夏樹智也の趣味の小屋

時間泥棒に取り憑かれた人間が気まぐれに趣味に走る。

宇宙戦艦ヤマト2199二次創作外伝 第一次内惑星戦争 第一話 

2020-05-18 18:00:00 | 第一次内惑星戦争

この作品は本編にて一切描かれていない第一次内惑星戦争について取り扱ったものです。
また一連の文章の設定はアニメ『宇宙戦艦ヤマト2199』及び『宇宙戦艦ヤマト2202』に基づいてはおりますが、公式設定で描かれていない部分などや個人的趣向を優先したいところは、独自設定を用いています。予めご了承ください。 拙い文章ですので過度な期待はしないでください。

2020年9月25日追記:公式より正確な年号が発表されましたが、本作品はパラレルワールドと割り切りまして、79のまま行きます






『そして、我々は、この宣言を支持するために、神の摂理による保護を強く信じ、われわれの生命、財産、および神聖な名誉をかけて相互に誓う。』
———————アメリカ独立宣言より抜粋


歓声に沸き立つ大広間。彼らの注目の的は中心で背広に身を包み、独立宣言にサインをする金髪の男の姿である。
彼の名はジャック・エメラルダスという。後に火星解放軍総司令官に就任し、内惑星戦争にて地球の国連軍を二度も苦しめることとなる。

火星への移民が本格的に始められたのは今から約70年以上前、ケイオス・アルカディアが火星の地に降り立ってから約30年後の事であった。
しかしいつの日か火星移民は『地球を棄てた紅い目の劣等人種』と地球市民やそのマスコミに蔑まれ、差別や排斥が始められた。
人間というのは自らと何かが違うものを差別したがる傾向がある。
それは紀元前から何一つ変わっていないのかもしれない。
その差別は世代を追う毎に強く、根深くなっていき、何時しか両者の間に深い溝が出来上がる事となってしまった。

西暦2179年7月4日、今迄は自治という形上は与えられていたが、自治など到底不可能であり、火星は地球の植民地、傀儡政権と成り下がっていた。その状況を打開しようと、ジャック・エメラルダス含む火星自治政府、そして移民当初に分割された六地方の首相は連名で独立宣言にサインをし、一方的に地球からの自主独立を宣言し、火星共和国の樹立を宣言。
それは偶然にも約400年前アメリカ合衆国がグレートブリテンからの独立を宣言した独立記念日であった。
しかしこの独立宣言を、未だに国連及び地球を常任理事国として支配を続ける大国が許すはずはなく、同日、国連は皮肉にもアメリカを中心とした国連軍を組織、火星への派兵を決定し、1週間後国連宇宙海軍は火星へと兵を進めた。
また各国は先の地球圏戦争でスペースコロニーを地球に対する大質量爆弾として使用され、大きな被害を受けたという経験を踏まえ、大規模な地下シェルターの建築を開始した。

その頃火星では駐在国連軍の基地へ攻撃が開始されていた。
元々火星は自治領としてある程度の軍備の保持は認められていたが、それは米軍などから払い下げられた、旧型の兵器であり、まともに戦った場合数と質で勝る国連軍が敗北などあるはずはない。誰もがそう思っていた。
しかしその日は火星軌道上のスペースデブリの除去レーザーの発射実験が予定されており、大多数の艦艇は軍港で停泊していた事が運の尽きであり、その様なタイミングであった為、多くの艦艇が火星解放軍の手に落ちてしまうこととなった。
この時代、ガミラス等の異星人と呼ばれる人種とのファーストコンタクト前であり、異星人の驚異というものが然程認知されていなかったのに加え、火星は地球人からすれば辺境扱いであり、大した兵器などは配備されておらず、治安維持や木星、土星などの外惑星航路の安全確保程度しか任務の無い、駐留軍にこれ以上の大層な兵器は現時点では宝の持ち腐れであったと言える。

また世代を追ったことにより、火星に駐留している国連軍も何時しか過激派の差別の対象になっていた事もあり、元々その様な予定であったのではないかとも言われているが全ては歴史の闇に葬られている。

当時火星への航行は最低でも2週間はかかると言われており、迎撃のために出撃してくると思われていた火星軍艦艇と会敵する事もなく、それどころか火星軌道上には最低限の艦艇以外の姿は一切無かった。熟練した老兵ならば何らかの対策を組んで行くところだと思われるが、この戦いが初陣である指揮官は、何も考えず、それどころか我々の大艦隊に畏れを成して逃げ出したと思い、火星圏という戦場に足を踏み入れた。



