夏樹智也の趣味の小屋

時間泥棒に取り憑かれた人間が気まぐれに趣味に走る。

宇宙戦艦ヤマト2199二次創作外伝 第二次内惑星戦争 第一話

2020-09-23 18:15:00 | 第二次内惑星戦争
この作品は本編にて一切描かれていない第二次内惑星戦争について取り扱ったものです。
また一連の文章の設定はアニメ『宇宙戦艦ヤマト2199』、『宇宙戦艦ヤマト2202』及び八八艦隊様の『女王陛下のウォースパイト号』に基づいてはおりますが、これらの設定で描かれていない部分などや個人的趣向を優先したいところは、独自設定を用いています。予めご了承ください。
拙い文章ですので過度な期待はしないでください。

また本作はテロリズムや人種差別を助長するものでも、陰謀論を唱えるものでもありません。
本作はフィクションで、実在する国家、団体、人物とは一切関係ありません。

この小説は拙作の小説『第一次内惑星戦争』の続編となっております。まだそちらをお読みになっていない方はそちらから読まれることを推奨いたします。






「われら合衆国の人民は、より完全な連邦を形成し、正義を樹立し、国内の平穏を保障し、共同の防衛に備え、一般の福祉を増進し、われらとわれらの子孫のうえに自由のもたらす恵沢を確保する目的をもって、アメリカ合衆国のために、この憲法を制定する。」─────アメリカ合衆国憲法より抜粋





崩れ落ちるビル群。
ガラスは割れ、煙を吹き上げながら倒れるビルはまるで墓石ともいうべきだろう。
教科書に載っている2001年にあったとされる同時多発テロ事件のような様相が今、目の前で起こっている。
それが現実なのか、悪い夢なのか分からない。
ただ言えることは、少なくともいい夢ではないことだ。
つい先ほどまで、たくさんの人間が働いていたビルディングが崩れている。
その中で労働に勤しんでいた彼らはもうこの世にはいないだろう。

この緊迫の様子をテレビキャスターは伝えている。しかもそれがアメリカだけでなく、中国、イギリス、フランス、ドイツ、ロシア、日本で同時、多発的に起こっている。
まるで仕組まれたかのように。
ヘリコプターを使った空からの映像は噴煙だらけでグラウンドゼロの様子を正確に撮影することはできていない。
同時多発的に起こったこのテロ行為は予想だにもしないものであった。

「我々はテロに屈さず。必ず犯人を捕まえる。我々の正義の名において。」と各国の首相、大統領は口を揃えて言う。
各国警察や諜報機関。国連麾下の組織なども捜査し、火星の反地球を掲げる組織、レッド・ナスタチウムではないかという疑いが浮き上がって来た。
その疑惑を各国の主要テレビ局のワイドショーは一斉に大々的に喧伝。
そしてそのテロ組織の調査が進むにつれ、火星共和国に下ろされているとされている、米国製兵器が横流しされているという情報が浮き彫りとなった。
国連の安全保障理事会は火星をテロ支援国家、テロ国家として認定。経済制裁を加えた。
更に武力制裁も視野に入れ火星への戦争の準備を始めた。



貨物船に取り付けられた小さな窓から赤い星を見下ろすことができる。
火星の民間企業ナーシサスの、睡蓮の花のエンブレムが胸ポケットに縫われた作業服に身を包む作業員たちはその貨物船で火星軍による改装がほぼ終了した衛星フォボスの火星軍基地に向かっている。
「よし最終確認だ。いいな」と年配の隊長と呼ばれている男はPDAを持って周りの同じ服装をした作業員に言う
「フォボスベース、ここに対象がある。」とPDAに小惑星ともいうべき小さな衛星に不釣り合いな、建造物が映し出される。
「対象に向かい、指示通りに作業を進めるんだ。」
「イェッサー。隊長。」
「ここで万が一が起こったとしてもクライアントは関与を否定する」隊長は言う
「随分といいクライアントですね」と別の男がジョークを吐く
「ええその通りね、うちらの待遇もいつも通り?」と女は尋ねる
「ああそうだ。俺らに国際労働基準は適用されない。 切り捨てられるだけだ。」
「ここで死んでも、名前の書かれたカードが本国の無縁墓地に埋められることになる」
「願ってもない名誉だな」と軽口を叩く。

「もう間もなくだな。」と呟くフォボスベースの建造物がすぐ真横に見える要塞化したフォボスは最早原形をとどめていないだろう。
フォボスベースには第一次内惑星戦争で地球へ遊星爆弾を投下したマスドライバー砲の発展改良型がこの基地にはある。

