ベラルーシの部屋ブログ

東欧の国ベラルーシでボランティアを行っているチロ基金の活動や、現地からの情報を日本語で紹介しています

ごんぎつね論争

2013-06-14 |   新美南吉
 新美南吉生誕100年のこの年、必死になって翻訳作業、推敲作業、さらにはいろんな編集部に掲載依頼のため、走り回っていたころであった、5月9日(ベラルーシでは第二次世界大戦の戦勝記念日)「ごんぎつね論争勃発」なる記事が出ました。
 読んだ人もいると思いますが、せっかくなのでこのブログでもご紹介します。

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小学生が書いた「ごんぎつね」の感想で議論勃発 ごんは撃たれて当たり前?

 小学校の国語の教科書では定番の童話「ごんぎつね」。この物語に対する1人の小学生の感想が、2ちゃんねるのスレッド「姪っ子のごんぎつねの感想が問題になっているんだが……」で議論を呼んでいます。

 覚えていない方のために簡単にあらすじをご紹介。いたずら好きなきつねのごんは、ある日兵十が病気の母親のために用意したウナギをわざと逃がしてしまいます。ところが、その後母を失って落ち込む兵十を見てごんは反省、償いのために魚や栗を兵十の家に届けはじめます。しかし、そうとは知らない兵十はごんがまたいたずらをしにきたのだと勘違いし、ごんを火縄銃で撃ってしまう。そこではじめてごんが食べ物を運んでくれていたことに気付くというお話です。

 多くの子供は「ごんがかわいそう」という感想を持ったようですが、投稿者の姪は「やったことの報いは必ず受けるもの」「こそこそした罪滅ぼしは身勝手で自己満足でしかない、(兵十はごんの反省を知らないのだから)撃たれて当たり前 」とシビアな感想を抱いたようです。この感想が学校で物議を醸しているそうで、スレッド内でも大きな議論に発展しています。

 「小学生でそこまで考えられるのは凄い」「撃たれて当たり前って言うと物騒な子だと受け取るかも知れんが、これはこれで筋が通ってる」とこの感想を肯定的に評価する声がある一方、「ごんぎつねが悪いとしてもごんぎつねだって可哀想だろ」「ごんの気持ちも考えるように指導するのが大人」といった意見も。「感想」に対して問題があると指摘すること自体がおかしいという意見も多く出ていました。さまざまな捉え方ができるこの物語、あなたはどう思いますか?

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 というわけで、この記事を読んだあなたはどう思いますか?
 まず、私の一番の感想ですが、
「この記事書いた人! ここまであらすじを書くんだったら、ごんぎつねの作者は新美南吉だって、書いておいてよ! 今年生誕100年なんだからさ・・・!」
 ・・・でした。(^^;)

 で、改めてごんぎつね論争についてですが、私も小学生のとき、教科書で読みましたよ、ごんぎつね。私の同級生には、このようなシビアな意見の子はいませんでしたね。(時代が変わったのか・・・。)
 私も「死んじゃったごんがかわいそう。」と思いましたが、それ以上に、火縄銃を取り落とした兵十が、これからものすごく後悔するんだろうな・・・と思うと、胸が苦しくなる、と言うかどっちにとっても気の毒な終わり方の話なんだと思っていました。

 この論争の元になる発言をしたという女の子ですが、私は「これはこれで筋が通っている。」と思いましたよ。
 と言うのも、「ごんぎつね」のロシア語訳を読んだベラルーシ人は、どっちかと言うと、この女の子の考えに近い感想を持つようなのです。

 南吉童話の作品のベラルーシ人の感想はちらほら集まってきており、まとめて翻訳して、新美南吉記念館にお渡しする予定です。
 でもタイミングよく(?)日本のネット界でごんぎつね論争が起きたので、この場でもベラルーシ人の感想を紹介します。

 すでに2作品「でんでん虫の悲しみ」「あめ玉」ロシア語版を掲載してくれた雑誌「ビブリヤテカ・プラパヌエ」の編集部長さんと副編集部長さんに「ごんぎつね」のベラルーシ語版も掲載してほしいとお願いし、原稿を渡してあるのですが、それを読んだ2人と私合わせて3人で、実はベラルーシでもごんぎつね論争をしていたのです。
 内容はこんな感じです。

