たら、掟を破って隠れてコソコソと上ってきた重圧から一気に解放され、疲れも7%程軽減した気がした。
だが・・・・
今日は、震災後の点検に管理会社の人が来る日。


・・・・・とは言えず・・・・


・・・・・とも言えず・・・・・
七色には、車の中で待機してもらうこととなった。


・・・・・頑張らなくてよろすぃ。
マンソンの部屋の中は、地震でひび割れやすき間、傷ができましたが、自己負担になる部分は目をつぶり、とりあえず無償でできる範囲だけ修繕してもらうことにしました。まだ2年しか経ってないマンソンなのに、お隣は、目をつぶることができなかったようで、既にリフォーム工事をしているようです。大型犬もどうか目をつぶって許してくれないかな。と非常階段を上る度に願う。

