拙い文章です。過度な期待はしないでください。
前回
004
消毒の匂いが私の鼻孔を刺激して、私の意識はここに構成される。
バラバラに散りばめられた記憶がパズルのピースの様に繋がり、二重螺旋を描く。
《嗚呼マントルが…………棄てられた野に立つ…………嗚呼静かな………娘の視野で》と途切れ途切れにラジオから力強い男性の歌声が聞こえる。
「目覚めたか……」とルーゼルは言う。
「まずは一言。申し訳ない。」
「一応君の容体についてだが……君の身体の殆どは異常はなかった」
「あいつは一体何者なんだ。」と私は訊く。
「……ここの土着の歴史について調査しているある学者に会いに行ったんだ。尤も第三次世界大戦後の地理と歴史、そして文化は乱雑に混じりあってるせいで探し出すのは苦労したよ。
「ここの町は元々東南の港町だった。今じゃそんな面影も無いがな。
「十六世紀、日本という場所にいた戦士たち、日本では武士と呼ばれていた男たちが血と闘争を求めてスペイン等の傭兵として戦っていたらしい。
「ネーデルランドとスペインの戦いがちょうどここで起きていたらしい。その戦いで死んだ怨霊がここに憑いているというのが彼の見解だ。」とルーゼルは言う。
「だから兜のような……」
「ああ。君にこれ以上戦えとは言わない。近傍に駐留している国連軍東亜方面軍第六師団に出動要請を出すことを検討している。」とルーゼルは言う。しかし彼がただの怨霊ではないだろう
「待ってくれ。私がやる。あいつに師団差し向けたところで征伐はほぼ無理だ。」と私は直感的な意見を言う。
「第六師団は南方最強と名高い師団だ。そんな彼らでも駄目なのかい?」
「ああおそらく。奴に実体はほぼ無い。そんな豆鉄砲如きじゃほぼ無意味だろう。」
「私があいつとやって死んだら、歩兵でも戦車でも爆撃機でも差し向けるといい。」と私は言う
「あいつと同じか…」とルーゼルは呟く。
あいつとは誰だ?
005
地面には私を迎え入れているかのように、杭が突き刺さっている。
「士よ、やはり再び来たか。」と甲冑を着た彼はそう言う。
「タイムライン、その座標大きくがズレている。ここは俺の居場所ではない。しかしここから俺は離れることはできない。」と彼は言う。
タイムライン?
「西へ行くのだ。思慮の翼を持つ士よ。いや。鯨に魅入られた者よ。」
「思慮の翼とは何なんだ?」と私は思い切り、彼に聞く。
「そうかあんたにはなにも見えていないのか。ならば、考えるんだ。翼とは何か、翼というのはどのようなものか、そのままでは君はこのまま繭に閉じこもるだけだよ。」と彼は言う。
翼。
大空を舞う鳥のようで、気高く、美しく、そして力強い。
思慮。人の持てる知恵の結晶。思考は脳という器官の中で行われる幻想。そのようなもの現実世界に持ち出せる筈がない。
「常識を棄てるのだ。士。君の知っている世界の常識というのは物理という法則に縛られたただの一面的でしかない。」と彼は言う。
脳に刻み込まれた常識など棄てることは出来ない筈だが、この時の私は言われるがまま、常識をかなぐり捨てた。
彼は兜を外し、純白で潔白な白髪を露わにする。
彼の顔立ちは端正で、美しいと姿であった。
その白髪の男が語り掛ける。
「さあ今だ。この歪曲された世界を君はこの眼で視るのだ。」
気が付いた時には身体は大空に舞っていた。
背中に不気味に生えた白い翼はまるで天使を連想させる。
「そうだ。君には翼があるのだ。今の君なら私を連れていける。」と彼は言う。
「連れて行ってくれ。」と手を差し出す。私がその手を取る。
さあ。この世界を再び整ったものに作り替えるのだと彼はつぶやく。
次の瞬間。
空高くから飛んできた二本の刀が、私と男に一本ずつ刀が突き刺さり、地面に打ち付けられた。
私に生えていた刀はいつの間にか消えている。
上空から黒い翼を持った男が舞い降りてくる。
その姿は自分と瓜二つだが、髪の色、目の色、翼の色はすべて黒。
まるで鴉のような漆黒であった。
「お前たちの方法では世界は直らない。」
「まるで説明書を読まない子供の様にただ直したいものを壊すだけだ。」
「その自覚はあるかい?マリーンと過去より出でた士よ。」
「オマエタチが破壊しようとしているのは士の魂ではない。」
「この壊れかけたタイムラインだ。」
「西だ。私と共に西へ向かうのだ。」
「マリーン、そして士よ。」この言葉で世界は暗転する。
007
黒。
むなしいほどの黒が目の前を覆う。
「西へ行くのね」
「それは義務ではない。ただ貴方はそれを望んでいる」と少女、アルムヘイルは顔を覗き込む。
「黒髪の己の似姿に唆されて。」
「私が見たのは幻か?」と私は少女に訊く。
「翼を生やした人間なんて本当に存在しているのか?」と私はアルムヘイルに訊く。
アルムヘイルは世界のネジを巻きこう言う。
「見えているものだけが世界ではない。」
「そもそも見えているというのはなんだい?」
「あれ自体、ニューロンが視せる一種の幻でしょう?」
「本当にそれが存在しているかもわからない。ただ見えている錯覚を世界だと認識している自分の脳が補正という名の色眼鏡をかけさせて、脳の中にまるで映写機のように投影させている。」
「違う?」
いや違わないかもしれない。私にそれを反証することは出来ない。
なぜならそれが世界だと思い込んできたから。
「だからこうやって私が橋を生成したとしても、それをあなたは現実だと受け止めることができる。」
「これがあなたにとって唯一見えている世界だから。」
「さあ目覚めましょう。と言っても目覚めても目覚めなくてもあまり変わりは無いでしょうけど。」とアルムヘイルは微笑む。
前回
004
消毒の匂いが私の鼻孔を刺激して、私の意識はここに構成される。
バラバラに散りばめられた記憶がパズルのピースの様に繋がり、二重螺旋を描く。
《嗚呼マントルが…………棄てられた野に立つ…………嗚呼静かな………娘の視野で》と途切れ途切れにラジオから力強い男性の歌声が聞こえる。
「目覚めたか……」とルーゼルは言う。
「まずは一言。申し訳ない。」
「一応君の容体についてだが……君の身体の殆どは異常はなかった」
「あいつは一体何者なんだ。」と私は訊く。
「……ここの土着の歴史について調査しているある学者に会いに行ったんだ。尤も第三次世界大戦後の地理と歴史、そして文化は乱雑に混じりあってるせいで探し出すのは苦労したよ。
「ここの町は元々東南の港町だった。今じゃそんな面影も無いがな。
「十六世紀、日本という場所にいた戦士たち、日本では武士と呼ばれていた男たちが血と闘争を求めてスペイン等の傭兵として戦っていたらしい。
「ネーデルランドとスペインの戦いがちょうどここで起きていたらしい。その戦いで死んだ怨霊がここに憑いているというのが彼の見解だ。」とルーゼルは言う。
「だから兜のような……」
「ああ。君にこれ以上戦えとは言わない。近傍に駐留している国連軍東亜方面軍第六師団に出動要請を出すことを検討している。」とルーゼルは言う。しかし彼がただの怨霊ではないだろう
「待ってくれ。私がやる。あいつに師団差し向けたところで征伐はほぼ無理だ。」と私は直感的な意見を言う。
「第六師団は南方最強と名高い師団だ。そんな彼らでも駄目なのかい?」
「ああおそらく。奴に実体はほぼ無い。そんな豆鉄砲如きじゃほぼ無意味だろう。」
「私があいつとやって死んだら、歩兵でも戦車でも爆撃機でも差し向けるといい。」と私は言う
「あいつと同じか…」とルーゼルは呟く。
あいつとは誰だ?