編集長(以下「編」)「ごんぎつね読んだ後、涙が出た。」

副編集長(以下「副編」)「本当にいい話ですね。」

私「日本ではこの話は小学4年生の教科書に載っていて、まあ、日本の子どももこの話を読んで、涙するわけです。」

編「小学4年生の教科書? 内容はとても子ども向けではないですね。」

副編「死が強くテーマになっていますからね。兵十の母親のお葬式のシーンや、人間が動物を撃って殺したり・・・。」

私「児童文学だけど、宗教的な要素が多いですね。」

編「日本は仏教の国でしょ。動物に対する殺生は罪ではないの?」

私「罪ですよ。でもこのごんぎつねは、本当は動物ではなく、人間だと思います。本物の狐は栗を持って二本足歩行できないでしょ。」

副編「お伽話の中の動物の登場人物と同じで、動物の姿を借りている人間、ということですね。」

私「と言うことは兵十がごんを殺した殺人事件・・・。」

編「命もテーマになっていると思います。うなぎが食べられなかったから、兵十の母親は死んでしまい、つまりここで一つの命が消えてしまう。この一つの命の償いのために、ごんの命が一つ差し出された、という考えができますね。」

私「つまり贖罪がテーマの話ですね。でもごんはうなぎが食べたくて、盗んだのではないですね。他の魚も川に逃がしていたということは、魚の命をごんが救ったことになりますよ。うなぎも逃がそうとしていたようです。結果的に殺しちゃったけど、食べていない。」

編「でも兵十の母親が死んだのは自分のせいだと反省している。」

私「同じ一人ぼっちの境遇になった兵十に対して、親近感も感じています。本当は友だちになりたかったのかも。」

副編「でも人間と動物だから、共通言語がないことになっています。ごんが動物ではなく人間、という設定だったら、こんな
悲劇は生まれなかった。」

私「そうそう。言葉で説明できないから、こそこそ栗を持って行くしかなかったんですよね。その証拠に姿を見られたとたん、弁解の機会が与えられることなく、すぐ殺されてしまう・・・。」

編「罪を償うために栗やきのこを持って行っているけど、兵十が友だちから『それは神様からの贈り物だ。神様に感謝したらいい。』と言われたのを聞いて、ごんは本当に栗を持って行っているのは自分なのに、と不満に思っている。純粋に罪を償うつもりなら、自分ではなく神様に感謝する兵十に不満を感じることもないはず。」

副編「大体、神様には常に感謝しなくてはいけないですよ。」

私「こういうことをベラルーシでは子どもに教えているのですね。キリスト教の国だからでしょうか。」

編「そうですよ。神様に感謝するようにお話の中で教えることが大事です。だのに、それに対して反対の立場を取ったことに対する天罰として、ごんは殺される運命になった、という見方もあると思います。」

副編「動物は人間と比べて愚かで、神に感謝しないといけない、ということが分かってない。逆に人間である兵十やその友達は、宗教的に成熟しており、素直に神に感謝を捧げようとする。つまり、動物みたいに神様に感謝しないというのはだめですよ、とこのお話で、作者は読者を教育しようとしているのでは。」

私「うーん、日本はキリスト教の国ではなく、作者もクリスチャンではないので、そういう意図でこの作品を書いたのではないと思います。日本人の考える神様は、キリスト教の絶対神ではなくて、ヨーロッパ人の感覚で言えば精霊に近い感じです。」

編「じゃあ、天罰ではないってことですね。」

私「日本文学や童話に出てくる神様はもっと身近な親しみやすい存在ですね。最後に兵十が『ごん、お前だったのか。』ときくけれど、それに対してごんがうなずきますよね。もう死にかかっているのだから、何も言わずにあの世に答えを持って行くこともできたはずなのに、うなずく。これはやっぱり、神様じゃなくて自分こそが栗を持ってきていたことを兵十に認めてもらいたかった、心の表れだと思います。」

編「純粋な罪の償いの気持ちだけ持っていたなら、別に自分が持って来ていたことを兵十が知っていようが知っていまいが、どっちでもいいこと。なのに、最後の最後で、『自分が』というのが出てきて、兵十に伝えようとする。知ってもらおうとする。」

