「苦労してN1、N2の文法を暗記しても全然使うところがない」という話をよく聞きます。
確かに自分の意志を伝えるだけならN1・N2の文法はまったく必要ありません!!
「じゃあいつ使うのよ?!」
と思った方に、今日はN1・N2文法の効能をお教えします。
1 コスパ最高
N1・N2の文法を勉強した方ならわかると思いますが、「この後悪い結果になる」という文法がとても多いです。
<N2>
~したものの
~したあげく
~ばかりに
~ったら
~どころか
~に限って
~のあまり
~つつも
<N1>
~はおろか、
~たが最後、
~ならまだしも
~しようものなら
~ときたら
~したところで
~しようにも
~だに
日本人は言葉に敏感なので、悪い結果を聞かなければいけない場合できるだけ「心の準備」をしておきたいと考えます。
この文法を使ってもらえると心の準備ができて悪い結果でもそれほどショックを受けないで聞くことができます。
そして後半が悪い結果と決まっているので、伝えるのは前半だけで十分です。
「一生懸命勉強したところで・・・(不合格に決まっている)」
「N1に落ちたが最後・・・(就職なんてできない)」
聞き手は心の準備ができて、話し手は話す量が半分で済むんです。
効率的でしょ?
そうそう、N1の長文読解、文章が長すぎると思いませんか?
実は日本人はこの表現が出て来ると後ろの内容が予測できるので、読むスピードが上がるんです。N1ではそれも計算に入れて敢えて長い文章になっています。
2 気持ちを伝える
以前、日本人は事実だけではなく、「気持ち」も伝えるとお話したことがあります。
台湾に留学した。
うれしいとき:「台湾に留学できた」
嫌なとき:「台湾に留学してしまった」
(父が私を)台湾に留学させた。
うれしいとき:「台湾に留学させてくれた」
嫌なとき「台湾に留学させられた」
実は「うれしい」「嫌だ」以外にもっと複雑なことも伝えられるんです。
第三者の行動を「ずるい」と思っている
~をいいことに
~にかこつけて
「あいつ、彼女が出張に行ったのをいいことに、(他の女と会ってたんだって)!」
「補助金の申請にかこつけて(不正をするなんて許せない)!」
「したくない」と思っている
~せざるを得ない
「~なければならない」に嫌な気持ちをプラスした言い方です。
「退職せざるを得ない」
意外だと思っている
~にしては
~わりには
~かと思ったら
~といっても
「小学生にしては大きいね」
「キレイといってもモデルほどじゃない」
3 「とても」「すごく」「非常に」以外の表現を使いたい
会話でよく出て来る「とても」「すごく」ですが、日本人同士でもそればかりを使うと「小学生の作文じゃないんだから」と言われてしまうんです。
その「非常に」を表す言い方は実はたくさんあります。
それぞれ使える場面が違うのでしっかり覚えておきましょう。
~といったらない
~にたえない
~極まりない
~てならない
~にも程がある
【感情】個人的な気持ち
~といったらない
「言ったら・・・あ、言葉がない」なので「言葉にできないくらい」という意味です。
うれしいといったらない
悲しいといったらない
【感情】正式な場面で
~にたえない
~てならない
演説でよく使う言い方ですね。
耐えない=耐えられない=我慢できない、の意味です。
「ならない」は自動詞・他動詞の「なる」「する」を考えるとわかりやすいです。
「なる」は自動詞、つまり「自分の意志ではどうにもできないくらい」を表しています
「喜びにたえません」
「悔しくてならない」
次は悪い意味の言葉です。
【性質】直接非難したいとき
~にも程がある
「どんなものにも程度があるのにあなたはそれを知らない」という意味なので、人に対して使います。
「こんなこともわからないなんて、バカにもほどがあるでしょ」
【性質】間接的に非難したいとき
~極まりない
「私はそう思う」という言い方です。間接的に責めています。
失礼極まりない
危険極まりない
4 「私の個人的考えじゃないよ」と言いたい
客観的な表現
~かねません
~もんじゃない
~というものだ
~わけだ
~ことだ
~わけにはいかない
~きらいがある
~ずにはすまない
同調圧力の強い日本において、「みんなもそう思ってるよ!」というのはとても大切です。
なので「客観的」に伝えられる表現はとにかくたくさんあります。
もちろん、「私の意見」「私がする」という表現もありますが、比べてみると本当に少ないですね。
主観的
~だもん
~ものがある
~ずにはおかない
5 古語表現はかっこいい
アニメほどではないですが、実際の会話でも古語文法はよく出てきます。
使わなくても構いませんが、上手に使えると「すごい!」と思われますよ。
<ず>
中国から漢詩が伝わったときに「不・無・没・未・非」は全部まとめて「ず」にしたそうです。
現代日本語では「ない」ですが、短く表現できるので「ず」を使う場面も多いです。
学校に行かずに(学校に行かないで)
<まい>
「まい」も否定ですが、もっと強い意味です。第三者に対して使います。
絶対に行くまい(絶対に行かないだろう)
行こうと行くまいと関係ない(行っても行かなくても関係ない)
<げ>
楽し気、嬉し気のような使い方ですね。現代語では「楽しそう」「うれしそう」と使います。
ちなみに「よさげ」は若者言葉です(普通は感情だけです)
<がたい>
漢字は「難い」です。現代文法では「にくい」と読んで「食べにくい」「付き合いにくい」と使いますよね。
「がたい」を使う場面は限られているのでそのまま覚えるのをおススメします。
近寄りがたい・得難い・ありがたい・何物にも代えがたい
<み>
形容詞を名詞にするときに「さ」をつけるのはご存じだと思います。
でも「み」をつける場合もありますよね。
「高さ」「高み」「深さ」「深み」・・・
実は「み」の方が歴史が古く、主に精神的なものに使います。「さ」は具体的なものに使います。
このプールの深さは1mだ。
彼の話には深みがある。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます