gooブログはじめました!

生活に活力と希望を・・・。

映画(洋画) 「黄昏」マーク・ライデル監督1981年作品

2020-03-16 18:18:31 | 映画

                             

                             人生は止らない。あなたは大人よ。
                              乗り遅れないで。
          (「黄昏」からエセルの言葉)

あらすじ
黄金色の湖面、湖面の水鳥、岸辺の森と花々。初夏のニューイングランドのゴールデン・ポンドの別荘へ、退官した大学教授で80歳を迎えるノーマン(ヘンリー・フォンダ)と妻エセル(キャサリン・ヘップバーン)が、夏休みを過ごすため久しぶりにやって来る。留守の間に暖炉の上に置いた人形が床に転げ落ちていることに気付くエセルはノーマンに言う。

エセル「エルマー(人形)は初恋の人よ。あなたはエルマーの身代わりだったの」
ノーマン「不治の病で自殺かな」
エセル「やめて」
ノーマン「悪くない方法だ。飛び降りれば火葬場に一直線というわけだ」
エセル「黙って」
ノーマン「いよいよとなったら、わしも暖炉の上に載せてくれ。宙返りで飛び込むよ」
エセル「いい加減にして、死に魅了されたよう」
ノーマン「時々考えるだけだ」
エセル「5分おきよ。他に興味はないの」
ノーマン「ないね」
エセル「それなら、さっさと飛び込んで終わらせな」
ノーマン「お前とエルマーを残して? それはダメだ」 と言うような皮肉めいた会話となる。


後日、一人娘のチェルシー(ジェーン・フォンダ)が、80歳となるノーマンの誕生日に婚約者を連れてきて紹介したいと連絡が来る。チェルシーは、父ノーマンとは折り合いが悪く、しばらくは疎遠になっていた。
婚約者は、離婚歴がある歯科医ビル(ダブニー・コールマン)といい、13歳のビリー(ダブ・マッケオン)という連れっ子がいるとのこと。
80歳になろうとするノーマンは、心臓病の持病のほか、最近は物忘れもひどくなっている。別荘の周辺の道に迷ったりして落ち込んでしまう。

エセル「あなたは、わたしにとって輝ける、頼もしい騎士よ。馬の上であなたの背中にしがみつくわ。どこまでも  二人で行きましょう」と慰める。
ノーマン「馬は嫌いだ。ずいぶん年をとった姫だなあ。なぜ、こんな老いぼれと暮す。?」
エセル「さあ、なぜかしらね」
そして、娘のチェルシーは、婚約者のビルと連れっ子のビリーを別荘に連れてきて、両親に紹介する。
ビルは、ノーマンに積極的に話しかける。
ビル「80歳の気分は」
ノーマン「40歳のときの倍は酷い」
ビル「私は5年前に味わいました。奥様はなんと呼べばよろしいですか」
ノーマン「エセルでいい。舌を噛みそうな名だ。おかげで結婚のとき揉めた」
ビル「旧姓は」
ノーマン「忘れた」
ビル「彼女から、人を言い負かすのが、お好きと聞いています。でも、僕は強がりと見抜けます。あなた   と友達になれなくてもいい。魅力的な人ですから。できればあなたのことを知りたいのですが、今は   難しい」
ノーマン「見事なスピーチだ」と皮肉めいた会話。

娘のチェルシーは、父ノーマンを「クソ野郎」と思っている。父親は威圧的であり、父の期待に応えようとがんばっても褒めてもらえなかった。そんな不満がずっと鬱積していた。そんなチェルシーに対して、エセルは言った。「過去の不満ばかり言って、何になるの。人生を無駄にしないで。愚痴はいい加減にして。あなたは大人。人生は止らない。乗り遅れないで」と・・・・


そんな中で、夫妻はチェルシーから2人共に結婚式と旅行を兼ねて、一ヶ月間ヨーロッパへ行くので、連れっ子のビリーを別荘で預かってほしいと頼まれる。そして2人は旅立つ。
ノーマンは、残ったビリーにボートで釣りに行こうと誘う。ビリーは釣りに熱中して、ノーマンに親しみを抱き始める。ノーマンが以前逃してしまった大きなニジマスを追い求めて、湖の奥の難所まで出向いた時、ボートが転覆して二人は湖面の岩にしがみ付いて助けを求める。帰りの遅いことを心配したエセルは、機転をきかし、2人を救助する。


ノーマンとビリーが仲良しになっているとき、チェルシーがヨーロッパから別荘に戻ってくる。「あの二人は仲がいいのね」とエセルにつぶやく。エセルは「お前は立派な伴侶を得た。わしは鼻が高いよと言ってくれるわ」と言うとチェルシーは「きっとなにも言わないわ。最低の男だから」
それを聞いたエセルはチェルシーを平手打ちする。「その最低の男はわたしの夫よ。彼はあなたを愛している。ただ、言葉でいえないだけ、私達のためなら火の中にも飛び込むわ。彼はもう80歳よ。お友達になるなら早く。彼もあなたを恐れている。さあ、早く話しかけて」と促される。


チェルシー「話があるの」
ノーマン「悩みか」
チェルシー「違う、ただ話がしたいの。普通の関係が築きたいの。父と娘らしい関係」
ノーマン「潮時とみたか」
チェルシー「私、ブリュッセルで結婚したの」
ノーマン「英語を話す相手か」
チェルシー「ビルよ」
ノーマン「あいつか、うれしいよ、超うれしい」
チェルシー「ビリーと3人で暮らすの」
ノーマン「それはいい、よかった」
そんな和解の後、チェルシーとビリーは別荘を去ってゆく。



後日、ノーマンとエセルは湖の岸辺を散歩する。水鳥が湖面を泳ぐ。「つがいだけになったな」としみじみと湖水を眺める。


感想など
1 高齢の夫婦が、湖畔の別荘でひと夏を過ごす。そこへ娘の婚約者と連れっ子が来て、いままで確執していた関係を改善するというもの。この映画の原作が戯曲なので、会話が面白い。また、湖畔の美しい風景(湖水の色と波、ボート、水鳥、森、岸辺の花々)と背景の音楽が叙情性を高めています。


2 才能豊で社会的地位のある頑固な父親と勝気だが付いて行けない娘の反発が、 母親や婚約者の連れっ子等を介して、和解する過程は感激的です。


3 お互いが若いときは、それぞれでやって行けたが、父親の高齢化は自身を気弱にします。娘も新しい人生に向かう将来の不安が付きまといます。婚約者の歯科医は、離婚で傷つき、連れっ子は母親との生き別れという傷を受けています。
 そこには、どうしてもそれぞれが気持ちを寄せ合わせる絆がないと生きてゆけない下地があるように感じます。


4 ノーマンの言葉は、皮肉的な憎まれ口が多いのです。嘲笑なのか、ユーモアなの か本音なのか、ずけずけと言います。娘や婚約者には反感を持たれたようですが、我々第三者には、面白さも感じますね。


5 ヘンリー・フォンダの少し猫背で痩せた体、口をポカンと開き惚けたような表情も 良かったのですが、キャサリン・ヘップバーンの体全体から滲んでくる演技、表情・ 声・しぐさ・動きは完璧でした。


6 「人生は止らない」は、映画のラストも続いているのです。彼等夫婦にも医療や介 護の問題は必然的に迫ります。映画自体は「いいとこ撮り」で終わりましたが、見ていて、水鳥も湖水も涙腺が緩み霞んで見えましたね・・・・・。