副編「純粋な贖罪の話ではないですね。」

私「罪滅ぼしがテーマではなく、ごんと兵十という2人の登場人物のコミュニケーションのあり方のほうにテーマの比重があると思います。」

編「この2人の間にはまるでコミュニケーションがないけどね。動物と人間で言葉も通じてない、という設定だし。共通の言葉を持たない者同士のコミュニケーションですね。」

私「成り立っていないコミュニケーションから発生する悲劇がテーマのように感じます。ごんと兵十が会話できていたら、ごんは死んでいなかったはず。」

編「死なないと理解し合えない、という状況の中、話が終わってしまいます。」

副編「とてもいい話だけど、やっぱり子ども向けの話ではないですね。大人向けの話だと思います。」

編「子どもは親や先生、大人といっしょに読むほうがいいと思います。」

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 日本ではごんぎつねは、キリスト教的贖罪の話、として捉える考えもあるのですが、キリスト教徒のベラルーシ人は、そのようには感じなかったようです。
 ともあれ、いろんな見方ができることが名作の条件だと私は思うのですが、みなさんはどうでしょうか?


新美南吉の作品をベラルーシ語で朗読しました

2013-06-12 |   新美南吉
6月12日と13日にかけて国立ベラルーシ文化研究所で行われた第2回国際学術会議に出席し、新美南吉の童話作品のベラルーシ語訳を朗読しました。
 会議のテーマは「ベラルーシ文化 現代におけるその実態 文化発展のための提案と異文化コミュニケーション」というもので、参加者の9割がたはベラルーシ人ですが、ウクライナ、イギリス、ブルガリア、イラン、ベネズエラなど、そして日本(私)など全部で10カ国から参加していました。
 名簿には私の名前の横に「日本」とあって、いかにも日本からわざわざやってきたみたいな表現でしたが、実際にはミンスク市内からやってきた者です。

 こういう学術会議はただ傍聴するだけなら簡単なのですが、登壇して日本語ではない言語で何かしゃべらないといけないのは大変です。
 しかし、今年は新美南吉の作品をベラルーシ語に翻訳したので、それを発表することにしました。

 発表論文は 
「自国文化をプレゼンテーションする方法と異文化の紹介としての児童文学翻訳(日本人作家新美南吉を例として)」
という大げさなタイトルを実行委員会の人につけられました。
 実際には、日本文化情報センターが今年、新美南吉の作品を翻訳することにした経緯、作家の紹介、そしてベラルーシ語に翻訳された作品の朗読を行いました。
 ベラルーシ語に翻訳した作品は今のところ4作品なのですが、あまり時間がないことから「去年の木」にしました。

 さて、私はベラルーシに住んでいる者ですが、ふだんはロシア語を使って生活と仕事をしています。
 ロシア語に比べるとやっぱりベラルーシ語には慣れていないです。
 ちなみにこの会議そのものは、ベラルーシ文化、特にベラルーシ語について大変な議論が起きていました。
 つまりベラルーシという国でベラルーシ人という民族が住んでいるのに、ロシア語に押され気味で、このまま何もしないとベラルーシ語・ベラルーシ文学の衰退、最悪に死語になるという危機感を持っている人がたくさん集まっている会議だったのです。
 基調講演などでは「このままではいけません。」「じゃあ、どうしたらいいのか?」と参加者の発言が沸騰状態に・・・。
 日本人の私は議論の中に入ることも語学力から言って到底無理なので、ずっとやりとりを聞いていました。
 私自身いろいろ感じることもありましたが、このテーマは新美南吉とは関係ないので、ここでは書きません。

 このような状況の中、日本の童話作家の作品をベラルーシ語に翻訳しました、と言うだけで、会議に来ていたベラルーシ人はみんな驚いていました。
 実際に朗読したのは会議2日目の分科会だったので、直接私の朗読を聞いていたのは、15人ぐらいでしたが、何とかベラルーシ語で朗読をしましたよ。
 たぶん史上初の日本の童話のベラルーシ語訳の朗読発表でしたが、何とか大役を終えました。
 前日発音練習してたら、うちの子から「発音おかしい。」とさんざんダメ出しが出されましたが、(あんたはいいよ、トリリンガルなんだからさ。>子)ロシア語だったらこんなに緊張しないのに、と思いながら登壇しました。

 聞いていたベラルーシ人参加者は「ベラルーシ語が死語になったら、どうしよう。」と思っているような人がほとんどだったので、日本語の童話がベラルーシ語に翻訳された、というだけで感動していました。「去年の木」の感想ですが、
「繊細なお話ですね。」「新美南吉の他の作品ももっと読みたい。」
ととてもよい印象だったようです。 

