リバーリバイバル研究所

川と生き物、そして人間生活との折り合いを研究しています。サツキマス研究会・リュウキュウアユ研究会

岐阜新聞 鮎の12ヶ月 連載2007年 3月

2008-01-01 17:30:56 | アユの12ヶ月 川面からの記録
 春だ。遡上してくるアユの写真をこの稿に添えたいと思った。

 岸辺でカメラを構えて待っていればそんなに苦労しなくても水中撮影出来るのではないか。

 私は武儀川の合流部から少し下手に住んでいる。対岸の岸辺は昨年より河床の掘り下げ工事で土木機械が土砂を運び出している。
川の中で工事をしているわけではないのだが、アユが遡上するのは降雨の後少し水量が増した後だ、そんな時には岸辺が冠水して濁りが川に入る。濁りといってもアユの遡上に影響があるほどではないのだが、天下に知られる清流長良川。遡上アユの水中写真が濁りに霞んでいては、台無しではあるまいか。下って濁りの少なそうな場所を探した。

 藍川橋まで下ると津保川の合流部で大規模な護岸工事をしている。遠目には水は澄んでいるようでも、水中から見ると濁りはかなりのものとなる。
釣りをする方はよく「笹濁り」という表現をされる。笹の葉っぱくらいの白さの濁りのことだそうだが、笹濁りの時水面からは魚が見えても潜ってみると、見える距離は伸ばした手の先ほどもない。そして、濁っている時は魚も用心深く、たやすく近寄らせてはくれない。

 さらに下流へと向かう。何カ所か水辺で工事の場所があり、濁りが消える辺りまで下ると、また何かしら岸辺で土木機械が動き回っている。
穂積大橋まで下ると橋脚の補強工事の最中だった。橋脚のまわりに積まれた土嚢越しに、水中ポンプが濁水をくみ出していて、その濁りが薄く下流に流れていた。さらに下り墨俣を過ぎたら長良川河口堰によって流れの緩やかになった部分になる。平瀬の部分は無くなってしまうので岸辺での撮影をあきらめた。
遡上が本格化するころには年度末の土木工事も一段落することだろう。遡上するアユについては次回とすることにした。

 被写体としてみてもアユは魅力的な魚だ。それは、アユが人に慣れるからだ。

 柏手を打つと寄ってくる鯉はその代表的なものだが、水槽や池などで飼育すればかなりの種類の魚は慣れる。また、卵や仔魚を守るために産卵床に陣取っている魚は、人に慣れるわけではないのだが、かなり人が近づいても逃げることがない。アユは人から餌を貰うわけでも、子どもを守るわけでもないが、近寄りやすい魚だ。

 アユは石の上にはえた藻類を餌とする。その餌を食べるためにアユは石の廻りに縄張りを持つ。その縄張りアユが守っている魅力的な石の近くに近づいて、ジッと待つ。いったんアユは逃げるのだが、近くにいた別のアユが石の表面の藻類をたべ始めると、もう縄張りアユはたまらない、後からきたアユを追い払い縄張りを取り返す。そして観察者を横目で伺いながら、石の上の藻類をせっせと食べるのだ。


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