「まもなく入港だ準備しろ。」と男は言い、コンテナを台車に積む。

貨物船は入港し作業員たちは対象のマスドライバー砲へと向かった。
「えーっと次の角か」と呟く
赤いバンダナを腕に巻いたサブマシンガンを持った歩哨が前から歩いてくる。
「おい。ここは民間人立入禁止だ。」と歩哨は言う。
「私達は軍に依頼され、マスドライバー砲の改良の為180ブロックへ向かってます。」と言う。
「許可証を提示してもらおうか」と歩哨は手を差し出す。隊長はカードと二つ折りにした書類を見せる。
「うむ、よろしい。頼むぞ。」と歩哨はいい去っていく。
「行くぞ」と隊長は促す。

180ブロックマスドライバー砲制御室には少し歩くだけでたどり着けた。
「俺らは制御室を抑える。外で見張っていてくれ」と作業員たちは道具箱からサプレッサーのついたハンドガンを取りだす。
「よし。入るぞ。」と部下を二人連れ、制御室に入る。
制御室の中には作業員が3人ほどコンソールに向かって作業している
「ああ、話に聞いていたマスドライバー砲の改良かマスドライバー砲の点検用の通路のロックを今から外そう。」と初老の作業員は言う。
「その必要はない。」と隊長は低い声で言う
「―――悪く思わないでくれ。」直後乾いたサプレッサーの発砲音が鳴り、3人の作業員は頭に風穴を開け、コンソールに倒れ込んだ。
「マスドライバー砲に弾頭を装填しろ。」
「イエッサー」と部下はコンソールに倒れ込む作業員をどかし、コンソールを操作する。
「目標はポイントAでよろしくて……?」と尋ねる
「ああポイントAだ。」コンソールに座標が入力される。
[29.894622,178.908632]
その場所は、地球北太平洋の沖合だった。
「見せてもらおうか、火星軍のマスドライバー砲の性能とやらを。」と隊長は呟く。
「発射用意完了。」と部下の一人は報告する。
「発射。」マスドライバー砲に電気が走り、隕石が打ち出される。これで任務は完了だ。
「依頼は果たした。脱出だ。」と隊長は言い、3人の死体を残し、作業員達は制御室を後にする。
廊下に出ると警報が鳴り出している。
「隊長、勘付かれたようです。」と部下の一人はコンテナからサブマシンガンを取り出しながら言う。
「さっさと帰りましょう。」
「コンテナの中に銃は残ってないな」
「はい。あとは遠隔起爆式の爆薬だけです」という
「通路に転がせ」と隊長は言い、コンテナのふたを閉め、銃を持った歩哨が走ってくる方向にキャスターで転がす。ここの地面は無理やり重力慣性でコントロールをしているため、微妙に傾いている。
コンテナは走ってくる歩哨と衝突して、突き当りの壁に辿り着いた。
爆薬を積んだコンテナは重く、訓練している歩哨でも動かすことができていない。
「いまだ爆破しろ。」と隊長はいい、起爆スイッチを押す。
コンテナが炎や轟音と共に破裂し、押しつぶされた歩哨や救助しようとしている歩哨を巻き込み、壁にまで穴をあけ、室内の空気が宇宙に吸いだされ、すぐ隔壁が閉鎖される。

ボーディングブリッジまで辿り着く頃には歩哨も巻くことができ、どの輸送船に乗ったかは把握されずに済んだようだ。
「よし全員いるな。」と隊長は確かめる。
「さてとドライバーを始末して脱出すれば任務完了だ。罐に火を入れてきてくれ。」
とハンドガンの弾倉を装填し隊長は艦首のほうに歩いていく。
コックピットの扉を開けると年老いた船乗りという呼び名が似合うような、人がコックピットで保守点検している。
彼の眼は赤黒い、移民の第二世代特有の特徴だ。
「何の騒ぎじゃ。」と言う
「事故があったんだ。廊下が崩落したんだよ」
「うちの坊主どもとは声質が違う。貴様らは何者だ」とこちら側を向かず、老賢者は尋ねてくる
「我々は.......」
「国連軍情報部所属、フォース・オペレーションX、003部隊だ」と隊長は老賢者に銃を向け、サプレッサーのカラっとした乾いた銃声がコックピットで響き、老賢者は紅い血を流しながら倒れる。
「さてと出航するぞ」と伝声管に声を入れる。
エンジンはもう起動され、すぐにフォボス基地を離れることができた。