 この会議の報告書として、参加者全員の論文が一つにまとめられ、本になる予定です。
 実際には時間がなくて1作品しか朗読できなかったのですが、論文のほうは1人に割り当てられたページ数が多かったので、「去年の木」を入れて3作品を論文にまとめ、実行委員会に提出しておきました。
 報告書の紙幅の余裕があれば、3作品全部掲載される予定です。ただこの報告書ができるのは、たぶん今年の終わりだと思います。楽しみに待ちましょう。(できたら3作品全部掲載してほしいところです。)

 画像は私が「去年の木」をベラルーシ語で朗読しているところです。
 南吉さんの写真をバックにさせていただいて光栄です。
 

日本文化情報センターの活動「新美南吉生誕100年記念翻訳」

2013-06-10 |   新美南吉
 今年に入ってからずっとこのことを発表したかったのですが、ようやく翻訳作品がベラルーシの雑誌に公表されましたので、今日初めてご報告します。
 2013年に始まった、新美南吉生誕100年を記念した翻訳作業です。
 皆さんは「ごんぎつね」を教科書で、また絵本で「手袋を買いに」などを読んだことがあると思います。
 日本文学界で言えば「東の宮沢賢治、西の新美南吉」と言われるぐらい、有名な作家です。
 その新美南吉が今年生誕100年を迎え、故郷である愛知県半田市では今年初めから連日、イベントが催され、大変な盛り上がりとなっています。
 
 さて、日本文化情報センターは児童図書館内の一施設としてオープンしましたので、日本文化の紹介をするときに、児童文学についての紹介にも力を入れています。日本の児童文学だけに限れば、所蔵文献、情報量はベラルーシで一番だと思います。
 そのような弊センターが新美南吉の童話をロシア語とベラルーシ語に翻訳し、広く紹介しようと決定したのが、今年の1月初めでした。
 その後翻訳作業を進めてきたのですが、現在5作品をロシア語に、さらにそのうちの4作品をベラルーシ語に翻訳しました。
 このように書くと、私が1人で翻訳したように思えますが、実際に翻訳したのは私ではありません。
 どうしても外国語から母国語に翻訳するのは楽でも、その逆は難しいのです。つまり私の場合、日本語である南吉童話をロシア語やベラルーシ語に翻訳するのは難しいので、ベラルーシ人に翻訳してもらいました。

 その1人は私の娘です。母国語はロシア語で、日本語能力試験N3(3級)認定書を持っており、幼稚園から現在に至るまでベラルーシ語学級で学んでいる小学6年生です。
 短い作品は30分でさらさら翻訳してくれました。私だったら10倍ぐらい時間がかかるところです。
 しかし、何と言ってもまだ小学生なので、文章が子どもっぽすぎるのと、PCでの打ち込み作業は遅いので、手書きで書いた翻訳文を私がPCで打ち込み、さらにそれをベラルーシ人のニコライさんが推敲してくれました。
 ニコライさんは日本語の読み書きができる人なので、文章を推敲してもらったり、私の打ち込みミスを直してもらったりしました。
 
 さらに同僚である図書館司書さんで、ベラルーシ語のとても得意な人、さらに雑誌編集部の人たちにチェックしてもらいました。
 このように彫刻にたとえると新美南吉が書いた原作が原木で、うちの子がノミで大体の形を掘り出し、私が細かいところを削って、さらに多くのベラルーシ人の協力者さんたちが磨きをかけてくれ、ようやく一つの作品ができあがった、という感じです。

 現在はあちこちの雑誌編集部や新聞社などに掲載依頼をしているところなのですが、今日第一歩として、ベラルーシの雑誌「ビブリヤテカ・プラパヌエ」2013年6月号にロシア語に翻訳された2作品「でんでんむしのかなしみ」と「あめ玉」が掲載されました。
 新美南吉はベラルーシでは全く知られていない作家なので、私がロシア語で書いた作家の紹介も載りました。

