夏樹智也の趣味の小屋

時間泥棒に取り憑かれた人間が気まぐれに趣味に走る。

宇宙戦艦ヤマト2199二次創作外伝 第二次内惑星戦争 第二話

2020-09-24 18:20:00 | 第二次内惑星戦争
この作品は本編にて一切描かれていない第二次内惑星戦争について取り扱ったものです。
また一連の文章の設定はアニメ『宇宙戦艦ヤマト2199』、『宇宙戦艦ヤマト2202』及び八八艦隊様の小説『女王陛下のウォースパイト号』、さかなのほね様のメカニック『タートル・ギャング』に基づいてはおりますが、これらの設定で描かれていない部分などや個人的趣向を優先したいところは、独自設定を用いています。予めご了承ください。
拙い文章ですので過度な期待はしないでください。

また本作はテロリズムや人種差別を助長するものでも、陰謀論を唱えるものでもありません。
本作はフィクションで、実在する国家、団体、人物とは一切関係ありません。

この小説は拙作の小説『第一次内惑星戦争』の続編となっております。まだそちらをお読みになっていない方はそちらから読まれることを推奨いたします。





「しかしまあ…同じ策をもう一度つかうとは…」
机の上には2冊の作戦概要が置かれている。
どれにも赤くトップシークレットと書かれた判子が捺されている。
タイフーン作戦、バルバロッサ作戦と名付けられたこの2つの作戦は同時進行で行われることが決定していた。
「彼らの防空能力は前回の戦いより上がったとはいえ、月軌道艦隊は再建できず、現在は英国王立宇宙海軍と航宙自衛隊が護衛に当たっているのみ。あとは軌道上の防護衛星だけだ。」と冊子の中には彼らの艦隊配置や衛星の配置まで事細かに書かれている。
「要するに艦隊を引きずりだせばいいのだ。」
「蜂の巣を叩くような結果にならなければいいのですが。」
「ああ。ただ蜂の巣から蜂が出払った状態なら、蜂蜜を盗るのは容易だろう?」と参謀は悪い顔をする。





「提督。火星軍が地球圏に向けて進撃しているとの報告です。」

月面にあるティアーナベースの司令室に立っている永倉遼太郎提督にタブレット端末を持った士官から報告を受ける。

「来たか…」と永倉提督は呟く
司令室の大きなモニターには月の裏側のコロリョフ観測所からの望遠映像
第一次内惑星戦争を彷彿とさせる侵攻だった。
「連合艦隊はどうかね?」
「はっ、日本、英国を主力とした連合艦隊は既に出撃の用意を始めています。」と士官は報告する。
「では私もコンゴウに降りよう…」と永倉提督は司令室を後にする。
ティアーナベースに繋留される形で停泊する英連邦の巡洋艦が巨大な窓に映っている。
コンゴウは第2ドックで点検や、物資の積み込みが行われていた。
慌ただしく作業員が準備している。 
隣のドックには航宙自衛隊の金剛型や英連邦のウォースパイト級など大型艦艇が停泊している。
ウォースパイト級宇宙戦艦は金剛型の輸出型、国連宇宙海軍第三世代型主力戦艦のイギリスでの名称であり、現在このティアーナベースにはイギリスが保有する4隻全てが投入されている。
永倉はボーディングブリッジからコンゴウに乗り込み、第一艦橋に登る。
艦内は起動したエンジンの重低音で騒がしい。
「艦隊の出撃準備はあともう少しで完了します。」とコンゴウの艦長、山本武彦は報告する。第一次内惑星戦争では、陽電子砲に攻撃した駆逐艦ユキカゼの艦長だったが、今回はコンゴウの艦長に異動している
「わかった。」
頭上に架けられたキャットウォークにはクレーンが取り付けられている。
クレーンが重々しく動き出し、アンテナマストが引っかからない位置に移動している。
「提督、人員の点呼など完了しました。」
「うむ。」と言い永倉は無線機を取る。
「全艦発進準備。」と号令する。
甲板には士官が立ち、ラッパを吹く。
「ガントリーロック解除」《ガントリーロック解除》船を支えていた大きなロックが外され、轟音が響く。
月の重力で少し艦体が下がるが、スラスターを噴き、アンテナを傷つけることがないように浮く。