「エメラルダス大統領!」と火星のアルカディアシティ、大統領官邸にある大統領執務室にルージュ国務長官が焦った様子で入ってくる
「どうしたんだ、そんなに焦って」
「フォボスステーションより、遊星爆弾が発射され、我々のは破壊が間に合わず、地球圏に入りました………。」
「なんだと?」とエメラルダスは立ち上がる。
「発射直後フォボスステーションでは爆発や、戦闘が起こっていたという報告が入っております」
「彼らの工作か……」
「現場の状況から推測するに情報部の子飼いの狐の可能性が高いかと」国務長官は言う
「至急、安全保障会議を招集してくれ。」とエメラルダスは指示する。

国際連合安全保障理事会は、今回の件を火星による利敵行為、宣戦布告とし、火星への派兵を決定。火星は整備中の事故としたが、常任理事国は聞く耳を持たなかった。


国際連合は火星共和国へ宣戦布告。
艦隊を火星へと派遣。

遂に第二次内惑星戦争の火蓋が切られた。


火星アルカディアシティ、大統領府。
ここでは今まさに安全保障会議が行われていた。
部屋のモニターには様々なデータが表示され、
部屋の中には4軍及び、政府の関係者が詰めていた。

「大統領。我々は如何なさいましょう。」とルージュ国務長官は訊いてくる。
「彼らは言いがかりをつけて我々を再び手中に収める気です。彼らに屈すれば、抑圧は独立前の比ではないでしょう」とサークレス陸軍参謀総長は言う
「艦隊は既に配置についています。この3年で小型化した陽電子砲座も。」とリアンレー宙軍司令は言う

「大統領。ご決断を。我々は戦うしかありません」シアンカ副大統領はエメラルダスに言う。

「もはや……後戻りはできないか…。」とエメラルダスは呟く。
「火星全域に総動員を。戦時体制へ移行。」
「宙軍は相手が攻撃を加えてきた場合、防衛としての戦闘行為を行え。」とエメラルダスはマイクを使って指示を出す。

エメラルダスはスーツの胸ポケットから一枚の写真を取り出す。まだ生まれて2年しか経っていない金髪の女の子の写真だった。

「この子達の将来を守る為にも…」



デブリとスペースコロニーで囲まれた、赤い星に、地球の青い迷彩のアメリカ宇宙軍を主力とした、艦艇は足を踏み入れようとしていた。
艦隊は分散しており、陽電子砲で一撃で破壊されることはない。
《全艦。攻撃態勢を取れ。》と艦隊司令官は指示し、艦隊は速力を上げ、火星へと近づく。
赤と灰の迷彩が目立つ火星軍艦艇は、攻撃の意思を見せず。ただ静止して、地球の船が来るのを待っているかの如くの様相だった。

「不気味ですね…全く攻撃しようとしてこない。」とアメリカ宇宙軍の戦艦テネシーは最前線で、彼らへの攻撃命令を今か今かと待っていた。
「奴らはそういう連中だ。攻撃の意思を見せず、後ろに回ってから貪る。」と艦長は磁力靴で船に足をつけ、腕を組みながら言う。

《全艦隊攻撃開始。相手はテロリストだ容赦はするな。》と旗艦から命令が下る。
「目標火星軍艦艇。」
「目標火星軍艦艇」主砲が火星軍艦に指向し、FCRが敵を捉え続ける。
「ファイア!」宇宙戦艦特有のライフリングがない主砲から緑色の光が勢いよく飛び出す。
すると火星軍の艦艇は一斉に動き出し、全速力で離脱し、偏差を考慮していなかった国連軍のレーザーを容易く避ける。

「撃て!」と火星軍は反撃に打って出る。
しかし、大きく、両翼に開いた国連軍を相手どるには明らかに船の数が足りていなかった。

「提督。敵艦隊の数は今迄の比ではありません。入念な準備をしてきたようです。」と火星宇宙軍第一艦隊旗艦、レアシルヴィアの艦橋で将校は提督に報告する。
「ハゲタカ共はまだか」と熟練した老提督は尋ねる。
「もうまもなくです。提督」
艦橋の横の窓には友軍艦の爆発する姿が映る。
《こちら114飛行隊。戦闘を開始する》と艦橋内のスピーカーから沈着した男の声が聞こえる。
その声と共に、艦隊の合間を縫って、奇形な大型戦闘機、マーズ・ヴォルチャーは敵艦隊をめがけて飛んでいく。
戦闘機の多くは可変翼を開き複葉機となっている。
殆どの機は、対艦ミサイルを抱えていたが中には大きな有線式無人対艦銃座を取り付けた、改装機もいた。
そしてマーズヴォルチャーに護衛される形で爆撃機も1機後ろについていた。
《爆弾倉を開放。存分に暴れてこい》と
爆撃機の胴体下面のハッチが開放され、中から赤色に塗られた人のような形のパワードスーツが湧いて出てきた。