005
地面には私を迎え入れているかのように、杭が突き刺さっている。
「士よ、やはり再び来たか。」と甲冑を着た彼はそう言う。
「タイムライン、その座標大きくがズレている。ここは俺の居場所ではない。しかしここから俺は離れることはできない。」と彼は言う。
タイムライン?
「西へ行くのだ。思慮の翼を持つ士よ。いや。鯨に魅入られた者よ。」
「思慮の翼とは何なんだ?」と私は思い切り、彼に聞く。
「そうかあんたにはなにも見えていないのか。ならば、考えるんだ。翼とは何か、翼というのはどのようなものか、そのままでは君はこのまま繭に閉じこもるだけだよ。」と彼は言う。
翼。
大空を舞う鳥のようで、気高く、美しく、そして力強い。
思慮。人の持てる知恵の結晶。思考は脳という器官の中で行われる幻想。そのようなもの現実世界に持ち出せる筈がない。
「常識を棄てるのだ。士。君の知っている世界の常識というのは物理という法則に縛られたただの一面的でしかない。」と彼は言う。
脳に刻み込まれた常識など棄てることは出来ない筈だが、この時の私は言われるがまま、常識をかなぐり捨てた。
彼は兜を外し、純白で潔白な白髪を露わにする。
彼の顔立ちは端正で、美しいと姿であった。
その白髪の男が語り掛ける。
「さあ今だ。この歪曲された世界を君はこの眼で視るのだ。」
気が付いた時には身体は大空に舞っていた。
背中に不気味に生えた白い翼はまるで天使を連想させる。
「そうだ。君には翼があるのだ。今の君なら私を連れていける。」と彼は言う。
「連れて行ってくれ。」と手を差し出す。私がその手を取る。
さあ。この世界を再び整ったものに作り替えるのだと彼はつぶやく。
次の瞬間。
空高くから飛んできた二本の刀が、私と男に一本ずつ刀が突き刺さり、地面に打ち付けられた。
私に生えていた刀はいつの間にか消えている。
上空から黒い翼を持った男が舞い降りてくる。
その姿は自分と瓜二つだが、髪の色、目の色、翼の色はすべて黒。
まるで鴉のような漆黒であった。
「お前たちの方法では世界は直らない。」
「まるで説明書を読まない子供の様にただ直したいものを壊すだけだ。」
「その自覚はあるかい?マリーンと過去より出でた士よ。」
「オマエタチが破壊しようとしているのは士の魂ではない。」
「この壊れかけたタイムラインだ。」
「西だ。私と共に西へ向かうのだ。」
「マリーン、そして士よ。」この言葉で世界は暗転する。
007
黒。
むなしいほどの黒が目の前を覆う。
「西へ行くのね」
「それは義務ではない。ただ貴方はそれを望んでいる」と少女、アルムヘイルは顔を覗き込む。
「黒髪の己の似姿に唆されて。」
「私が見たのは幻か?」と私は少女に訊く。
「翼を生やした人間なんて本当に存在しているのか?」と私はアルムヘイルに訊く。
アルムヘイルは世界のネジを巻きこう言う。
「見えているものだけが世界ではない。」
「そもそも見えているというのはなんだい?」
「あれ自体、ニューロンが視せる一種の幻でしょう?」
「本当にそれが存在しているかもわからない。ただ見えている錯覚を世界だと認識している自分の脳が補正という名の色眼鏡をかけさせて、脳の中にまるで映写機のように投影させている。」
「違う?」
いや違わないかもしれない。私にそれを反証することは出来ない。
なぜならそれが世界だと思い込んできたから。
「だからこうやって私が橋を生成したとしても、それをあなたは現実だと受け止めることができる。」
「これがあなたにとって唯一見えている世界だから。」
「さあ目覚めましょう。と言っても目覚めても目覚めなくてもあまり変わりは無いでしょうけど。」とアルムヘイルは微笑む。
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