いくみさんの実家はかつて真珠の養殖が盛んだった場所なのだそう。
山育ちなので海はある意味であこがれ。
そこから更に西の愛南町の海は沖縄の海のようと聞いていた。
一度見て見たかった。
愛南町に暮らす手塚さんの家から徒歩2分で西海町。
鹿島へ泳ぎに行くことにした。
鹿島は無人島。
そこでキャンプしようとテントを予約していたが、
電気も飲み水もない無人島に、女と女子ではサバイバルすぎるようで、
後日、役場の方からその覚悟のほどを再確認された格好。
すぐにやめて渡船場にある宿を予約しなおした。
手塚さんはお仕事になってしまい、おばさん二人(私といくみさん)、Mちゃんと友達で鹿島へ。
10分の船旅はそれだけで旅心をくすぐる。
鹿島では大きなヘルメットをかぶって初心者でも海中ウオークできる。
空気のホースが海中をはっているのが見えた。
おばさんが着替えに右往左往している間に、
女子はさっさと着替えて岩場に行きもぐっていた。
親代わりで責任があるので「遠くへ行かないでね」と諭しながら、
実は私は足が届かない岩場での水泳は初心者。
彼女らには日常的なことでいくみさんなど、海育ち。
足が届くところで泳いだことがないと言うではないか。
やっとプールを25メーター泳げるようになったおばさんなど
歯が立たないと思ったが、海の中は案外気持ちよかった。
Mちゃんがシュノーケルを貸してくれて初めて体験した。
こんなんで息ができるのかなと水中に顔をつけてみた。
水深たったの「20センチ」の世界を垣間見て、あたしは心底感動した。
指の半分サイズの青い魚が20匹群れているではないか。
オレンジと緑のシマの細長い魚や、
色はそれほどきれいではないがぺったんこの魚が泳いでいる。
「ここは沖縄???」と、びっくりするほど至近に熱帯魚がうようよいるのだ。
水深20センチで左手に浮わを持ったおばさんは、
海岸からたったの2メートル沖へ出てみた。
海の中には谷や山があってそこは熱帯魚の天国。
私の気分は人魚なのだった。
たまらなく楽しくて「生きていて良かった」と思ったほど。
そこへ叫び声が。
水中から顔をあげるとサルがバックのファスナーを開けて、
私のバスタオルを取りだしているではないか。
人間とまったく同じ動作をしていることにショックを受けた。
いくみさんも気づいて「ワーワー」と声を出しながら急いで岩場に行く。
人間になれているので、逆に威嚇して傍でこちらを見ている。
時にはバックを持って行ってしまうと聞いていたが、
あんなに堂々と荷物を開けるとは驚きだ。
安全の為にもっと海岸に近い岩場に荷物を移動した。
水深20センチ、再び我を忘れてお魚の群れに夢中になっていたら
叫び声が聞こえた。
今度はもっと大きなサルが我々の荷物をあさっている。
こらー!!と叫んで岩場にもどろうとしたが怯まない。
カバンの中から飲み終えたジュースのカラを出して歯で破り捨てている。
「おらー―!!」と叫んで水を掛けると、牙をむいて今にも飛びかかってきそうだ。
まっすぐこっちをにらんで前かがみになっている。
サルのくせに根性が座っている。
とっさに「犬猿の仲」という単語が思い浮かんだ。
きっと犬には弱いだろうと思い「ウ―――ワンワンッ」と吠えるおばさん(=私)。
いくみさんはキャ―っと海の方に下がったが、私は馬鹿にされるもんか!と
水を掛けながら「わんわん」攻撃だ!
その体制でしばしにらみ合い。
やっと諦めて去って行った。
バックに入っていた、いくみさんのメガネのつるが根元から割れてしまった。
奇跡的に鼻の上にのっかっている(笑)
高い海水浴になったね~~と同情するしかない。
女や子供を馬鹿にするんだというが、子供は小さいから判別できるとしても
女を認識する根拠を知りたいもんだ。
そんなことを話して居たら「そう言えばまりさんワンワンって言ってたね」。
お~~笑い。
「お猿が悪さをするので気をつけましょう」と長閑な立て看板にけりをいれたくなった。
「おはいらん。ただのサルでいい!」
悔しまぎれに叫ぶおばさんなのだった。
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