《こちら戦闘機隊。連中の相手は任せてくれ。》と艦橋に無線が入る。
「うむ。全艦!第2作戦宙域へ」と提督は指示を出す。

空母を連れていない国連宇宙艦隊はマーズヴォルチャーやパワードスーツに航空優勢を取られている。

《友軍艦とのデータリンク途絶!》《誘導ミサイルが機能しない!》
火星軍は更に宙域にジャミング攻撃を仕掛け、通信やレーダーはおろか、誘導ミサイルをも無力化し、まだミサイル主力であったアメリカ宇宙軍を主力とした艦隊に有視界戦闘を強いている。
《イオージマ撃沈!艦隊損耗率60%!》
「くっ……テロリスト共め…」と巡洋艦サラトガの艦橋は非常灯で赤く染まっている。

次の瞬間人型のパワードスーツが艦橋の前に現れ、艦橋に対して腕に装備された機関砲を向けてくる。
一瞬窺えたその赤い眼は、まだ若い青年のものだった。

機関砲の斉射によって艦橋の窓は粉々に粉砕され、この斉射を生き残った艦橋クルーもそのまま宇宙に放り出されることとなった。
そしてエンジンノズルにも機関砲の弾を撃ち込まれ、エンジンは青い火から赤い火へと変貌し、そのまま爆炎に巻き込まれ宇宙に消えた。


マーズヴォルチャーもパワードスーツに負けじと船を沈め続けている。戦闘開始から約2時間。国連宇宙艦隊は艦隊の約50%を失っている

「提督……!艦隊は全滅…大敗です…」
「全艦隊に司令。反転し、月面まで撤退だ。」
「はっ。」


《地球艦隊、反転しました。まだこちらには気づく様子はありません》
レアシルヴィアの艦橋は灯火管制で計器の灯りしかない。
真っ暗な艦橋で戦闘を眺めていた。
「地球方面への撤退ならば、第2作戦宙域の付近を必ず通過する。そこを叩く。」
「イエッサー」
「ここで潰せるものは潰さなければなるまい。」
「全艦。砲雷撃戦用意。」


敵戦闘機やパワードスーツは何故か深追いしてこなかった。
「司令部とは繋がらないか」戦艦テネシーの艦橋で提督は訊く。
「はい。レーダーやデータリンクも復旧には時間が掛かりそうです。」
「使えるのはバースト通信だけか…」
《ウィングより艦橋。》
「観測員から直接内線通話です。」とオペレーターは補足する。
《12時の方向!所属不明の艦影多数。》
「IFF打ちますか?」と電探士官は訊く。
「うむ」
「これは………IFF不明。友軍艦ではありません!」
「いつの間に……」
「どうにか封鎖線を突破するしかあるまい。全艦。戦闘準備!」


国連宇宙艦隊は火星軍艦隊と反航戦に突入。
手負いの国連宇宙艦隊ではかなり不利な状況だ。

先頭に立っているのは旗艦レアシルヴィアだ。
「目標、敵地球艦隊。」
「両舷前進ヨーソロー」
「全艦……最大戦速…撃ち方始めぇっ!」と提督は指示を出し、火星軍艦隊は一斉射を始める。
火星軍のレーザーは宇宙を走り、地球艦隊を貫いた。


《被弾っ!オバソン、シャバリア撃沈!》《フィリピン・シー大破》《ノーマンディー、機関に異常》無線でテイラーの艦橋に被害状況が入る

「怯むな!応戦だ!全艦左砲戦!」
地球艦の主砲も火を吹き、火星軍への攻撃を始めるが、総崩れの国連宇宙艦隊では効果的な攻撃は与えられなかった。


《対艦グレネード投射準備!》と火星軍の艦体の両舷に取り付けられていたバルジに増設された、4つの穴の蓋が開き、エネルギーのチャージが行われ始めた。
「撃てぇ!」チャージされたエネルギー弾が一斉に飛び出し、地球艦隊の戦艦カリフォルニアに突き刺さる。
カリフォルニアのバイタルパートを粉砕し弾薬庫をかき乱し、爆散した。

《カリフォルニア撃沈!》

「離脱しろ!速力一杯!」テネシーは煙を上げながらもエンジンノズルから青い炎が勢いよく噴き出し、火星軍の戦艦では追いつけないような速さで宙域を離脱した。
離脱した頃には生き残った船は旗艦のテネシーと巡洋艦のアンツィオとヴィックスバークだけだった。





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