 そして、美智子皇后陛下が子ども時代に新美南吉の童話を読んだときの思い出を、1998年インドで開催された国際児童図書評議会第26回世界大会での講演用の文章にされたものが、すえもりブックスから発行されています。
 この講演部分で「でんでんむしのかなしみ」について述べられている部分を、参考資料として編集部に渡したのですが、それもロシア語訳といっしょに掲載されました。
 児童文学に関わる司書の方々にとっては人種に関係なく、大変勉強になる文章です。

 この雑誌「ビブリヤテカ・プラパヌエ」ですが、翻訳すると「図書館は提案する」という何だかすごい雑誌名です。
 その名のとおり、ベラルーシの図書館司書向けに毎月発行されている業界紙のような雑誌で、一般向けには販売されていません。
 発行部数は5100部で、ベラルーシにある図書館、学校図書室に配られています。主な都市にある公立図書館には必ず置いてあり、まずは司書が読んだ後、閲覧室で自由に読める雑誌です。学校図書室には置いてあるところと置いていないところがあります。
 とにかく、ベラルーシ中の5000箇所の図書館で南吉童話が読めるようになったので、うれしいです。

 他の雑誌、新聞などにも掲載される予定です。公表され次第、この記事内でお知らせします。

 今回の翻訳作業については半田市にある新美南吉記念館からの多大なご協力をいただきました。
 新美南吉の公式写真の転載を許可してくださったり、翻訳作業中に出てきた細かい疑問についても丁寧に教えていただきました。
 本当にありがとうございます。
 このブログ記事についている写真も新美南吉記念館からの提供です。

 新美南吉記念館のサイトはこちらです。

 そして今年大変な盛り上がりを見せている新美南吉生誕100年記念事業についてはこちらです。
 イメージキャラクターのきつねのごん吉君のフェイスブックとか、とにかくすごいです。
 私は遠方に住んでいるので、今年中にはとても行けそうにもない半田市・・・。
 日本に住んでいる皆様、機会がありましたら、ぜひ新美南吉のふるさとを訪れてみてください。

 日本文化情報センターでは朗読会なども予定していますが、これらのロシア語・ベラルーシ語訳関連の活動が、新美南吉生誕100年記念事業実行委員会から、正式に認められ、後援を受けることになりました。
 ちゃんと実行委員会長様から、後援の認定書が送られてきました。
 感動です。いや、感動にひたっているだけではなく、ちゃんとベラルーシで南吉作品の紹介をしなくては! と気合が入っているところです。

 新美南吉作品のロシア語・ベラルーシ語訳についてはまた続報をこのブログで公開します。お楽しみに。

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 すえもりブックスの「橋をかける 子ども時代の読書の思い出」はロシア語訳も出ていますが、現在は絶版状態です。(日本文化情報センターには幸い寄贈してくださった方がいたので、一部所蔵しています。)
 この本に収録された皇后陛下の講演の内容は現在、宮内庁HP内で読むことができます。もちろん新美南吉の童話のことだけではなく、美智子様が読んでこられた児童文学についての思い出やお考えなどが書かれています。読んでいるこちらの心が洗われるような文章なので、ぜひ読んでみてください。
(本当にロシア語に訳してくれてありがとうございます。)

 新美南吉の作品と言えば、「ごんぎつね」「手袋を買いに」が有名ですが、そのほかの作品は知らない、と言う人もぜひいろんな作品を読んでみてくださいね。
 そういう私も新美南吉の作品を今までそんなに深く考えることはなかったのですが、勉強しましたよー。
 このことについても、また翻訳作業裏話など、おいおいこのブログで書いてみたいと思います。 

 それから「日本語能力試験って何?」と思われた方へ。日本人には必要ない試験なので、日本ではあまり知られていませんが、日本語を勉強している外国人の間ではとても重要な試験です。
 チロ基金はベラルーシで日本語を勉強しているベラルーシ人がこの試験を受験するのを支援する活動を行っています。
 日本語能力試験についてはこちらです。

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 関連記事のリンク集です。

 2013年6月12日と13日に国立ベラルーシ文化研究所で行われた第2回国際学術会議「ベラルーシ文化 現代におけるその実態 文化発展のための提案と異文化コミュニケーション」に参加し、発表論文「自国文化をプレゼンテーションする方法と異文化の紹介としての児童文学翻訳(日本人作家新美南吉を例として)」の中で新美南吉の作品「去年の木」のベラルーシ語訳を朗読しました。詳しくはこちらです。