《正面ハッチ開きます。》大きく軋むような音を立てながらハッチが開く。
空いた隙間からは青い地球が顔を覗かせる。
ハッチはゆっくりと開き、やがて開いた状態でロックされた。
「全艦。発進せよ」
「両舷前進微速150ヨーソロー」
《前進微速ヨーソロー》
コンゴウのエンジンノズルからバーナーが飛び出し、コンゴウはドックから出港する。
横一列に並んだ大型艦ドックからキリシマ、ヨシノ、ウォースパイト等の金剛型と同じ形の船が出撃し、その後ろから巡洋艦や駆逐艦が続いている。
その姿は圧巻で、後に作られたニュース映画等でも人気のあるシーンの一つだった。

月面ティアーナベースを出撃して2日、ようやく火星軍艦隊を捕捉した。

「敵艦隊を捕捉。方位101、距離7590」コンゴウのレーダーは敵を捉える。
《レーダー、通信障害なし。》
「リンク18依然正常です」と電探士は言う。
「新型の電子戦防護も機能しているようですな」と山本艦長は言う。
「全艦戦闘配置。対空間戦闘用意。」
《第一種戦闘配置。対空間戦闘よぉーい。》《これは演習ではない。繰り返す。これは演習ではない。》

「配置につけぇ!」と艦内は慌ただしくなっている。VLSの装填、隔壁の閉鎖、舷側観測所の開放など準備が整えられる。
火星軍も同時に戦闘準備を整え、砲塔も動き出している。

先に攻撃を加えたのは地球艦隊であった。
レールガンやフェーザー砲は一斉に火を噴き、エンジンノズルを向ける火星軍艦に突き刺さり、爆散する。
すぐ様火星軍は応戦に出て、同航戦に突入した。

《ハープーン攻撃はじめ。目標敵火星軍艦、発射段数2発》
金剛型の艦体に装備されたVLSが各舷1基、合計2基開き、煙を拭き上げながら対艦ミサイルが飛びたす。

「敵の砲塔が指向している!舵を切れ!」
ウォースパイトの艦橋は舵切りの影響でごった返している。
しかしその微調整で、火星軍のレーザーは艦体に当たっていない。 
「艦首魚雷発射用意!発射弾数3発、目標正面敵艦。」
《発射用意よーし》
「撃て!」艦首魚雷発射管から魚雷が3発勢い良く飛び出し、火星軍艦に刺さった瞬間爆発した。
《敵艦撃沈!》
火星軍も対抗してミサイルなどを放ってはいるが、金剛型やウォースパイト級の艦橋横に取り付けられた、高性能22mm機関砲、カタフラクトや各艦に装備された25ミリ対宙機銃などが次々と墜としていく。
レールガンは宇宙を貫き、ごぉんという金属の音を立てながら船に風穴を開ける。

「怯むな!撃て!」と火星軍艦は必死の抵抗を続けているが、それも叶わず、船は火に包まれる。

《ヨルサ、エクトーリア撃沈!》《ペニーワイズ大破!》《ニーモルス、機関損傷航行不能!》火星軍第三艦隊旗艦、ローデシアに次々と被害報告が入る。

「ガメラはどうだ……?」とノーマルスーツを着ている提督は尋ねる。
「無事月軌道を通過しました。」と報告される。
「タートル・ギャングより入電。」
「[ギリシア人は逃げ去った。]とのことです」と通信士は言う
「うむ…作戦は成功だな。」
「全艦反転だ。転進する。所定の行動に入れ。」と提督は指示を出し。火星軍艦隊は反転し、残りのエンジン出力をフルパワーで出して、現宙域を離脱する。


「敵艦隊、反転。戦闘宙域から撤退しています。」と電探士は報告する。

「提督。追跡しますか?」山本艦長は訊く
「いや。良い。それよりも友軍の被害状況と、敵味方問わず生存者の救出を行え。」と永倉提督はいう。
「はっ。」と山本艦長は言い関係各所に指示を出す。