「こちら偵察機ゴーストアイ “マザーベース゛に接近する艦隊を確認 データを送信する」
SSR-54 コスモレイブンと呼ばれる旧式偵察機は数分後には戦場となるであろう宇宙を翔んでいた。パイロットの目は正確に国連軍の艦隊を捉えている。
「しかしこの使いにくい機体どうにかならないのか。」とパイロットは呟く
《仕方ないだろう火星に下ろされる機体など欠陥機か旧型機しかないのだ》とオペレーターは答える。その間もデータの送信は行われている。
《よし受け取った。 実験を開始する。ゴーストアイは直ちに当該宙域を離脱せよ》
「.........了解した RTB」
とゴーストアイは紅い星へ飛び去った。

「実験を開始する。陽電子砲発射準備。第1接続開始」コートを羽織り、腕に赤いスカーフを巻いた指揮官ジャック・エメラルダスが号令する。
その瞬間ギャラガ・ステーションにエネルギー供給のために有線で繋がれた宇宙戦艦やステーションが一斉に息を吹き返す。
司令室のモニターに表示される情報が更新され、腕や首に真っ赤なスカーフを巻いたオペレーターやオフィサー、エンジニアがその情報を確認し報告し出す。
「ギャラガ・ステーション、電源設備異常無し」
「目標第一ラインを突破、陽電子砲射程内です。」
「第一、第二 超電圧架線を接続、接続艦艇、機関に異常なし。」ステーションの外部にケーブルに繋がれて係留される艦艇が見える。新旧様々な艦艇がギャラガ・ステーションに繋げられている。
「ステーション内、一次、二次変電設備の系統を切り替え、変電設備に異常は見られず。」
「全インバーター異常なし」
「再起動に備え、ステーション内電源を非常用に切り替え、並びに第一から第十二ブロックを消灯。」オペレーターの指示でステーションの電源は切り替えられ通路や司令室は赤色灯で照らされる。
「電圧安定、系統周波数は50Hzを維持」
「第二接続フェーズへ移行」とジャックが宣言する
「コロニー、01管区より03管区投入開始。」コロニーとステーションを繋いでいる急造品のケーブルに通電する。
「宇宙ステーション、グラディウスからギャラクシアまでの接続を確認」
モニターにはTNG03にTNG01からTNG04までのステーションを接続と表示される。
「第三接続フェーズへ移行」警報の重低音が鳴り響く。発射の準備が整いつつあった。
《電力伝送電圧は、最高電圧を維持》
「全冷却システムは、最高出力で運転中」
「フライホイール回転開始」《回転を確認、接続する。》
大量のケーブルで繋げられている機器に電力が供給されている。司令室ではジャックが事の成り行きを腕を組みながら見守っている。
「第三接続問題ありません」とオペレーターは作業が順調であることを確認した。
「陽電子予備加速器、蓄電中、プラス1テラ」
「第七ケーブルで漏電を確認。遮断します。」
《オリンポスステーションの電源を切断》
「電力低下は許容範囲内。」
「陽電子砲への回路開け」とジャックは指示
《陽電子砲への回路開きます》
「非常弁全閉鎖を確認。」「強制注入機を作動。」
「安全装置解除。」とジャックは号令する。
「セーフティロック解除!」とオペレーターが復唱する
《強制注入機の起動を確認。並びに最終セーフティを解除》
「陽電子砲、加速磁場安定」
「陽電子加速中、発射点まであと0.2、0.1」

「目標、敵艦隊照準を固定。」
「全エネルギー、超高電圧放電システムへ!」
「第1から、第6放電プラグ、主電力よし!」
「陽電子加速管、最終補正パルス安定。問題なし」
「エネルギー充填率120%」
「発射まで」
「10,9,8,7,6,5」
「4」
「3」
「2」
「1」
「発射っ!」とジャックの号令と共に砲から一筋の光が飛び出した。

モニターは光に包まれ一時的に映像が途絶えた。


「超高温の熱源接近!」と国連宇宙海軍艦艇のレーダーはギャラガステーションから放たれたビームを観測した。
「回避しろ!取り舵だ!」飛んでくるビームをかわそうと舵を切る。しかしその抵抗も虚しく
「間に合いませんっ!」ビームが直撃した艦艇はまさしく蒸発と言うのが相応しい程の様子で宇宙に消える。
かわせた艦艇であっても次の瞬間にビームの軌道が移動し始め、そのビームが直撃し瞬く間に艦隊は消滅してしまったのだった。

衝撃音が司令室を震わせる
「おお....やったか?!」とギャラガステーションの司令室にいた者達が声をあげる。
「主モニター、回復します」
モニターには燃え盛る艦艇の姿が鮮明に映し出されていた。
「おお....」
「………これで後戻りは出来なくなったか」とジャックがつぶやいた声は歓声に湧く室内では誰の耳にも届かない。
「国連安保理に打電。」とジャックは言う
「これは単なる独立戦争ではない。我々の誇りを取り戻すための戦いだ。と」

同日。マスドライバー砲による地球への爆撃が始められた。


続き



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