 新美南吉生誕100年記念に関してロシア語でベラルーシ人向けに紹介しているサイトはこちらです。

 2013年5月にネット上で起こった「ごんぎつね論争」についてはこちらです。

「手袋を買いに」のロシア語訳についてはこちらです。

 おまけ。ニコニコ動画で見つけた「ごんぎつね」と「二匹の蛙」の動画。

 2013年7月に日本文化情報センター内で開催の新美南吉展についてはこちらです。

 ベラルーシの児童雑誌「カチェーリ」2013年7月号に掲載された作品についてはこちらです。

 2013年7月25日付のベラルーシの新聞「ゴーラス・ラジムィ」紙に新美南吉を紹介する記事、作品がベラルーシ語に翻訳されたニュースが掲載されました。こちらをご覧ください。(記事はベラルーシ語で書かれています。)

 2013年7月30日にミンスク市立第5児童図書館内で行われた新美南吉生誕100年記念朗読会についてはこちらをご覧ください。

 2013年7月31日付読売新聞夕刊でベラルーシで南吉童話が紹介されることが記事になりました。が、しかし受けた取材の内容はほとんどカットされたので、ブログ上でご紹介しています。

 2013年8月3日付のベラルーシの新聞「クリトゥーラ」紙に新美南吉を紹介する記事、ベラルーシ語に翻訳された3作品が掲載されました。詳しくはこちらをご覧ください。(記事はベラルーシ語で書かれています。)

 2013年8月のベラルーシのネットニュース「マラドスツィ」で新美南吉生誕100年記念朗読会のニュースが報道されました。
 詳しくはこちらをご覧ください。

 2013年8月7日付ミンスク市立児童図書館ブログで新美南吉朗読会が紹介されました。

 「新美南吉と私」と言う連載記事を投稿してみました。
 
ベラルーシ国立図書館が隔月で発行している雑誌「ライブラリー・ワールド」2013年第4号で、新美南吉が取り上げられ、「去年の木」のロシア語訳が掲載されました。詳しくはこちらをご覧ください。

 2013年9月30日世界翻訳の日に開催された新美南吉作品ロシア語・ベラルーシ語翻訳記念朗読会についてはこちらです。

 2013年7月30日と9月30日に行われた朗読は、新美南吉生誕100年記念事業実行委員会より、後援を受けています。
 新美南吉生誕100年記念事業のサイト内「後援事業・その他」のページで、この朗読会についても紹介されました。

 ベラルーシの児童雑誌「ストラナ・スカザク」にロシア語訳の新美南吉童話が掲載されました。

 2013年10月20日付読売新聞滋賀県版のコラムで紹介されました。詳しくはこちらです。

 新美南吉の作品についてベラルーシ人の感想文の日本語訳はこちらこちらとこちらです。

 ベラルーシの文芸雑誌「マラドスツィ」2013年10月号に南吉童話のベラルーシ語訳2作品が掲載されました。詳しくはこちらです。


ベラルーシの雑誌「ビブリヤテカ・プラパヌエ」2013年11月号に学校図書室で司書をしている方の新美南吉童話の感想が掲載されました。その日本語訳はこちらです。


 2013年11月15日にバラノビッチ市内の図書館で朗読会を行いました。詳しくはこちらです。


 2013年12月12日にオシミャヌイ市内の図書館で朗読会を行いました。詳しくはこちらです。

 2013年12月19日にミンスク市内の学校で朗読会を行いました。詳しくはこちらです。

 ベラルーシの雑誌「ビブリオテカ・プレドラガエト」2014年1月21日発売号に新美南吉の紹介記事が掲載されました。詳しくはこちらです。

 新美南吉記念館が毎年発行している新美南吉記念館研究紀要の第20号にベラルーシから寄稿しました。また記念館だより171号でも翻訳活動について紹介されました。詳しくはこちらです。

 新美南吉の代表作である「ごんぎつね」のベラルーシ語訳がベラルーシの文芸雑誌「マラドスツィ」2014年12月号に掲載されました。
 詳しくはこちらです。

「ごんぎつね」を読んだベラルーシ人からの感想はこちらです。

ベラルーシとロシアの放射能汚染地図

2013-06-06 | 放射能関連情報
 現在のベラルーシの放射能の汚染状況はどうなっているのか? ときかれることがあります。
 そういう私自身もとても興味があります。しかしなかなか情報が見つからなくて困っていました。どうやらこの国では汚染の状況は秘密事項になっているにちがいない、と思っていると、実は簡単にダウンロードできることが分かりましたので、皆さんにもお知らせします。