《さて、仕事をするとしよう》と狭い機内のコックピットで計器を操作する男たちがいる。
「レーダー異常なし」
「各機用意はいいか?」と機長は無線で尋ねる
《爆撃機中隊用意よし。》と初老の男の声がする。
《支援隊もオーケーです。》少し若い男の声がする。
《直掩機隊用意よし。》と中年の飛行隊長の声がする。
「ベクター下ろしてくれ。」と機長は言う。
《りょーかい。》と女性の声がして、大きなコンテナが2隻の民間輸送船から切り離される。
民間輸送船には地球木星間航路を繋いでいる、スペースライン社の、魚の骨のようなロゴが大きく描かれている。
コンテナは開き、中から50mくらいの爆撃機、タートルギャングが現れた。
そしてその奥からマーズヴォルチャーが1飛行中隊現れた。
《全機1機ずつ直掩機として付け。》と飛行隊長は言う
「高高度の衛星を無視していきなり地表に挨拶かい?」と電子戦オペレーターは訊いてくる
「いいじゃないか。上では艦隊が、やりあってんだ。それが挨拶代わりだよ」
《目標は?》
「第一目標はディレクレジャクソンのエネルギープラントだ。」と言う。
「俺らと2機はコロリョフ観測所に。」と指示を出す。
「直掩機と支援隊も別れて援護を頼む」
《了解》と爆撃機隊は2つに分かれる


「ありゃ何だ。艦隊のご帰還か?」とエネルギープラントの作業員は呟く。
「いやまてあんな船。地球にはいない筈だ…」ともう一人の作業員は言う。
すると爆撃機から大きな樽のようなものが落とされ、エネルギープラントの核融合発電所に直撃し、大きな爆発を起こした。
作業員達もその爆発に巻き込まれ、消息を絶った。

「爆発です!」とティアーナベースの司令室は混乱を極めていた。
「なんだって…?報告では敗走した筈では…。」と司令室の士官は驚いたように呟く
「別働隊が居たようです。」といきなり司令室の電気が全て落ちて、その数秒後には赤い非常灯がつく
《予備電源に切り替えました。》
「ディレクレジャクソンのエネルギープラントが破壊されたようです。」
「何をしている!早く戦闘機を上げんか!」と司令室に走って指揮官が入ってくる。
「しかし電気がない以上動けません!」と航空管制官は反論する。
「いいから上げるんだ!発光信号ででも通信しろ!」と激昂する。

「全く照明もなしで上がるのか…」と呟く
《仕方ないだろう実戦なんだ》と隊長は言う。

《ブラックタイガー隊発進を許可する》とノイズ混じりの無線機から聞こえる。
《ブラックタイガー隊発進する》とブラックタイガーは滑走路から飛び立って行く。
尤も明かりがないため、視えるのはブラックタイガーの翼端灯や着陸灯とコックピットの灯りだけだが。

《お友達がやってきたぞ!》とマーズヴォルチャー中隊の飛行隊長は言う。
ブラックタイガーはミサイルを放って近づいてくる。

「対空戦闘!」とタートルギャングの機体上部に付いている、機関砲が火を噴き、ミサイルを落とす。
しかし一本だけ撃ち漏らし、爆撃機に突き刺さり、爆発する。幸い航行には異常はなさそうであった。
マーズヴォルチャーは機銃やカノン砲でのドッグファイトに持ち込む。
ブラックタイガーは宇宙空間での機動性が重視されており、機動力ではマーズヴォルチャーのような大柄な機体は劣っている。
しかし攻撃力はこちらの方が上であり、当てれればこっちのものであった。
「堕ちろ!」とカノン砲でブラックタイガーは撃ち抜かれ、月面に回転しながら堕ちていった。



「エネルギープラントは吹っ飛んだみたいだな。」
と呟く。
「こいつが本命さ。」と爆撃手は照準器を覗く。照準器のカメラ映像には無人のコロリョフ観測所が写っていた。
「照準良し。爆弾投下。」とタートルギャングから大型爆弾が落ちて、コロリョフ観測所は爆炎と共に消滅、地球への映像も途絶えた。

《作戦終了した》という無線が入る頃にはブラックタイガーは全滅し、12機いたマーズヴォルチャーは6機になっていた。

「こいつは修理はできないっすねえ…」と輸送船に乗り込んでいた整備士はミサイルで機体の半分を破壊された爆撃機を見ながら言う。
「すまないがこれは爆破処分にするしかない…」と爆撃機隊長は言う。
「わかりました……」と機長は言う。
爆撃機は宇宙に打ち捨てられ、数分後に爆散した。

月軌道艦隊が帰還する頃には爆撃機隊は撤収し、残されたのは破壊されたエネルギープラントの残骸だった。


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