 チェルノブイリ原発事故の後、放射能はどうなっているのか? といった土壌の調査ですが、広範囲にわたるため、細かく毎年行われて細かく公表されていません。大掛かりでしかも公式な発表はこの2009年のものです。
 この本は「Атлас современных и прогнозных аспектов последствий аварии на Чернобыльской АЭС на пострадавших территориях России и Беларуси」というもので、分かりやすく言えば、チェルノブイリ原発事故の被害を受けたロシアとベラルーシの地域の現在の汚染状況を表した地図と未来の予測地図を掲載したものです。

全てロシア語なので分かりにくいですが、こちらのサイトからダウンロードしてみてください。

http://www.chernobyl.gov.by/index.php?option=com_content&view=article&id=26&Itemid=55


 この↑ サイトを開くと、ページの右下のほうに緑色の矢印があり、その横に水色の文字があります。
 これがロシア語の「ダウンロードする」なので、それをクリックしてください。
 そうするとPDFファイルで汚染地図をまとめた本の中身が全部ダウンロードできます。
 ただ全部ロシア語表記で、しかも横向きに地図を掲載している箇所もあるので、分かりにくいと思います。

 また、これは2009年の調査結果を表した地図がほとんどですが、中には過去の汚染地図や、未来の予測地図もあるので、注意してください。
 
 表題からも分かるようにウクライナの汚染地図は掲載されていません。あくまでベラルーシとロシアの両国で共同で作成した物です。
 またロシアは広いので、ロシアの中でも汚染地域になった3つの地域しか地図はありません。
 それとベラルーシがくっついた変な形が「全図」という扱いで表示されているときもあるのですが、見慣れていない人から見ると「これはどこの国?」と変に思うかもしれません。

 ちなみにこの本は、一般には市販されず、関係機関にだけ配られました。そのため一般人が目にする機会はほとんどありません。
 放射能や被曝などに関心を持っている一般人はダウンロードしてみてください、という感じです。
 逆に言えば、関心のない人は全く目にすることなく過ごしているということです。

 画像はミンスク市内のある普通の公立の学校の図書室でこの本が所蔵されているのを発見し、驚いて撮影させてもらったものです。
 ミンスク市立の学校の図書室全部にこの本があるわけではなく、この学校は特別なほうです。
 ちなみに私が勤務している公立児童図書館にはこの本はありません。

 でも、PCで見ることができるのでよかったです。
 このように毎年ではありませんが、ロシアとベラルーシは公式に汚染地図を作成しきちんと発表しています。
「ロシアやベラルーシの国なんて信用できない。」と穿った見方をする日本人もいるかとは思いますが、私としては
「これが公式発表された地図で、現在のところ最新版ですよ。」
とこのブログでも情報提供したいです。
 日本の皆様の疑問への回答に少しでもなれば幸いです。
「このページの地図の意味が知りたいけど、ロシア語なのでどうしても分からない。教えてほしい。」と言う方は、私宛にメールでページ数などご連絡ください。
 

  





ベラルーシへ来た日本人の方と話をしていて気づいた点

2013-06-04 | ベラルーシ旅行・長期滞在・留学注意情報
 ベラルーシへ来た日本人の方と話をしていて気づいた点をお知らせします。


<ベラルーシで使われているお金はベラルーシ・ルーブルであることを知らない>

 ベラルーシで使われているベラルーシ・ルーブルはロシア・ルーブルとは全く別の通貨です。

 
<ベラルーシではベラルーシ・ルーブル以外のお金も買い物に使えると思っている>

 日本のスーパーマーケットで「4890円になります。」とレジの人に言われて、米ドルやユーロを出しますか? 出さないでしょ? それと同じでベラルーシのお店でベラルーシ・ルーブル以外の通貨で支払おうとしても、拒否されます。
 (例外はあるけれど、違法行為になったり、普通日本人がベラルーシでは買わないものばかりです。)
 日本人で、ベラルーシではドル(あるいはユーロ)で払ったら、ベラルーシ・ルーブルのお釣りが出ると勘違いしていた人がいたのでびっくりしました。そんなことはありえない、と思ってください。


<ベラルーシでは日本円が簡単に両替できると思っている>

 アジアの観光地へ旅行に行って慣れている、と言う人がベラルーシへ行ったとき、日本円が簡単に両替できないことに気がついて驚いています。
 ベラルーシでも日本円は両替できます。しかし両替を扱っているところが非常に少なく、わざわざそこまで場所を探して行かなくてはいけません。しかもレートが悪くて損です。
 日本国内でベラルーシ・ルーブルに両替しておくことは無理ですので、ベラルーシ国内で両替しやすいドルやユーロにあらかじめ両替してから、出発してください。
 あるいはベラルーシ国内ではクレジットカードで支払えるところはクレジットカードで支払う、という方法もあります。
 ただし、クレジットカードでの支払いができないところや場合もありますので、注意してください。最低限の現金を持っていくのは当然です。
 そして支払いは原則ベラルーシ・ルーブル払いであることをお忘れなく・・・。


 他にも気づいたことが出てきましたら、このブログで公開します。(旅行代理店もこういう注意事項を事前に伝えているはずなんですが・・・。)
 これから旅行シーズン、皆さん情報収集してからベラルーシへ出発してくださいね。

キクイモについて

2013-06-01 | 放射能関連情報
 2011年に「自分と子どもを放射能から守るには」(世界文化社)の日本語訳が出版されたとき、日本で著者のバベンコさん(ベルラド研究所副所長)が講演会を行ったとき、キクイモの話をしたのです。
 キクイモは日本でも栽培されており、根っこの部分を食用にするのですが、ロシアやベラルーシでは健康食品として、最近注目されているのです。 

 なぜなら、キクイモは汚染地域で栽培しても放射能を絶対吸収しない、つまり安全な食材とされているからです。
 つまり、汚染地域でも栽培できる根菜で、農業の活性化に役立つかもしれないのです。
 さらにキクイモは食物繊維(ペクチンではなくイヌリン)が多く、これもアップルペクチンのように放射能を排出する作用がある可能性が高いのです。

 そこでベラルーシではキクイモが健康によい食品として浸透してきており、商品化がされています。
 スーパーで売られているセルロース商品にも、キクイモ配合のタイプがあります。
(チロ基金がセルロースを内部被曝が認められた子ども達に配布したときの活動をご参考になさってください。)

http://blog.goo.ne.jp/nbjc/e/5d48a74eef693b9246d188dfa277d076


 そんな理由から、バベンコさんは日本でも栽培、摂取を奨励したわけなのですが・・・
 その後、日本で栽培されているキクイモから放射能が検出された、という情報が飛び込んできました。
 栃木県の調べによります。こちらのページにあるリストのうち2012年11月19日から22日測定分のうち、20日更新の表をご覧ください。

http://nasushiobara.ficsc.jp/nasushiobara/search.htm?key=%E3%82%AD%E3%82%AF%E3%82%A4%E3%83%A2

 
 これを見て私はがっかりしました。少ない量で基準値以下なので出荷もできるし食べられる量ですが、キクイモが放射能を絶対吸収しないという確証がなくなったと思ったからです。
 他の時期での検査では「ND」だった結果もあります。一方で2013年3月の検査でも、少しですがセシウム137が検出されています。
 
 ところが先日ベルラド研究所へ行ったとき、この「日本のキクイモから放射能検出」の話をバベンコさんにしたところ、
「キクイモが放射能を吸収することはありえません。それは測定の間違いです。」
と言われました。
 キクイモは放射能を吸収しないというのが、常識だということでした。

 栃木県のキクイモのケースはどうなのか? というと、測定の間違いで、土がついていた、空気中の放射能もいっしょに測定した、などのミスが原因だろうということでした。
 もう一度精密な測定をするようにアドバイスしていました。

 もっとも日本のキクイモは塊茎が小さく、なかなかイヌリンが採取されないそうなので、ロシアやベラルーシと栽培されているものとは、品種が微妙にちがうのかもしれません。

 ロシアやベラルーシでは健康食品として注目を浴びているキクイモです。日本にとっても役立つかもしれません。
 日本でも研究をして、本当に汚染されない食品と証明されれば、汚染地域での農業活性化、安全な食品の提供、さらには放射能排出作用、と一石三鳥にもなる食材ですので、どうか関係者の皆様、キクイモ研究をお願いします。